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2019.09.15

たべる

「うまい酒は旅をしない」世界が認めた日本の地ビールをめぐる旅

トキメキの麦酒●ひと口に「ビール」といっても種類はさまざま。季節やシチュエーションによってベストも変わる。だから、心がときめくを基準に「究極のビール」候補をノミネート。どれもひと口じゃ済まなそうだ。
作家・村上春樹は言った。「うまい酒は旅をしない」。
酒は、造られた土地で飲むのがいちばん美味いという意味だ。真理だと思う。輸送や気候の変化で味が変わってしまうこともあるし、やはり風土を感じながら、その土地の肴と一緒に味わう酒が何にも勝る。
さて、日本の地ビールが今、世界的に高く評価されているのはご存知だろうか。究極の一杯を追求し、何度も試行錯誤を重ねる。そんな日本の職人魂が生んだビールを味わうなら、やはり現地へ行くのがベストである。
ということで、国際的なビール審査会「インターナショナル・ビアカップ2018」で輝かしい成績をおさめた地ビールをご紹介。ガイド役は日本地ビール協会の理事長、山本祐輔さんにお願いした。いずれもロケーションを含めて最高金賞もの。これは旅せにゃ損だ。
 

「神都で味わう世界一のペールエール」
伊勢角屋麦酒(三重県伊勢市)
受賞メダル数:8


神が日本を創った「国生み神話」の舞台、三重県。天照大神を祀る伊勢神宮の近くには、クラフトビール界の雄、伊勢角屋麦酒が店を構える。ブルワリー自体は郊外にあるが、伊勢神宮にほど近い観光街、おはらい町にある「伊勢角屋麦酒 内宮前店」では、店内で伊勢角屋の樽生ビールを味わうことができる。
伊勢角屋麦酒が誇る「ペールエール」。
「伊勢角屋麦酒さんは、アメリカやイギリスなど海外にも勉強に行かれていて、酵母の研究も熱心にされています。アメリカ由来のビアスタイルが特に優秀で、ホップの使い方がとてもうまく、華やかで香り高いビールが楽しめます」。(山本さん) 

伊勢角屋麦酒のビールはインターナショナル・ビアカップ2018で最多となる8つのメダルを受賞。なかでも看板商品のペールエールは、ほかの世界的なビールコンテストでも金賞を獲得している、紛れもない世界ナンバーワンビールのひとつだ。
「お店のすぐ側には五十鈴川(いすずがわ)が流れ、川の向うには伊勢神宮があり、神聖な空気を感じられます。お店では、ぜひ焼き牡蠣とビールを合わせてみてください。周りには色々な屋台が出ているので、ビールをテイクアウトして食べ歩きするのもオススメです」。(山本さん)
伊勢角屋麦酒 内宮前店
住所:三重県伊勢市宇治今在家町東賀集楽34
電話:0596-23-8773
営業:11:00~19:30LO
※木曜日は15:00閉店
www.biyagura.jp/ec/

「富士山麓で味わう本場ドイツスタイル」
富士桜高原麦酒(山梨県富士河口湖町)
受賞メダル数:7


富士山の麓、標高1000メートルに位置する富士桜高原麦酒。自然の恵みで造られた、できたてホヤホヤの生ビールは、ブルワリーに併設されているレストラン「シルバンズ」で飲むことができる。庭からは富士山が望め、四季のうつろいを感じながら飲むビールはもう別格。
左から、ピルス、ヴァイツェン、ラオホ、シュヴァルツヴァイツェン。
「ここは燻製した麦芽を使い、スモーク系の香りがするドイツスタイルのビールを得意としているブルワリーです。独自に富士山の水源地を持っていて、ビールには富士山麓の良質な軟水を使っています。スモークビールやジャーマンピルスナーなど、すっきり飲めるビールが美味しくいただけますよ」。(山本さん)

シルバンズでは、ビールのお供に山梨の名産、甲州富士桜ポークを使った肉料理や旬の食材を使ったピザ・パスタが食べられる。
「富士桜高原麦酒は、富士山有料道路『富士スバルライン』の料金所のすぐ近くにあります。富士山の麓なので絶景です。富士山を眺めつつ、富士山の水で造られたビールを楽しんでください」。(山本さん)
隣接する富士すばるランドには、子供が大喜びするアトラクションが揃っている。しっかりと家族サービスもしつつ、富士桜高原麦酒で贅沢な大人の時間も過ごされるのが良いかと。
地ビールレストラン シルバンズ
住所:山梨県南都留郡富士河口湖町船津字剣丸尾6663-1
電話:0555-83-2236
営業:11:00~15:00、17:00~21:30(土・日曜、祝日は11:00~21:30)
木曜定休
www.sylvans.jp
 

「本格焼酎メーカーが造る正統派クラフトビール」
霧島酒造(宮崎県都城市)
受賞メダル数:6


大人気の本格焼酎「霧島」シリーズ。その製造元として知られる霧島酒造だが、実はビール造りでも輝かしい実績を誇っていることはあまり知られていない。
焼酎にも使用されている「霧島裂罅水(きりしまれっかすい)」はシラス層や火山灰土壌でろ過された天然水で、飲み口はピュアでまろやか。「霧島裂罅水」で仕込まれたKIRISHIMA BEERも、やわらかくすっきりした味わいとなっている。
霧島酒造が誇る霧島ビール。左から日向夏、ペールエール、ピルスナー、アンバー、スタウト。
「霧島酒造では、ピルスナーやスタウトなど、世界中に広まったスタンダードなビアスタイルのビールが丁寧に造られています。バランスの整ったビールは日本人にとても飲みやすい仕上がりになっています」。(山本さん)

「醸造所である霧の蔵ブルワリーは、霧島山と鰐塚山の間の盆地にあります。観光地としても人気のスポットで、敷地のなかにある焼酎の工場見学ができたり、ミュージアムやグラウンド・ゴルフコースがあったり、もちろんビールと焼酎の両方を楽しむこともできます」。(山本さん)
霧島酒造の敷地内は、一部「焼酎の里 霧島ファクトリーガーデン」として整備されており、さまざまな施設が入ったテーマパークのようなつくりとなっている。レストランでは、宮崎県産の和牛のステーキや豚肉のグリル、チキン南蛮など、地元の食材とKIRISHIMA BEERの相性を存分に味わえるので、ビール片手に宮崎の食の魅力を余すことなくご堪能あれ。
焼酎の里 霧島ファクトリーガーデン
住所:宮崎県都城市志比田町5480
電話:0986-21-8111
営業:11:00〜21:00LO(レストラン)
www.kirishima-fg.jp
 
本当に美味いビールを飲みたいなら、酒を取り寄せるのではなく、自らの足で出向くべし。究極のビールを求めるアナタの旅に、幸あれ!
今日の案内人

山本祐輔さん クラフトビア アソシエーション(日本地ビール協会)理事長
日本地ビール協会理事長。 1998年からクラフトビールを飲み始め、2002年には当時存在した全327醸造所のビールを完飲。また2003年には国内クラフトビールの瓶約5000本を展示する「日本地ビール資料館」を福井県・若狭ビール醸造所に開設。2013年より現職。

 
横尾有紀=取材・文


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