Camp Gear Note Vol.70
2020.12.06
LEISURE

マイボトルの代名詞「SIGG(シグ)」、もちろん持ってますよね?

SIGG

「Camp Gear Note」とは……

使い捨てのペットボトルではなく、何度も使えるエコな水筒を持ち歩くことが私たちの日常風景となって久しい。

今や「マイボトル」なる単語はすっかり世間に浸透した。しかし、いったいいつから、なぜここまで私たちの生活に入り込んできたのだろう。今回紹介する「SIGG(以下シグ)」こそ、この謎を紐解くための鍵を握るブランドだ。

2000年以前、アウトドア好きの間で「シグ」の名は携行燃料用ボトルの代名詞として知られていた。それが今、なぜ飲料用ボトルの代名詞になり得たのだろうか。

ブランドの歴史と製品の魅力に焦点を当て、その理由を掘り起こしてみよう。

最新鋭の素材だったアルミニウムの有用性にいち早く着目

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豊かな自然環境が、スイス人の高い環境保護意識を生んだとも言えるだろう。

ブランドの歴史は古く、スイスのビエンヌという街で創業したのは1908年のこと。金属加工職人だったファーディナンド・シグが、当時最新鋭の素材だったアルミニウムにいち早く着目し、製品化を始めたことに端を発する。

ちなみに、ビエンヌとはジェラ山脈の裾野に位置する自然豊かな美しい街で、ロレックスやスウォッチ、オメガなど、世界中の名だたる時計ブランドが本部を構える時計産業の中心地としてもその名を知られている。

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現在は水筒を中心に手掛けているが、50年代当時はあらゆる調理関係器具を生産していた。

創業からわずか1年で、ビジネスはあっという間に軌道に乗った。1950年代になる頃には、フライパンやポットなど、なんと1万品種以上の製品を手掛ける一大企業に成長を遂げている。

当時のシグは家庭用調理器具や食器の製造に忙しく、アルミニウム製品はすっかりカタログの隅に追いやられてしまうような存在だったようだ。

しかし60年代に入ると流れが一変する。ほかの金属よりも加工と再利用がしやすく、環境への負荷が低い素材としてアルミニウムが再び注目を集めるようになったのだ。

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1917年にフラウエンフェルトへと本社を移転。こちらもビエンヌに負けず劣らず美しい街。

アルミニウムを使った飲料用ボトルを開発すると、これが大ヒット。以来、スイスでは知らぬものはいない国民的水筒ブランドとしての地位を確立した。

スイスでは子供から大人まで、誰もがお気に入りのシグのマイボトルを持っており、学校や仕事、アウトドアやジムから旅行まで、幅広いシーンで日常的に使われているそうだ。

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アルミニウムが環境に優しい素材と言われるわけ

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左が1965年の発売開始時の製品。現行モデルと比べると、すでにほぼ同じ形をしていたことがわかる。

アルミニウムは非常に経済的な素材だ。再生地金を作るために必要なエネルギーは、新地金を作る場合のわずか3%で済み、品質的にもほとんど変わらないものを作ることができる。

さらにシグのボトルは、99.5%という高純度の良質なアルミプレートに600トンの圧力をかけて成型するため、本体に継ぎ目がなく、丈夫で軽量な構造が最大の特徴である。

彼らのシグネチャーモデル「トラベラーズボトル」は、発売から数十年、デザインや製造方法は一切変更されていない(内部コーティングが進化したくらい)。それほど、発売当時から完成された製品だった。

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このアルミプレートに圧をかけて成型するため、パーツの接合部がなく、故障や漏れがほとんどない。

また、シグでは製造時には再生可能エネルギーを使ったり、製造時に出る廃棄物の99%がリサイクルされるなど、環境への取り組みに並々ならぬ力を入れている。

高品質で再利用可能なアルミボトルを長く使用することは、使い捨てのペットボトルの使用量を減らすことに繋がり、CO2排出量を抑えることができる。廃棄する際は、アルミ缶と同じように捨てるだけ。一緒にリサイクルできる造りになっている。

こんな魅力的な取り組みを続ける企業の魅力的な製品が、自然環境に対する意識が高いスイス国民に支持されないわけがない。

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内部は臭いの付きづらい特殊コーティング加工済み。本体が凹んでもコーティングが割れたり、剥がれることはない。
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ピンチが「マイボトル」という新たな需要を生み出した

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エコボトルを普及させるキャンペーンの一環として、オリジナルデザインを公募するコンテストも行っていた。

そんなシグのボトルが日本にやってきたのは1977年にまで遡る。当時は、飲料用のボトルとガソリンなどの燃料用ボトルの2種類が輸入されていた。

アウトドア誌『ビーパル』が創刊し、アメリカンカルチャーの影響からアウトドアで遊ぶことが日本でも注目され始めていた当時、シグといえばバーナーやランタン用のガソリン燃料を持ち運ぶボトルの代名詞的存在であった。

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日本とスイスの国交樹立150周年を記念したイベントでは、スイスを代表する製品としてSIGGのボトルが展示された。

燃料ボトルの売り上げがじつに全体の9割を占め、飲料用のボトルはほとんど売れていなかったそうだ。

しかし、事故の損害賠償などの問題から燃料用ボトルの取り扱いは徐々に縮小してゆく。結果、シグの売り上げは激減し、2004年には取り扱い自体が終了となってしまった。

そこで日本代理店を務めるスター商事が、燃料用ではなく飲料用のボトルをなんとかプロモーションするために始めたのが、「マイボトルを持とう」というキャンペーンだった。

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本国スイスでは、子供も自分用のボトルを持つのは当たり前。

使い捨てのペットボトルを買わず、自分のボトルを持つ。

この取り組みは、南青山で行われた「東京デザイナーズウィーク」との協賛により大きな話題を呼んだ。以降はメディアでの露出をはじめ、有名デパートやインテリアショップ、セレクトショップなどでも展開が広がっていく。

2008年には年間で25万本を売り上げるまでに成長したというのだから驚きだ。これは世界中での売り上げはなく、日本のみでの数字である。

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単純に格好良い。だからこそ、長く愛用できる

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カラビナが付けられる独特な構造のキャップは、穴に棒を挿して回すと力が弱い人でも開けることができる。炭酸も逃さない高い密閉性も特徴。

水道水を気軽に飲むことのできない海外では、自宅でボトルに飲み物を詰めて持ち歩く文化が広まる理由は想像に難くない。

しかし、日本はいつでもどこでも蛇口をひねれば水が飲める。ペットボトルだって、どこでも手に入る。「マイボトルを持つ」という考えがここまで浸透したのは、実用性だけが理由ではないだろう。

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ノベルティとして利用する企業も多い。現在、日本だけで年間約100パターンものオリジナルボトルが作られているそう。

こんなことを書いては元も子もないかもしれないが、なんと言ってもシグのボトルがお洒落で格好良かったからではなかろうか。

そのデザイン性の高さは、収蔵品のひとつにセレクトしたニューヨークのMoMAのお墨付き。シンプルなデザインなのでステッカーチューンを施して、自分だけの一本に仕上げるのもありだろう。

「環境に良くて機能的」なだけのエコボトルじゃ、ずっと使い続けるのは難しい。せっかくマイボトルを持つなら、やっぱりシグじゃなきゃ。

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[問い合わせ]
スター商事
03-3805-2651
www.star-corp.co.jp

「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。 上に戻る

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池田 圭=取材・文 矢島慎一=写真

# Camp Gear Note# SIGG# キャンプ# マイボトル
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