37.5歳からの愉悦 Vol.53
2018.08.02
FOOD&DRINK

中野の熟成肉ビストロで、群馬産の看板娘のアミノ酸を味わった

看板娘という名の愉悦 Vol.25
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。

看板娘連載も気付けば25人目。このままいくと来年末には100人に到達するが、果たして。

今回の舞台は中野である。

北口飲食店街の一角。

店名は「Tsui-teru!和」。「ツイテルワ!」と読む。以前取材した「少年野球指導教室 中野塾」から目と鼻の先の距離だ。

奥で看板娘が働いている。

ここのウリは熟成肉と日本酒とのこと。熟成肉とは、温度や風の流れなどを厳密に管理できる熟成庫で寝かせた肉を指す。

見るだけで美味しいことがわかるメニュー。

では、さっそく日本酒をいただこう。60mlから好みの量を選べるらしいので、看板娘に「90mlでお任せ3種類を」とオーダーした。各480円。

ほう、こんな呼称があるのか。
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数分後、グラス3つと一升瓶を両手に持った彼女がやってきた。

お待たせしました!

まずは、お酒の説明から。

写真左から「大信州」、「米鶴」、「群馬泉」。

「『大信州』は夏限定の清涼系、『米鶴』はさくらんぼを思わせる甘酸っぱさが特徴、『群馬泉』は私の地元のお酒で昔ながらの濃厚な味わいです」。

すごい、解説が完璧だ。しかも、いろんな飲み口を楽しめるハッピーセットである。

そんなデキる看板娘の名前は、あづささん(26歳)。出身は群馬県の高崎市。実家は樹脂加工工場を営んでいる。

メニューを綴じているアクリル板も実家の製品。

高校卒業後は薬学部に進学したが、本人いわく「バカすぎてついていけなくなった」ため中退。映画館や結婚式場のアルバイトを経て、3年ほど前に上京した。

「求人サイトで飲食店のアルバイトを探したんですが、条件は『賄いが美味しい』ということ。この店はまさに最高でした」

こちらが、とある日の賄いご飯。

「フードのほとんどは調理担当者の創作メニューだし、日本酒の品揃えにも超こだわっています」。

そうだ、熟成肉を食べないと。迷った末に、「群馬県産やまと豚ロース炭焼き(150g)」を注文した。お値段1380円。

入り口横の熟成庫の中で静かに眠る肉たち。

美味しい日本酒をチビチビと飲んでいるところへ、あづささんが再び登場。

手には……熟成肉が乗っている。

てっきり肉だけかと思いきや、メインディッシュのような装いだった。

味付けは、塩、わさび、特製ダレの三銃士。
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食べてみると、おお、香りと旨味が濃厚だ。

「熟成させることでナッツのような香りが生まれて、肉の繊維もほぐれて柔らかくなるんです」。

日本酒と肉を交互に味わいながら、あづささんの趣味を聞いた。

「うーん、家で漫画を読んだりアニメを観たりすることでしょうか。イチ押しは漫画なら『魔法科高校の劣等生』、アニメなら『氷菓』です。あ、スタッフの徳原さんのほうが詳しいかも」。

しばし、オタク談義で盛り上がるふたり。

ところで、徳原さんは店内で梅干しをオリーブオイルと鰹出汁で漬け込んで熟成させている。

他ではあまり見かけない実験だそうだ。

そんな彼が語るあづささんの印象は「とにかく素直ですね。群馬人特有の物言いの強さは、たまにグサッと来ますけど」。

さらに、厨房担当の原田さんは「しっかり者で真面目」だと褒める。

炭で焼いた肉をカットする原田さん。
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あづささんが「私、そんなにしっかりしてないですよー」と照れると、原田さんは「いや、俺から見たらみんなしっかり者なんだよ」と返す。

原田さんは仕事中は真剣だが、オフの時間にお酒を飲むとちょくちょく記憶を飛ばすという。

「家の近くに100均ローソンがあるんですが、最近、そこの焼酎ハイボールは食中酒に最高だと気付きました」。

え、どれだろうと考えていたら、あづささんが画像を検索してくれた。宝の商品で「強烈サイダー割り」とある。

料理人絶賛の商品、こんど買ってみよう。

そうだ、あづささん。ここで働いていて楽しいことは何ですか?

「さっき言ったように賄いが美味しいのはもちろん、アットホームな雰囲気がいいですね。『あづちゃんと話したくて今日も来たよ』と言ってくれる常連さんもいたり」。

カウンターには看板娘作のコルクアートも。

さて、今宵も気分よく酔ってきた。日本酒も熟成肉も旨味の元はアミノ酸。あづささんにもアミノ酸のような味わいがある。

人も照明も温かい。
2階にはテーブル席もいくつかある。

さて、大満足したところでお会計をしましょうか。

お見送りもありがとうございます。

人気店のため、コアタイムは非常に混み合うが、平日の早い時間帯なら看板娘および愉快なスタッフともゆっくり話せそうだ。

最後に、読者へのメッセージを。

「絵心がないので」と照れていた割には味わい深い画風でした。

【取材協力】
Tsui-teru!和
住所:東京都中野区中野5-55-15
電話番号:03-3389-2005
www.facebook.com/tsuiteruwa.nakano/

石原たきび=取材・文

# 日本酒# 熟成肉# 看板娘
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