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2018.01.18

たべる

美味しいカップ酒と絶品うどんで昇天間違いなしの「たか乃」

カップ酒という名の愉悦 Vol.7
巷にカップ酒専門の居酒屋が増加中だ。「ワンカップ」という通称でも親しまれているが、これはカップ酒の始祖である大関株式会社(兵庫県西宮市)の登録商標。正確には「カップ酒」ということになる。いつでもどこでも手軽にクイっと飲める極楽酒。当連載はその知られざる魅力に、無類の酒好きライター・石原たきびがほろ酔い気分で迫ろうというものだ。
お酒と麺類の相性は非常によい。ビールにラーメンなら日本酒には蕎麦だろうか。いや、うどんという手もある。
今回降り立ったのは京王線で新宿から15分、調布市の「仙川」という駅だ。
1日の乗降客数は約8万人
この街には桐朋学園や白百合女子大のキャンパスがあるが、残念ながら卒業生の知り合いはいない。
駅前で野菜や果物を売っていた
「バナナが5本で10円。1本2円か……」と感動しつつ、家路を急ぐ人々の流れに乗る。
暮らしやすそうな街
5分後、目指す店「武蔵野うどん 和酒 たか乃」に着いた。17時オープンでランチタイムも営業、そして無休という気合の入りようだ。
名店の予感がする店構え
店内はカウンターとテーブルで計26席。居心地がよさそうな雰囲気である。
先客には仕事帰りと思しきサラリーマン
快く取材を受けてくれたのは、オーナーの高野浩吉さん(34歳)。
「この辺りは深大寺蕎麦が有名で、仙川にも蕎麦屋がたくさんあるんですよ。でも、先代の母がおでんと武蔵野うどんが売りの店を始めたので、そのスタイルを継ぎました」
大根の桂剥きも手馴れたもの
高野さんは製菓の専門学校を卒業後、洋菓子店に就職。しかし、「毎日朝6時出勤とか無理でしょ」というもっともな理由で退社したという。
スタッフ用のポロシャツは非売品
「パティシエになろうと思って都内のレストランに転職したんですが、配属されたのはお惣菜担当。そこで料理の基礎を学びました」
しかし、このレストランもすぐに辞めて、アルバイトとしてカクヤスの中野中央店で働き始めた。これが性に合っていたようで、4年後には社員となり、店長を任される。
そこで現在の店長・藤原さん(前の写真で先客と話していた人)と出会う。今では仕事場でもいっしょ、趣味のサバイバルゲームでもいっしょという蜜月関係にある。
左が高野さん、右が藤原さん
「当時のカクヤスは店長の趣味をわりと自由に反映できる社風。ワインの勉強をして大量に仕入れたら、売り上げがかなり伸びました。ビールとかよりワインの方が利益率が高いんですよ」
日本酒の知識もカクヤス時代に覚えた
カップ酒は「ワンカップ大関」しか置いていなかったが、常連のおじいちゃんの話が面白い。
「1日3回、必ず来店するんですが、レジでお金を払うとその場で一気飲み(笑)。『ごちそうさん!』と言ってカップを置いて帰っていきます。カクヤスでカクウチという小粋なスタイルでした」
一方、たか乃では常時50種類以上のカップ酒を取り揃えている。
この冷蔵庫から勝手に取り出して飲む
仕入元は前々回でご紹介した「味ノマチダヤ」。あの店はカップ酒業界でカリスマ的な存在なのだ。
「1回に120本とか発注するので、最初の頃は『うどん屋さんが頼む量じゃないですね』と驚かれました(笑)」
色の配置バランスが完璧なディスプレイ
どれを飲んでも780円(税込)
原価が高い大吟醸ばかり飲みたくなるが、意外にもまんべんなく売れるそうだ。どちらかというと、ラベルで選ぶ客が多い。高野さんのオススメはおどろおどろしいネーミングの「魔愚魔」。
蔵は茨城県筑西市の来福酒造
「辛口だけど香りもあって、この中では一番好きな味です。実際によく出ますね」
うどんの麺を揚げたお通し(250円)とともに
「うどんは塩水で寝るので、ただ揚げるだけでちょうどいいんです。お代わりを頼む常連さんもいますよ」
さて、うどんの話になったところで、いよいよ武蔵野うどんを注文しよう。
もり、かけ、トッピング、替え玉と心は踊る
「武蔵野うどんといえば肉です!」という高野さんの力強い言葉を聞いて、「肉うどんのもり」(850円)をオーダー。これが、本気で美味しかった。
黄金律のような美しさ
讃岐うどんの粉を混ぜ込んだ麺は、コシが強くてモチモチ。つけ汁との相性が抜群だ。控えめに添えられた漬物も嬉しい。
つけ汁を肴に静岡・土井酒造場の「開運」を一気飲みした
ひと息ついて店内を見回すと、あることに気付いた。そこかしこにカエルグッズがあるのだ。
カエル戦隊にカエル箸置き……
高野さんによれば、「お客さんが『ここにカエル』という願いを込めて、店のイメージキャラクターにしました。たまに、カエルグッズを買ってきてくれるお客さんもいるので数は増える一方です(笑)」。
よし、うどんの次は二枚看板であるおでんだ。
杉の一枚板の上でスポットライトを浴びるおでん
大根、餅キンチャク、玉子を自分で皿に盛る。すでに運を開いた僕が3本目に選んだのは、これまためでたい千葉・藤平酒造の「福祝(ふくいわい)」。
しみしみのおでんでした
福を祝う表情
年間300石という小さな酒造が我が子のように育てたこちらも美味しい。高野さんが「それ、飲んだことないんですよね」と言うので「ひと口どうぞ」と差し出した。
これはイケますね
最後に、ホットな仙川ニュースを聞いてみた。
「あ、高田純次がいろんな街を歩く『じゅん散歩』っていう朝の番組があるじゃないですか。こないだロケ中の高田さんを見かけました。いつもあの番組が終わると仕事モードになるので、放送日が楽しみです」
おっと、僕もまったく同じ生活リズムですよ。仙川の回、見逃さないようにしないと。本日も至福のひと時をありがとうございました。
取材・文/石原たきび
【取材協力】
武蔵野うどん 和酒 たか乃
 


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