37.5歳からの愉悦 Vol.112
2019.09.28
FOOD&DRINK

神保町の缶詰バルで、看板娘がハイボールを奢られまくっていた

看板娘という名の愉悦 Vol.84
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。

古本とカレーの街、神保町。ここにも看板娘はいた。

路地
名居酒屋「兵六」の路地を入る。

今回訪れたのは「缶詰バル チャボ」。

店頭
営業時間は18時~23時半。
店内を覗くと看板娘の姿。

さて、何を飲もうか。

ドリンクの値段もリーズナブルだ。

迷っていると「とっておきの日本酒がありますよ。10月から出す予定です」と看板娘。おっと、それをいただきましょう。

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看板娘、登場

「お待たせしました〜」。

こちらは市瀬美和さん(25歳)。舞台女優やダンスボーカルチームのプロデューサーとして活動している。

棚には缶詰がずらりと並ぶ。
缶詰メニュー。

見てわかるように、缶詰をそのまま出すわけではない。ひと手間、ふた手間を加えて本格的な創作料理に仕上げているのだ。

缶詰はあくまでも“素材”なのだ。

美和さんと相談したうえで、オススメだという「オイルサーディン缶ごとレモン塩昆布焼き」(780円)と「ツナのトマトカップサラダ」(680円)を注文した。

素晴らしい……。

どんな辣腕シェフがいるのかと思えば、これらを作っているのは本業が役者の店長・近道ちかみちさん(34歳)。12月11日から始まる次回の芝居が「次郎長、渡世人辞めるってよ」という演目なので、それにちなんだ日本酒を仕入れたそうだ。

美和さんと談笑する近道さん。

「本名は近藤なんですが、役者の後輩の女の子が1年間ずっと『近道』だと思い込んでいて。衝撃的だったのでそれを役者名にしました」。

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さて、美和さんは東京生まれ。小さい頃はディズニー好きで、ミニーちゃんのDVDを観ながら踊っていたそうだ。年を経てもダンス熱は収まることはなく、大学在学中にコロラドに演劇留学をした。

一番手前が美和さん。

「植物の一生」というテーマのコンテンポラリーダンスで、これは冬が終わって春が芽吹くシーンらしい。

「留学時代は休みのたびに飛行機を乗り継いでニューヨークに行っていました。ミュージカルを観たり、ダンスレッスンを受けたりという日々でした」。

でも、アメリカ暮らしによって逆に日本語の美しさに気づいたという。英語、日本語、それぞれの好きな言葉を聞いてみた。

「英語は『Sweet dreams』。『いい夢を』みたいな意味で、なんか温かくて好きです。日本語は何だろう……。あ、『一生懸命』かな」。

美和さんはお祖母ちゃん思いのやさしい子でもある。

「今年の1月にお祖父ちゃんが亡くなって寂しそうだったから、スイス旅行に連れて行きました。『スイスの山が見たい』と言っていたので。以前は夫婦でよく登山をしていたんです」。

ゴルナーグラート鉄道に乗るふたり。

スイス最高峰のモンテローザや名峰マッターホルンを含むアルプスの絶景が楽しめる登山鉄道だ。

背後に標高4478mのマッターホルン。

「お祖母ちゃん、『マッターちゃんだ!』ってテンション上がってました(笑)」。

なお、美和さんが現在ハマっているのはNetflix鑑賞だという。

『斉木楠雄のΨ難』がお気に入り。

「これは頭を空っぽにして読めるギャグ漫画です。あとは、グロいのが苦手なくせに異常犯罪モノの海外ドラマもよく観ますね」。

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ここで、常連客から「美和ちゃん、飲む?」と声がかかった。まだ19時だが、美和さんは「飲みます!」と即答。

生ビールとハイボールで乾杯。

この様子を見ながら店長の近道さんが言う。

「ハイボールが好きみたいで、仕事中もバンバンご馳走になっています。こないだは飲みすぎて『もう働けません……』って(笑)。『そのままお客さんと飲んでていいよ』と言いました」。

カウンターには鈴木おさむさんプロデュースの「自分で作る格言カレンダー」が置いてあった。

何となく深い。

2階にはお座敷席もある。この日はIT企業の同僚同士で飲み会を開いていた。

席に着いたばかりの皆さん。

と、その中のひとりが階下に降りてきて美和さんに花束を渡した。誕生日かと思いきや、「先日観に行った舞台の千秋楽のお祝いです」。

「わー、ありがとうございます!」。

何やら愛されまくっている。お酒だけでなく料理を奢ってもらうこともよくあり、この店のフードメニューはほとんど食べたそうだ。

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では、最後に読者へのメッセージをお願いします。

チャボのイラストが上手い。

 

【取材協力】
缶詰バル チャボ
住所:東京都千代田区神田神保町1-3
電話番号:03-6884-0220
https://twitter.com/barchabo0308

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石原たきび=取材・文

# 看板娘# 神保町# 缶詰バル チャボ
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