酔っ払った妻の姿に、あらためて惚れ直す?
『お酒は夫婦になってから』に学ぶ、円満な夫婦関係の秘訣
ここ最近、妻とサシ飲みした記憶があるだろうか。働き盛りの男性陣のことだ、飲みに行くのはもっぱら仕事での付き合いばかり、という人も少なくないのでは? ときには仕事上のストレスを発散するかのようにジョッキをあおり、泥酔してしまう、なんてこともあるだろう。そんな人に読んでもらいたいのが、『お酒は夫婦になってから』(クリスタルな洋介/小学館)である。
ご覧の通りかわいらしい作風だが、大人の既婚男性でも、響くポイントが大いにある本作。主人公は、PR会社に勤務するバリキャリ女子・水沢千里(みずさわ ちさと)だ。業務中は常に無口でクールな彼女は、実は大のお酒好き。しかし、グラス一杯で酔っぱらい、普段とは180度異なるふにゃふにゃした可愛らしい性格になってしまうため、部下や同僚の前では決して飲酒をしない。そんな彼女が唯一心を許すのが、夫である壮良(そら)の前。千里が疲れて帰宅すると、壮良は必ず自作のカクテルでねぎらってくれるのだ。
本作には実にさまざまなカクテルが登場する。梅酒をソーダで割った「梅スプレッド」、ウォッカを使ったデザート「マンゴーフローズン」、ホットタイプの「ほうじ茶アマレット」などなど……。いずれも詳しいレシピ付きなので、実際に自宅で試すことも可能だ。
このように多種多様なカクテルについて学べるのが本作の魅力でもあるが、それ以上に千里と壮良の関係性が実に微笑ましく、読者を夢中にさせる要因になっている。同僚とうまくコミュニケーションが図れない千里をねぎらう壮良、時折拗ねてワガママを言う千里、互いの愛情を隠さず、それぞれの方法で伝えようとする姿。本作を読んでいると、「夫婦って本当にいいものだな……」という気持ちにさせられる。
そもそも夫婦とはいえ、他人。常にその本音を推し測るのは難しい。千里のようなクールな性格でなくとも、妻が本心を言えずにいる、という状況は往々にしてあるだろう。だからこそ千里と壮良のように、ふたりでゆっくり過ごす時間を設けるということは大切なのだ。本作ではそれを「お酒を飲む時間」として描かれているが、それが「映画を観る時間」や「一緒に料理をする時間」でもいい。千里と壮良にとってのお酒のように、夫婦をつなぐものが見つけられたとき、きっとふたりの結びつきは強くなっていくはずだ。
本作に登場する千里と壮良のように、お酒を介して愛情を深めていく。まずはそこからスタートしてみてもいいかもしれない。早速今夜あたり、妻と晩酌をしてみては?
五十嵐 大=文
’83年生まれの編集者・ライター。エンタメ系媒体でインタビューを中心に活動。『このマンガがすごい!2018』では選者も担当。