Running Up-date Vol.76
2021.06.26
LEISURE

「失敗の連続でしたよ」それでもランニングにハマった40代写真家の走る履歴書

軍記ひろし
「Running Up-Date」とは……

日本フットサルリーグ、通称・Fリーグのオフィシャルカメラマンをはじめ、カタログや広告写真などの撮影で活躍する軍記ひろしさん。

走り始めたのは30代後半になってからで、最近ではランニングシューズの作品撮りをするなど、このアクティビティにのめり込み始めている。

初ランの翌日は風邪で寝込んでしまった

現在42歳。走歴は約4年になる軍記さんのランニングは、失敗エピソードに事欠かない。

「だって、マラソン大会で棄権をした回数は一度や二度じゃなくて、自分でもカウントできていませんから。そもそも走り始めたときから失敗の連続なんです。

最初はある仕事で音楽ユニット・ソナーポケットのeyeronさんと知り合って、ひょんなことからマラソンの話になり、『じゃあ走ってみようよ!』と、いきなり駅伝レースに参加することになりました」。

軍記ひろし

皇居を周回するコースで、1周5kmを全力で駆け抜け、それなりのタイムで走れたのだが……。

「次の日に風邪をひいてしまいました。サッカーやフットサルの経験から、もう少し動けるかと思っていたのと、それ以上に走ったあとの消耗が激しかったことで、体力の無さを痛感しました。悔しかったですね」。

見事に打ちのめされた軍記さんだが、ヘコたれはしなかった。仕事上で付き合いのあるスボルメが北海道マラソンのゴールドスポンサーをしていたこともあり、今度はフルマラソンへの挑戦を決める。

軍記ひろし

「その北海道マラソンが初フルマラソンです。でも、41km地点でリタイヤしました。目標としていたタイムに届かなかったりと、まあいろいろあって気持ちが切れてしまったんですよね。

それ以降レースでは期待通りにいかないことも多かった。今なら順調に走れれば3時間15分は切れるはずなんですが(笑)、フルマラソンの持ちタイムは3時間50分台なんですよ」。

撮影のために走ってもらった際も、しっかりとスピードに乗った、安定したフォームを見せてくれた軍記さん。それでも失敗とは無縁でいられないのが長距離のランニング。だからこそ、面白いのだ。

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アラフォーでも、やればやるほど成長できる

一般的な印象として、長距離ランナーには謙虚でストイックな人が多い。その点を差し引いたとしても、非常に柔和な雰囲気で、ガツガツしていないにもほどがある軍記さん。走るモチベーションはどこから来るのだろう。

「それはもう単に、走ることが好きだということに気がついたからだと思います。上手くいかないことも多々ありますが、トータルで考えると、トレーニングをやればやるほど伸びていくなと。

昨日つらかったことが、今日は少し楽にこなせるようになっていて、苦しいの先に楽しいが待っているのだと気がつきました」。

軍記ひろし

「ただ走るだけのシンプルなスポーツですが、単純な行為だからこそ深みを感じます。日々、パワーアップを実感できることが楽しいのかもしれません。アラフォーと言われる年齢になって久しいですが、それでも成長していけることがあるのだなと」。

敏捷性や瞬発力が要求されるサッカーやフットサルでは、年を重ねてもずっとプレーヤーを続けることは難しい。でもマラソンは、中年と呼ばれる歳になってもまだまだプレーヤーでいられる。その点も魅力だという。

「この歳になると、もうサッカーは上手くはならないので(笑)。余暇としてやっているのにも関わらず、いいゲーム、いいプレーができないと、結果的にストレスを抱えたまま帰路につくなんてことも珍しくありません。

その点、ランニングはやり遂げたあと、つらさから解放されたあとの達成感や満足感が毎回味わえますし、どんどん走れるようになっていきます」。

軍記ひろし

「最近はランニングを通して知り合う人にも興味が出てきました。ニコアンド等を手掛けているアダストリアが、「ヌメラルズ」というスポーツに根差したレーベルを立ち上げているのですが、その社内ランニングチームである「ヌメラルズ ラン チーム」のメンバーと一緒に走ることが多いですね。

走歴や走力が同じくらいの人が多いので、仲間でもありライバルでもあるような関係かもしれません。どんなレベルでも自分なりに追い込むことができるアクティビティなので、走ることに打ち込む人たちの姿勢は刺激に満ちています」。

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レースに参加する機会が減った今だからこそ気づいたこと

コロナ禍をきっかけに、多くのマラソンレースが中止や延期を余儀なくされている。そんな中、軍記さんどのようにモチベーションを維持しているのだろうか。

軍記ひろし

「今はランナーとしてレベルアップしたいというスイッチが入って、インターバルなどのスピード練習に挑戦しています。単純に時間ができたというのがまずひとつ。

以前はレースに参加することをモチベーションにしていたのですが、今では成長すること、体の変化を味わうことがモチベーションに変わってきたのも大きいですね。

強度の高い練習の頻度は週一くらい。もっぱら仲間と一緒に追い込んでいます。そのせいか、不思議とキツいとは思わないんですよね。もしひとりでやっていたらわかりませんが、ツライことをやってるという感覚はありません。無心で走っている時間は、頭の中をクリアに整理できるいい機会にもなっていますし」。

以前はまず大会に申し込んで、「エントリーしたからにはやらなきゃ!」という感覚だったが、大会が少なくなったからこそ、純粋に走る時間を楽しんでいる。走るときに音楽を聴くこともなくなったそう。

軍記ひろし

そして、最近はトレイルランにもハマっているのだとか。街中でのランと比べて五感がフルに刺激され、平坦な舗装路ではなかなか鍛えにくい細かな筋肉や、持久力といった自身の弱点にも刺激が入るのがいいところ。肉体的には疲れるけれど、心が満たされるのがトレイルランなのだ。

「ほかに変化したことといえば、夜型の生活から健康的なライフサイクルに切り替わりましたね。併せて時間の使い方の感覚も変わりました。夜遅くまで作業を詰め込むことがなくなり、『今日はここからここまでキッチリやろう』みたいに、ランナーっぽいメンタリティになってきたように感じます。

一度リズムを乱してしまうと、全体の効率が落ちますし、そもそも体にも良くないじゃないですか。これは歳を取ったことによる変化なのかもしれませんけど(笑)」。

コロナ禍をきっかけにランニングの奥深さに目覚め、新たな楽しみ方の扉を開けた軍記さん。だからこそ、近い将来はフルマラソン3時間切り(サブスリー)を目指したいし、トレイルランでは100マイラー(160kmレース完走者)の称号を手に入れたいと語ってくれた。

レースへの参加をきっかけに、ランニングのそのまた向こうへ。いい歳の大人がマジになれる。それって最高に贅沢な経験なのかも!

軍記ひろし

RUNNER’S FILE 38
氏名:軍記ひろし 
年齢:42歳(1978年生まれ)
仕事:フォトグラファー
走る頻度:月間走行距離200~250km
記録:3時間52分43秒(2019年、かすみがうらマラソン)

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「Running Up-Date」
ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。 上に戻る

礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真

# Running Up-Date# フルマラソン# ランニング# 軍記ひろし
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