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2018.02.08

たべる

神保町の名店で、看板娘が勧める“締めの出汁割り”に感動した

看板娘という名の愉悦 Vol.2
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気がよくて落ち着く。「行きつけの飲み屋」を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
外飲みが好きなので、オープンエアの席がある店はうれしい。冬はさすがに寒いが、コタツがあればどうだろう。
屋根はあるが窓はない
皆さん、こんばんは
屋根はあるが窓はないコタツ席。訪れたのは神保町のテラススクエア。2015年にオープンした複合施設で、1階と2階には人気の飲食店が入っている。
光るオブジェが諸手を挙げて歓迎してくれた
光るオブジェが諸手を挙げて歓迎してくれた
ここの2階に目指す店がある
ここの2階に目指す店がある
店の名前は「土ノ日 ワインの青二才」。阿佐ヶ谷と中野にも系列店があり、どちらも連日賑わっている。「土ノ日」は煮込みの「煮」を分解したもの。当初は煮込みが看板メニューだったが、今は創作イタリアンがメインだ。
昼は蕎麦屋、夜はワイン酒場として営業
昼は蕎麦屋、夜はワイン酒場として営業
店内にはお客さんと歓談する女性がいた。
そう、彼女が今回の看板娘だ
そう、彼女が今回の看板娘だ
新城みゆ紀さん(28歳)。これで「あらしろ」と読む。
いらっしゃいませー
いらっしゃいませー
お父さんが沖縄出身で、あちらではメジャーな苗字なんだそうだ。自然派ワインが売りらしいので、さっそくオススメを聞く。
店長と一緒に吟味するみゆ紀さん
店長と一緒に吟味するみゆ紀さん
「では、これにしましょうか。ロマネ・コンティの樽で18カ月間熟成させたフランスの赤ワインで、年間4000本しか作らないんです」と店長。
テイスティング姿も様になっている
テイスティング姿も様になっている
というわけで、さっきコタツ席で飲んでいたのがこのワインなのだ。
グラス売りは900円(税込、以下同)
グラス売りは900円(税込、以下同)
コタツ席チャージなどはないうえに、春にはすぐ目の前の桜並木が満開になる。
完璧ではないか……
最高ではないか……
ちなみに、1階の系列店「日本酒バル 神保町青二才」には完全オープンエアの大胆なコタツ席がある。
コタツ席のはしご酒をしたい
コタツからコタツへのはしご酒も可能
みゆ紀さんは生まれも育ちも東京・中野。短大を3カ月で辞めて、アパレルや飲食の接客仕事をしてきたという。
「アパレル時代には商品タグを付けたまま何度か着て、そのあとで返品してくる方もいました(笑)。でも、接客業が好きなのでトータルでは楽しかったですね」。
当時のプリクラを見せてもらった。
当時のプリクラ
完全にギャルである(写真右)
「高校時代は日サロに通っていました。24、5歳ぐらいまではこんな感じですね」
好きな食べ物は辛いもの。中野の「豊海屋(とみや)」という台湾料理屋の麻婆春雨がお気に入りだそうだ。
激辛なのに癖になる味とのこと
激辛なのに癖になる味とのこと
一方、ここのフードメニューで一番人気は「牛スジ煮込みのポットパイ」(850円)。
イタリアンだが「煮込み」でもある
イタリアンだが「煮込み」でもある
ワインについては勉強中だというみゆ紀さんだが、店長いわく「何を言っても素直に受け入れる謙虚さがいい」。それを聞いていた常連客も言う。「ここのグループはスタッフの接客クオリティが高い。ひと晩に系列の4店舗を飲み歩く人も多いんですよ」。
2杯目はいま話題の「オレンジワイン」
2杯目は今話題の「オレンジワイン」
「赤ワインの製法で作った白ワインなんですが、通常の白ワインよりブドウの果実感が濃厚。ガス感もあるので、いわば大人のジンジャーエールですね」(店長)
こちらは700円
こちらは700円
人もお酒も大好きだというみゆ紀さんにとって、この仕事は天職だろう。
「飲み始めるとすぐにエンジンが全開になって、そこからずっとテンションが上がりっぱなしです。この間は家に帰ったあと、お風呂場で転んで大きなたんこぶができました(笑)」
ここで、別の女性スタッフが何やらすごいものを運んできた。聞けば、「店長オリジナルの『やんちゃなレモンサワー』です!」。
お値段は時価
お値段は時価
さて、みゆ紀さん、最後の一杯を頂きます。
「締めにピッタリのお酒がありますよ。カツオ節で取った出汁に椎茸のうま味を加えて蕎麦焼酎で前割り。ご注文をいただいてから温めて、さらに鶏節を削って入れています。これは、やばい一杯です(笑)」
「蕎麦屋の出汁割り」500円
「蕎麦屋の出汁割り」500円
写真手前が鶏節のかたまりだが、このお酒は本当にやばかった。めちゃめちゃ美味しいのである。しかし、アルコールはきっちり入っている。
お湯割焼酎の海を泳ぐ鶏節
お湯割りの海を漂う鶏節
このスープで蕎麦かうどんを作ると、満腹になるうえに酔っ払うという奇跡の食べ物になるはずだ。
感動しつつ、お会計。すると、店長の気が向いたら行われるという儀式が待っていた。
青二才名物のテキーラ一気
青二才名物のテキーラ一気
もちろん、これはお店からのサービス。どこまでも酒飲みにやさしい接客スタイルだ。最後に、看板娘からのメッセージを。
「字が下手だから恥ずかしい。斜めっちゃったし」
「字が下手だから恥ずかしい。斜めっちゃったし」
斜めではなく右肩上がりですよ! その謙虚さで人気の名店を支え続けてください。
取材・文=石原たきび
【取材協力】
土ノ日 ワインの青二才
www.aonisai.jp/tsuchinohi/
 
連載「看板娘という名の愉悦」過去記事一覧
第1回 東中野のコアな酒場で、鳥カフェ巡りが趣味の看板娘にときめいた


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