【特集】オッサンとクリスマス
クリスマスにワクワクしなくなったのはいつからだろう。大人になってから? 結婚してから? それとも子供ができてから? もっとオッサンだってクリスマスを楽しんでいいはずじゃない? 家族のためだけじゃない、オッサンがクリスマスシーズンと聖夜当日を楽しみ尽くすためのヒントをご紹介します!
今では当たり前のように食べているクリスマスケーキ。不二家での歴史は、明治時代にまで遡るらしい。
考案したのは、創業者である藤井林右衛門(りんえもん)さん。
今やクリスマスに欠かせない存在と言える「不二家のクリスマスケーキ」誕生秘話を探るべく、不二家本社(文京区大塚)を訪れた。
ペコちゃんとともに待っていてくれたのは広報室の上田博子さん。
「個人商店のようなところで販売されていた可能性はゼロではありませんが、本格的に広めたお店の中では弊社はかなり古いほうだと思います」。(上田さん、以下同)
林右衛門さんは14歳から横浜で丁稚奉公を始めた。やがて25歳の時に独立し、元町に「FUJIYA」(現・不二家)を創業。
今から107年前、明治43年のことだ。クリスマスケーキは開業当時から販売していた。
「横浜には外国の船も数多く寄港するので、外国人のシェフなどに頼み込んでケーキの作り方を教えてもらったようです。
とはいえ、最初はなかなか売れなかったようです。当時は洋菓子を食べる習慣がなかったと社史には記載されています」。
ベースはドライフルーツと洋酒をたっぷり使って焼き上げたフルーツケーキ。これに砂糖の衣をかけて、アラザン(銀色の粒状の製菓)をあしらっていた。現在のように生クリームは使っていない。
「当時のクリスマスケーキは高価な食べ物だったので、甘さたっぷりにして特別感を演出したのかもしれませんね」。
クリスマスケーキは、大正11年に2号店となる伊勢佐木町店がオープンした頃にはすでによく売れるようになっており、クリスマス時季の店頭はあわただしい様子だったという。
個人的に子供の頃はクリスマスにアイスクリームのケーキを食べていた記憶があるが、こちらもまだ存在していた(※現在、アイスケーキの販売は終了している)。
「戦後、冷蔵庫が普及するにつれ、ケーキを買って帰ることが当たり前になりました。クリスマス用のショートケーキの基本的な構造も昭和30年代にほぼ固まっています。あとは、細かいアレンジの違いですね」。
上の写真はちょうどクリスマスシーズンのもの。「どれにする?」という声が聞こえてきそうだ。
ちなみに、ショートケーキは日本独自のスタイルで海外にはないというから驚きだ。不二家では大正11年から販売を開始している。
「いつからイチゴを載せるようになったかは不明ですが、不二家では昭和8年頃にはすでにイチゴを飾ったショートケーキが販売されていたというOBの談話が残っています。
もともとは春の果物ですが、ハウス栽培が進んだことで1年中使えるようになりました」。
上田さんによれば、家族の人数も減ってきているため、S、M、Lに加えてSSサイズのケーキを作るなど、時代ごとのニーズにも合わせてきたという。
2016年のクリスマスシーズンには大小合わせて約90万個のクリスマスケーキを売り上げたそうだ。
最後に上田さんが言った。
「売り場や流通が一番混み合うのが12月23日と24日。お願いだから大雪とかやめてね、と毎年神様にお願いしています(笑)」。
“見たことがない特別な食べ物”だった時代に思いを馳せて、今年はクリスマスケーキを買ってみようかな。
[取材協力] 株式会社不二家www.fujiya-peko.co.jp