キャンプのTPOに応じた正しいスリーピングマット選び、あなたはできてます?
「Camp Gear Note」とは……
スリーピングマットのタイプごとに違いを解説した前編に続いて、後編では3つのタイプを具体的に比較してみよう。
それぞれのタイプが得意とするジャンルを理解すれば、あなたが必要としているスリーピングマットがきっと見えてくる。
さまざまな角度からタイプを比較してみよう

まず、収納サイズと重量について。モデルや厚みの違いにもよるが、基本的にはエアパッド→セルフインフレータブル→クローズドセルの順で軽く小さい。
荷物を全部背負って移動する登山や電車でのキャンプにも使うことを考えているならば、小さく軽いことは大きなメリットとなる。

設営の早さは、クローズドセル→セルフインフレータブル→エアパッドの順。撤収時はフォームから空気を抜くのには少々コツがいるため、クローズドセル→エアパッド→セルフインフレータブルの順に変わる。
ちなみにしっかり空気を抜いてきれいに畳むには、一気に全部の空気を抜こうとせず、2回に分けて行うのがコツ。なんなら3回やったってOKだ。

続いて厚みについて。これは軽さに反比例して、クローズドセル→セルフインフレータブル→エアパッドの順となることが多い。
クローズドセルとセルフインフレータブルは、フォーム材が断熱性とクッション性を持っているためある程度薄くても機能するが、エアパッドは空気でその要素を作るので必然的にある程度の厚みになる。
基本的に厚さがある方がクッション性はいいが、寝心地自体はマットの形状にも左右される。必ずしも厚み=寝心地、断熱性ではないことは覚えておきたい。

こんなところにも注目して選んでみよう

ほかにも押さえておくべきセレクトポイントをいくつか見ていこう。
まず、長さ。モデルによって2、3種類用意されていることが多いが、基本は身長より長いことを目安に選ぼう。
登山などで軽さを優先させる場合は、あえてショート丈のものを選び、頭は枕、足元はバックパックなどを敷いて補うこともある。キャンプ用に使うならば、あえて短いものを選ぶ理由はない。

幅が選べるモデルもある。体格や用途を想像し、収納サイズや重量とのバランスを考慮して選ぶといい。
大半のマットはシュラフの幅(50cmほど)しかない。しかし、キャンプをしていると寝返りを打ってマットから落ちるようなことはほとんどないから不思議だ。
それでも寝相に自信のない方、恰幅の良い方は幅広タイプが安心だろう。

外見からは判断できないが、マット内部の構造やフォーム材の種類も大事な要素。特に断熱性を左右する要素なので、冬キャンプで使うマットを選ぶならば忘れずにチェックしたい。
断熱性は「R値」と呼ばれる数値で表記されている。寒い場所でのキャンプならR値3〜4程度、雪中キャンプならば4以上あると快適に過ごせる目安となる。
付け加えるならば、ホームセンターで手に入る銀マットのR値は0.5ほどだそう。アウトドア用に作られたマットの断熱性能の高さがよくわかるだろう。
店頭でしか確認できないディテールも比較材料


空気を入れるバルブも各社が形状に工夫を施しているパーツだ。
シンプルで使いやすいものから、機能は盛り盛りだけれど使いづらいものまで、これもピンキリ。実際に店頭で触り比べたり、友人のもので試させてもらうと使い勝手の違いがよくわかるはず。
購入前にいくつか比べてみることをおすすめする。

細かい部分だが、表地の厚みや肌触りも気を抜かずに選びたい。
重量を考慮して軽量な生地が使われることが多いが、車でのキャンプが多いならば重量よりも耐久性を重視して選んだ方がいい。
裏返してみると、シリコンの模様が貼られているモデルもある。これは飾りではなく、テント内でのズレを防止する滑り止めの役割を果たすもの。小さな違いだが、案外効いてくれるので侮れないディテールである。
と、ここまでツラツラと書き綴ってしまったが、マット選びには抑えておくべき事柄が山のようにあるということがわかっていただけただろうか。
筆者はマット選びを誤ったがために、日本各地で眠れぬ辛い夜をいくつも超えてきた。
あんな辛い思いをしないで済むよう、どうか読者の皆様はTPOに合わせた賢いマット選びを。
[撮影協力]
イワタニ・プリムス
03-3555-5605
www.iwatani-primus.co.jp
「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。 上に戻る
池田 圭=取材・文 宇佐美博之=写真