37.5歳からの愉悦 Vol.116
2019.10.24
LIFE STYLE

百軒店のスタンドバーで、看板娘が作るコーヒーカクテルが心に沁みた

看板娘という名の愉悦 Vol.88
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。

今年2月、渋谷・道玄坂の百軒店にスタンドバー「SHOT」がオープンした。バリスタが淹れる本格的なコーヒーが楽しめる。

渋谷
時代の変化で料亭が立ち並ぶ花街からラブホテル街へ。

眠らない街とあって営業時間は午前7時から午後11時。午前中に訪れると常連客が大いに盛り上がっていた。

外観
5人も並べば満員御礼の立ち飲みスタイル。

面白いのは、この物件が元無料案内所だったこと。それを知ると、また味わいも違ってくる。

メニュー
看板メニューは、やはりコーヒー。

コーヒー豆のセレクトは、国内外から高い評価を得る「GLITCH COFFEE & ROASTERS」(神保町)および「single O」(両国)と連携。ここ道玄坂から新たなコーヒーカルチャーを広めたいという。

しかし、お酒も置いているんですよ。

メニュー
コーヒーベースのカクテルたち。

看板娘にオススメを聞くと「一番上の『エスプレッソ・マティーニ』ですね。日本ではまだ馴染みがありませんが、外国人はメニューを見ただけで『Wow!』って言います(笑)」。

税込で1000円とややお高いが、期待に胸を膨らませつつ注文。

エスプレッソマシーン
エスプレッソマシンで1杯1杯丁寧に淹れる。
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看板娘、登場

看板娘
「お待たせしました〜」。

「ハム&チーズ」(480円)も美味しそうだったので、こちらも追加。

お酒と料理
午前中にこれが味わえる愉悦。

「『エスプレッソ・マティーニ』はエスプレッソにウォッカとコーヒーリキュール類を加えてシェイクします。シェイカーを振るのはこの店が初めてなんですが」。

シェイカーを振る看板娘
それにしてはサマになっている。

「ハム&チーズ」はクロワッサン、蜂蜜、胡椒、バターホイップのマリアージュ。お酒もフードも素晴らしい。

コーヒー濃度計
0.01%の高分解能で測定できるコーヒー濃度計。

さて、今回の看板娘は店長・成美さん(25歳)。宮崎は都城の出身で、「元気で明るくて目立ちたがり屋」の子供だったそうだ。

釣り好きのお父さんの影響で釣り師デビューも早かった。
桜島付近の海で釣った魚(タイ、イカ、アジなど)。

郷里には物々交換の文化が残っており、釣った魚はもらった野菜のお礼に配るという。

日南メッセ
宮崎・日南海岸の隠れた名所、「日南メッセ」。

「隣は弟。ちなみに、後ろのモアイ像はイースター島から正式な許可を得ているものです」。

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成美さんを交えて談笑しているお客さんに聞いてみた。看板娘の魅力は何ですか?

「酔っ払いのあしらい方が上手いとこですかね」。

お客さん
「下ネタもすぐ流されます」。

高校を卒業後、県内の保育系短大に入学する。

「短大から車で15分ほどの場所に青島という海があり、鬼の洗濯岩が有名です。
授業の合間に友達と遊びに行くこともよくありました」。

ザ・青春の風景。

やがて、世田谷区内の保育園に就職。

「子供たちは可愛いし、仕事自体は楽しかったんですが、2年で辞めちゃいました。ある時、保育園の塀の外でベビーカーを押しているお母さんを見て、自分は環境に制御されているなと思ったからです」。

成美さんは一念発起、ワーキングホリデーでオーストラリアに移住した。

オーストラリアの写真
カンガルーとの記念写真。

オーストラリアでコーヒーに興味を持ち、帰国後は東京駅構内のエイジングコーヒー専門店、「エスプリッソ カフェ」で修行した。そして、現地で磨いた英語力は現在、非常に役に立っている。

「この辺りはエアビーアンドビーがたくさんあるので、外国人のお客様もよく来店されるんです。驚いたのは、意外にもノープランで来日する人が多いということ。浅草やアメ横、上野動物園などを紹介すると喜ばれます」。

日本ではおなじみのパンダも外国ではあまり見られないそうだ。

外国人観光客
ガイドのお礼は投げキッス。

元々は無料案内所だと書いたが、コーヒーショップだけではなく観光案内所としての役割も担いたいと成美さんは言う。

「オリンピックに向けてインバウンドで道玄坂の外国人はますます増えるはず。そんな人たちに観光案内サービスを提供したいなと。今後は、ここでしか購入できないグッズやガイドブックも展開していく予定です」。

テイクアウト
企業向けのテイクアウトも試験的に実施中。

午前11時を過ぎると隣のラーメン店「喜楽」に行列ができ始める。向かいのラブホテルからはお爺ちゃんがひとりで出てきた。

街並み
24時間、ドラマが生み出される街である。

道玄坂を秋の澄んだ風が吹き抜ける。上空にはヘリコプターの音。マティーニが静かに回ってきた。成美さんもシフト交代の時間のようだ。

退勤風景
看板娘は退出の仕方もお茶目。

交代した男性スタッフに成美さんの魅力を聞いた。

「いつもニコニコしているところですかね。でも、性格がわかりやすいから顔に疲れが出ている時もあります(笑)」。

「それはメイクが落ちてるからじゃない?」と反論した成美さん、最後に読者へのメッセージをお願いします。

メッセージ
劇場のような街の一角で営業する「SHOT」をよろしく(朝7時からだそうです)。

 

【取材協力】
SHOT
住所:東京都渋谷区道玄坂2-17-6
https://twitter.com/shotshibuya

 

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石原たきび=取材・文

# SHOT# コーヒー# 渋谷# 看板娘
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