Running Up-date Vol.84
2021.09.04
LEISURE

ランナーノリが苦手だった40代が「ランニングの格好良さを発信したい」と思ったワケ

加藤芳宏
「Running Up-Date」とは……

今でこそランニングは大いに市民権を得ているけれど、ひと昔前までは多くの人から「どっちかというと、イケてない」と思われていたようなフシがある。

アートディレクターとして広告関係のデザインで活躍する加藤芳宏さんも、以前はランニング、というよりランナーのノリに、勝手な苦手意識を抱いていたひとり。

それが今では、ランニングに関するフリーマガジンを準備するまでになっているのだから、面白い。

ブルックリンの街が先入観を壊してくれた

「2010年代から、デザイナーとしてランニング関係のアートディレクションの仕事をする機会が何度かあったのですが、はじめはランニングそのものとは距離を置いていたんです。先入観と言いますか、ランナーやランニングという行為に対して、何だか苦手なイメージを抱いていまして。

『ランニングね、それって元気が溢れている人がやるものなんでしょ』みたいな。振り返ってみれば、我ながら少し斜に構えていたなと思うんですけど」。

加藤芳宏

その先入観がガラガラと崩れたきっかけは、4年ほど前のニューヨークへの出張だ。

「これまた仕事の関係でブルックリン・ハーフマラソンを視察したのですが、街全体がランニングを通して、ポジティブなテンションで盛り上がっていることにカルチャーショックを受けました。

まずもってランナーたちがみんな“いい顔”していますし、ローカルの住民たちにも、ランナーに対する応援の気持ちやリスペクトが溢れていて、それが気持ちいいくらいに爽やかでした。

それまでの勝手な思い込みは完全にくつがえされましたね(笑)。そういうわけで、ランニングカルチャーのパワーや可能性にアテられて、帰ったら自分も走ろう、と」。

帰国後には早速、友人と一緒に走ることに。その友人というのが、以前この連載にも登場いただいた小林修人さんだ。

加藤芳宏

「まず手始めに10kmを走ることに挑戦したんですが、いやぁ、楽しかったですね。自分にとってはスノーボードやサーフィンの習い始めと同じで『どういう道具があるのか』『どうやってやったらスマートに気持ちよく走れるのか』から、ランニングというアクティビィに手を出した感覚でしたね。

やればやるほど上達して、以前は出来なかったことができるようになる。最初は3kmも走れなかったんですよ。でも周りに格好良くて、かつ楽しそうに走るランナーのお手本がいたことも大きかったですね。

彼らを眺めていると、効率的でスマートな走り方というのがあると気がついて、それを自分なりにかみ砕いて実践していく面白さがありました。『ボードに乗れるようになった』『立てるようになった』というのと同じで、この歳になっても成長できるんだと虜になりましたね」。

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脳ミソの強制リセットには走ることが一番だ

少々ユニークというか、アートディレクターらしさを感じさせるエピソードがある。

「正直、最初はギアから入ったところもあるんです。ニューバランスとエヌハリウッドがコラボレーションしたフレッシュフォーム ザンテというシューズがあって、これを履いてみたい!と。

ほかにも、ニューヨークで出合ったディストリクトビジョンとか、面白いギアブランドがここ数年でどんどん出てきている気がします」。

加藤芳宏

海外マラソンへの参加経験もあるが、こういった社会情勢なのでレースへの参加は小休止中。普段のランは、仕事の合間に事務所のある原宿界隈をクルージングすることが多い。

「それはトレーニングというよりむしろ、気持ちを切り替えるため。走ると、ボーっとした無の状態というか、一種の瞑想状態になれる気がするんです。フィジカルな疲労とともに、頭のごちゃごちゃを吐き出して、クリアにする。そのために走っています」。

仕事柄、複数の案件が同時進行することが常なので、ランニングが切り替えのスイッチとして、役割を果たすのだ。

加藤芳宏
いつでも走り出せるよう、デスクの下には所狭しとランニングシューズが!

「単純に体を動かして気持ちいい、というのも大きいですけどね。夕方に走ったときは、着替えてから事務所の屋上でビールを呑んだりしますけど、そのチルアウト感もたまらないんですよ」。

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サーフトリップならぬランニングトリップを楽しみたい

「まさにサーフィンとかスノーボードと似た感覚ですが、それよりもシンプルで、何なら道具がなくても玄関を飛び出すだけで走れますからね。

だからコロナが落ち着いたら、海外に行って走りたい。レースじゃなくても、海外を旅したついでにランニングしたいんです。実は少し前、感染状況が落ち着いているときに、国内のビーチリゾートでランニング合宿をしたんですよ。

合宿というより、ランニングトリップ。言うなればサーフトリップのランニング版です。マジで走る時間も、そのあとのチルアウトの時間も、全部ひっくるめてサイコーなんですよ」。

加藤芳宏

加藤芳宏

こういった仲間との“遊び”が、加藤さんのモチベーションになっている。

また仕事柄、ランニング関係の本やカタログをめくることも楽しみのひとつだ。

加藤芳宏
加藤さんが刺激を受けてきた洋書の数々。カルチャーとしての側面を感じられるからと、密かにコレンクションしている。

「今、仲間とランニングにまつわるマガジンを作っているんです。もう9割方完成していて、あとはタイトルなどの最終決定を待っている段階。

編集者、建築家、ラジオDJなど、さまざまなバックボーンを持つランナーの話を聞いているのですが、それそれがとても魅力的。そういう“人”をフィルターにして、自分たちがいいなと思っているランニングの価値観を、世の中に伝えたい。ただ走るだけでなく、周辺にあるカルチャーも含めて発信したい。

それこそ、自分が本を通して触れてきたことなので、今度は自分がそっち側に立って、アクションを起こしてみたいんです」。

加藤芳宏
製作途中の誌面を特別にチラ見せしていただいた。9月下旬より配布開始予定で、詳細はinstagramアカウント(@katoyo_c60@ikism_rc)にて順次公開されるとのこと。

そいつは聞き逃せないニュース! ランニングという動作自体はとてもシンプルだが、ランナーが走ることについて語るとき、それを聞いたり、読んだりすることは、なぜだか非常に味わい深いものだから。

加藤芳宏

「Running Up-Date」
ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。 上に戻る

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RUNNER’S FILE 43
氏名:加藤芳宏 
年齢:40歳(1980年生まれ)
仕事:アートディレクター
走る頻度:週2日(1回につき、5~10kmほど)
記録:フルマラソン4時間14分47秒(ニューヨークシティマラソン 2018)

礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真

# Running Up-Date# ランニング# 加藤芳宏
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