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2018.06.11

ライフ

何かを捨てなくても人生は変わる。熱海で街づくりに挑戦する男



連載「37.5歳の人生スナップ」
もうすぐ人生の折り返し地点、自分なりに踠いて生き抜いてきた。しかし、このままでいいのかと立ち止まりたくなることもある。この連載は、ユニークなライフスタイルを選んだ、男たちを描くルポルタージュ。鬱屈した思いを抱えているなら、彼らの生活・考えを覗いてみてほしい。生き方のヒントが見つかるはずだ。


「37.5歳の人生スナップ」を最初から読む


満員電車に揺られながら考えた地方移住という選択肢


三好明さん(37歳)は静岡県熱海市に移住し、ここを拠点に東京と行き来する日々を送っている。仕事は「エリアリノベーション」。築年数が古くなり使われなくなった建物の新しい使い方を生み出し、エリアを再生する仕事、つまり、地域の街づくりを担う仕事だ。

「そのエリアの価値を高めるために、遊休化している不動産を再活用するんです。設備管理はもちろん、ゲストハウス経営など、企画段階から立案していきます」(三好さん、以下同)。

50年以上使われていなった場所をコワーキングスペースへリノベーションしたり、お土産物屋だった建物を改装して若者向けのシェアハウスの運営を行ったり、使われていない場所を利用して音楽イベントを企画したりと、その活動は多岐に渡る。

三好さんたちが企画からリノベーションまでを手がけたゲストハウス「MARUYA」 (C) Hamatsu Waki


「“空き家ツアー”なんかもやっています。熱海の街並みを散策しつつ、単純に空き家を見て回るだけなんですけど(笑)」。

ゲストハウスで主催している、熱海への移住も相談できるという“空き家ツアー”の様子


空き家を見ていると創造力を掻き立てられる、と三好さんは言う。建物について語るその表情はイキイキとしていて、“好き”を仕事にしていることが伝わってきた。

そんな三好さんが地方移住に興味を持ち始めたのは6年前、30代になったばかりのころだ。一番大きな理由は、自分の人生に対する漠然とした焦燥感と、周囲の友人たちの姿だったという。

「当時、友人たちが続々と起業したり、地方に移住したりと、それぞれ人生の分岐点を迎えていました。時間を自由に使い、毎日楽しそうな彼らがまぶしかった。それに比べて、自分はただのサラリーマン。『俺の人生、このままでいいのか……』と、そんなことを毎日満員電車に揺られながら考えていました」。

彼らは長野や北海道などの移住先で、農業をしたり自然に近いところで生活を送りながら、仕事はネットを通じてリモートワークで行う。東京にくるのは月に数回程度だ。三好さんは、そんな友人たちを見ているうちに、自分が東京にこだわっている意味がわからなくなった。

「友人たちを見ていて気づいたのは『住む場所は自分で選んでいい』ということ。それまで仕事中心で硬直化していた思考を一気にふっ飛ばされました」。



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