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2018.07.13

かぞく

中学受験の冷静と情熱の間で。父親たちの懺悔大会

父親と中学受験 Vol.5
「仕事ができる父親ほど、子育てに苦手意識がある」。そんな傾向があることは、昔から根強く囁かれている。仕事で結果を出すための手法と、子供の素質を伸ばすための手法が相反することが多いからだ。しかし、いざ「中学受験」となると、子供と共通目標を立てて合格という結果を得るために、自分のビジネスノウハウが活きてくるはず! と意気込む父親も多い。実は「中学受験」には大きな落とし穴があるとも知らずに……。
この連載では、年頃の子供がいるオーシャンズ世代の父親が「中学受験に関わるときに注意すべきこと」を、教育・育児ジャーナリストのおおたとしまさ氏に直言してもらいます。
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父親の熱血指導で子供がロックアウト

良かれと思ってしたことが裏目に出てしまうことは人生において多々ある。子供の中学受験の場合、それが結果に表れやすい。
国語が苦手な息子をもつAさんは、自身が大学受験勉強の中で身に付けた論理的な国語の得点法を、自ら息子に教えようとした。塾の教材を使って、授業の復習をする形で、音読させ、本文への記号の付け方、感情の読み取り方、キーワードの探し方、論旨展開の追い方などを事細かに教えた。
しかし息子は最初から腰が引けていた。この頃の男の子が、自分の成功体験を押しつける父親の熱心さをウザく感じるのは当然のことである。音読では声を出さない。記号を付けない。しまいには勉強しながら寝る。父親の目にはふてくされた様子に映った。
「そんなのではダメだ!」。つい怒鳴ってしまった。すると息子は「お父さんがムカつくから勉強しない!」と言って部屋に閉じこもり、内側からロックして何時間も出てこない。塾がない日は、それが毎日くり返された。小6の秋だった。入試本番に向かう総仕上げのための家庭学習時間を大幅にロスした。
Aさんは言う。「もともと偏差値は十分だったのに、あれが、第1志望はおろか第2志望までも不合格になってしまった原因となりました。親の介入に子供が反抗的だと感じたら、それをねじ伏せようとしたくなる気持ちを抑えてすぐに身を引くべき。個別指導塾や家庭教師など第三者の力を借り、親は後方支援に徹したほうがいい」。


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