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2018.07.12

たべる

神田の地ビール専門店で、ビール愛を熱く語る看板娘に深く頷いた

看板娘という名の愉悦 Vol.22
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
地ビールブームの昨今だが、神田に名店があると聞いた。
神田といえば中央線で品川方面に向かう際に、山手線あるいは京浜東北線に乗り換える駅というイメージが強い。エスカレーターが長い東京駅での乗り換えより早いのだ。
まあ、そういう話はどうでもいい。目指すは看板娘だ。思わず乗り換えそうになるのをこらえて神田駅で降りた。
南口から徒歩1分と至近。
飲食店ビルのエレベーターを3階まで上がると、「地ビールハウス 蔵くら」の扉が現れる。
ゴメシ?
月曜の夜7時。名店だけあって、早くも盛況だ。シックな店内で大人の男女が思い思いにグラスを傾けていた。
あれが看板娘だろうか。
そうだった。隣のテーブルの女性客が看板娘に「アベさんちょうだい」と声をかけた。
アブサンの聞き間違いかと思ったが……。
看板娘が僕に解説してくれた。
「『T.Y.HARBOR』っていうブルワリーレストランの醸造長、阿部和永さんのことです」
すごい。スーパーなどで生産者名をチェックして野菜を買うノリだ。
本日はこちらの「ヘイジーIPA」です。
「阿部さんはすごい人で、私、大ファンなんです。地ビール屋さんで偶然会ったときは緊張しました」
そこまで推すのなら飲んでみたい。
「僕も阿部さんをください」と言うと、隣の女性客が推しアイドルを褒められたかのように喜んでいる。
サーバーから丁寧に注がれるビール。
この店では日替わりで12種類の樽生地ビールが飲める。軽やか、フルーティー、苦い、黒ビール、どっしりまで、誰もが満足する鉄壁ラインナップだ。


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