「Tシャツは男の快楽だ」特集 Vol.44
2021.06.19
LEISURE

オーダーは2年待ち。デウスが惚れ込む日本人シェイパーのクラフツマンシップ

ハンドシェイプという手作り文化が長らく根付いてきたサーフボードの世界で、日本のクラフツマンシップが高い評価を受けている。

そこには人と人とのつながりを生み出すほどの、上質な手仕事があった。

 

サーフボード作りへの愛が偶然を運命の出会いにした

世界が認めた“手仕事”。「デウス エクス マキナ」が惚れ込む日本人シェイパーのクラフツマンシップ
自宅にシェイプルームがあり、思い立ったらすぐ仕事へ。シェイパー的な職住一致の生活環境は若いときに抱いた夢だった。

仕事ぶりが海外サーファーから高く評価される数少ない日本のサーフボードシェイパー、そのひとりがタッピーこと吉川拓哉さん。

自身のブランド、タッピーレコードを展開する一方、オーストラリアで誕生したデウス エクス マキナのプロジェクトに日本人シェイパーとして初参加。以来、現在にいたるまで多くのモデルを手掛けてきた。

デウスが何より評価しているのは“手仕事”によるクオリティである。サーフボード作りは多くのブランドにおいて分業制が取り入れられているが、タッピーさんは全工程に目を光らせる。

全工程とは、ブランクスと呼ばれる発泡材をプレーナーと呼ばれる電動カンナで削ることに始まり、削り終えたブランクス全体に樹脂をコーティングし、硬化したのちに余分な樹脂を削りながら整えていくまでのことをいう。

特にシェイパーの仕事の要はブランクスの削り出しにあり、それは“デザインを起こす”仕事となる。シェイプ以降は生まれたデザインを使えるものにしていく工程といえ、シェイパー以外のスタッフが手掛けることが多い。

オルタナティブボードと呼ばれるデザインを多く手掛けるタッピーさんはスノーボードのキャリアも長く、デウスからはオリジナルデザインを発表している。

タッピーさんも多くをスタッフにまかせている。が、最初から最後までを自ら手掛けるのも日常茶飯事。「シェイプ以外の工程も好きなんですよ」と、その理由はシンプルだ。さらにすべてに携わることで自身の目による厳しい品質管理が可能となる。

「大手ブランドなどはPCで制御しながらサーフボードを作るのが普通な時代。シェイパーの重要な仕事はマスターボード作りになり、雛型があれば数を多く作ることができます。

僕も一部取り入れたことがありましたが、ハンドシェイプのもっとも楽しい工程をマシンに取られるのもつまらなかったので、今は使わず自分の手で作っています。おかげですごく忙しいですよ。うちは僕にとってだけブラック企業です(笑)」。

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全工程を手掛けるため量産は非現実的。現在バックオーダーは200本以上。2年待ちの状態にある。

朝は誰より早くファクトリーに行き、仕事場を整理整頓。そののちに自宅へ戻り、庭に備えたシェイプルームでシェイプを行う。午後にはファクトリーで後工程を手掛ける。帰宅がいちばん最後になるのもザラだ。

まさに仕事人間。スタッフには自分の仕事の仕方を真似する必要はないと伝えているが、その仕事ぶりが嫌なのではない。サーフボード作りが心の底から好きであり、納得できるクオリティに仕上げたいと思う。必然的な結果なのである。

どれほど忙しくても良い波は逃さない。良い波でサーフィンできること。それはグッドシェイパーの条件だと考える。

そうした真摯な姿勢を背景に生まれた1本は海外サーファーを魅了してきた。もう20年近くも前に千葉のサーフショップでたまたま出くわした稀代のロングボーダー、デーン・ピーターソンさんのように。

そして世界の海で活躍する彼がタッピーさんの仕事に惚れ込んだことが、のちにデウスとのプロジェクトにつながっていく。サーフボードに備わる確かなクオリティは、たった一度の偶然を好機にさえ変えたのである。

 

PEDRO GOMES、熊野淳司、高橋賢勇、清水健吾、鈴木泰之、柏田テツヲ=写真 菊池陽之介、諸見里 司、来田拓也=スタイリング 小山内 隆、高橋 淳、大関祐詞=編集・文 加瀬友重、菅 明美=文

# デウス エクス マキナ# サーフィン# シェイパー
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