2021.07.17
LEISURE

キャンプ歴30年超のベテランの愛車「T3 ヴァナゴン」は“走るワンルーム”だった!

「突撃、隣のキャンプカー!」とは……

グラフィックデザインの仕事をしながら、浅草橋にてコーヒースタンド、プリティグッドも営なむ三枝 量さん。両親の影響もあって、「物心がついたときには、休日の遊び場は山だった」というのだから、アウトドアにどっぷりなのも納得である。

休日は家族とサーフィンをしに海へ、キャンプや釣りをしに山へと、自然の中に身を置きながらデトックスに努めるのがルーティン。その傍らには、愛犬とともに、決まってこの愛車が佇んでいる。

三枝 量さん●広告や店舗内装のデザインを担う傍ら、ドーナツも人気のコーヒースタンド「プリティグッド」も運営。最近はテンカラにどっぷりハマり、今年に入って、3歳の娘がサーフィンデビュー。生後4カ月にはもうキャンプデビューもさせるなど、アウトドアの英才教育に余念がない。
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車中泊も快適な走るワンルーム

幼い頃から山や川が遊び場となっていたことから、自ずとアウトドア派となっていった三枝さんだが、どっぷりハマったのは車の影響もあったという。

「アウトドアにどっぷり浸かったひとつの分岐点としては、自分の車を持ったことが大きいでしょうね。最初は古いサーフのワゴン、ジープのグランドワゴニア、ランドローバーのディスカバリーを経て、今の車に辿り着きました」。

前々から「一度は乗ってみたかった車」だったというこちらは、フォルクスワーゲンの「T3 ヴァナゴン」。同社のタイプ2シリーズにおいて、「T2(レイトパス)」の後継として登場したモデルである。三枝さんの愛車は’90年代の初期型で、もちろん、今でも現役バリバリ。

しかし、こいつがまあ手がかかること。

「一番脆弱です(笑)」と三枝さんも苦笑するように、キャンプへ行くには少々心許ないリアエンジン&リアドライブのRR車。エンジンはレイトバスの空冷から水でエンジンを冷やす水冷式に変更されたが、その機能も優れているとは言いがたく、オーバーヒートを起こしやすいのだとか。

しかし、三枝さんは「手がかかる子ほどかわいいもんです」と一笑する。

「あそこにウエストファリアと書かれていますよね。ドイツのウエストファリア社がキャンピング仕様にアレンジして販売していた車なんです。

そんな車はなかなか見つからないし、しかもこれはT3の最終の型で1991年製。オジサンではあるけれど、ヴィンテージカーというわけではない。その塩梅がいいんですよね」。

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水、電気、ガス。すべてが揃った居住スペース

この大きさにして4人乗りという事実にも驚かされるが、内部を見れば概ね納得。シンクや冷蔵庫、さらにはテーブルも完備。気の利いたさまざまな収納スペースが各所に配置され、居心地の良さを存分にイメージさせる。

「運転席の後ろには二口のコンロとシンクがあります。ガスはもともとプロパンガスのような形式でしたが、それだと国内を走ることは難しいので、一般的なカセットコンロに変更しました」。

「ちなみに、水は外側の給水口からホースを繋いでタンクに貯蔵します。その隣からは電気もとれるので、直繋ぎしちゃえば中で自由に使えてバッテリーが上がることもない。最近流行っているRVパークなどへ行けば電源付きサイトもありますからね」。

ここまでくるともう車というよりも家である。しかも、ほぼほぼ車内で完結できてしまうため荷物も少ないのだとか。

既存の装備をフル活用しているが、随所に自分のカラーを出しながらアレンジを加えているところもミソ。例えばこのウッドのチェストだ。

車内に鎮座しているときには単なる収納スペースだが、キャンプ時には外へと運び出し、右脇に設えた木板を跳ね上げながら簡易的なキッチン台として活用している。

「もともとモノ作りは好きなほうで、プロダクトのデザインをする際もサンプルは自分で作ったりしていました。これもその延長ですね。棚の中には食器類などを入れ、サイドには調味料を入れておくスペースも作っています。普段はここで料理をしながら家族に振る舞う感じですね」。

その出来栄えは、DIYとは思えないほどのクオリティだ。

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タープを引き出し、アウトドアリビングを

後部座席の入り口上部には備え付けのタープがあり、引っ張り出すことでテントを張ることなくまったり空間を生み出せる。

「もともとは純正のアルミの、ガチガチのやつが付いていたんですけど、ARB社のものに変えました。タープが結構大きくて、2.5m四方のスペースができるんです」。

そこへ簡易チェアやテーブルをおけば、立派なアウトドアリビングの完成だ。ときにはタープの先端に白布などを垂らし、プロジェクターで映像を投影させて映画を観ることもあるのだとか。そんな家族団欒のひとときもまた、三枝さんには掛け替えのない時間だという。

ちなみに、助手席は新幹線の座席のように向きを変えられる。三枝さんは窓側へ向きを変え、そこから映画鑑賞をするのがいつものスタイルだ。

そして、寝る際には屋根を跳ね上げて空間を確保。リクライニングできる後部座席を倒せば、簡易的な二段ベッドの完成である。

ほかにも創意工夫を凝らした、無駄のないスペース使いが目を見張る。

使用していないコンロ下の元冷蔵庫には寝袋などを詰め込み、バックヤード脇の細長いスペースは洋服などを掛けておける簡易的なクローゼットに。後部座席の下も収納スペースになっていて、キャンプに必要なあらゆるギアが目一杯詰め込まれている。

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“ちょっと便利”くらいが心地いい

基本的にキャンプは、不便を楽しむことが目的のひとつ。とはいえ、上級者でもない限り、それらを存分に享受することはなかなか難しい。そこで、三枝さんの所有するギアが参考になる。

こちらのランプはペトロマックスのHK500。ペトロマックスといえば、世界にも名を轟かせる圧力式灯油ランタンのリーディングカンパニーだ。200以上の細かなパーツで構成され、その美しさは多くのアウトドアマンを魅了している。

味わいのある見た目に加え、ブランド自体も1900年代初頭に誕生しているだけに、よほどの年代モノかと思いきや、これはそこまで古くはないとか。

「雨にあえて晒すことで、錆びをつけました。しかも、燃料はホワイトガソリンで、光の強さを調節すれば一昼夜つけていられるんです」。

「ドメティック」のクーラーボックスは、おそらくクーラーボックスの中でも最強の部類に入る。

「後ろにカセットコンロ用のガスをはめ込むスペースがあり、そのガスを使って冷やすタイプですね。24時間ずっと冷やしてくれるので使い勝手がいいですよ。通常であれば冷蔵庫代わりなのですが、冬であれば氷も作れちゃうほどに強力です」。

しかもその容量は2リットルのペットボトル8本が余裕で収まるほど。AC電源コードも付いており、外部から電源を確保できる場ではそちらを利用することも可能だ。

コーヒースタンドを経営している三枝さんが、「やばいのを見つけてきました(笑)」とニンマリしながら教えてくれたのがこのコーヒーメーカー。馴染みのあるコールマンのものだが、説明書きのところがすべて英語になっていた。

「これ、日本では売っていないかもしれませんね。LAへ行ったときに、フリーマーケットで購入しました」と三枝さん。

「これだけの大きさのものは、日本でなかなかお目にかかれません。カセットコンロの上に乗せて火をつけ、温まった水によりコーヒーが抽出されます。大人数でキャンプへ行っていると一杯一杯入れるのが多少億劫に感じていましたが、これなら一気に10杯分作ることができます(笑)」。

味もなかなかで、家で作るものと大差はないとか。ちなみにコーヒー豆は「プリティグッド」で使用している豆と一緒。

「ちなみにメイド・イン・ジャーマニー。こういうのもテンションがアガるんですよね〜。車もドイツ製ですし(笑)」。

なんとも秘密基地のようなこの佇まいは、男なら誰もが心踊る。話を聞いているだけでも楽しそうなキャンプの風景を思わず想像してしまった。

「突撃、隣のキャンプカー!」とは……
キャンプスタイルは十人十色。それぞれ魅力がある。だからこそ気になるんだ。隣でテントを張っているあの人たちがどんな車に、どんなギアを詰め込んでいるのかが……。ってことで、正面から突撃。バックドアをご開帳〜!
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佐藤ゆたか=写真 菊地 亮=取材・文

# アウトドア# キャンプカー# プリティグッド# 車中泊
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