Camp Gear Note Vol.62
2020.10.11
LEISURE

アウトドア業界を明るく灯す「マイルストーン」のヘッドランプ、その実力とは?

マイルストーン

「Camp Gear Note」とは……

キャンプを始めてみると、「こんなに便利なものがあったんだ!」と驚かされるようなギアの発見がある。なかでもヘッドランプには驚かされるだろう。

使ったことがない方は懐中電灯の延長くらいに思っているかもしれないが、これがとにかく便利。LEDの登場以降は、より小さく、バッテリー持続時間も信じられないほどに延びている。

欧米ブランドのシェアが多いギアだが、今回はその中でもひと際個性が輝く日本生まれのブランド「マイルストーン」の成り立ちと特徴について掘り下げてみよう。

丸100年に渡り、灯りを生み出し続けてきた会社が母体

マイルストーン
母体となった冨士灯器株式会社は、大阪府阿倍野区天王寺町を拠点とするコテコテの関西下町企業である。

マイルストーンは、2014年に当時30代だった西岡修平さんが立ち上げた若いブランドだが、その背景にある歴史はかなり古い。

親会社の「冨士灯器株式会社」は、夜釣りに役立つ灯りの製造販売を主な事業としてきた老舗釣具製造メーカーで、今年で創業100周年を迎える。西岡家は代々灯りを扱ってきた、いわば「灯りの一族」とでも呼ぶべき存在である。

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[左]今見ると、カーバイドランプはなんだか新鮮で洒落て見える。[右]初期のヘッドランプは、バッテリー大きさが時代を感じさせる。しかし、当時は画期的なコンパクトさだった。

「冨士灯器株式会社はカーバイドランプという炭鉱や露店商、釣り用に使われていたランプを創業時から作り続けてきた会社です。ヘッドランプを作り始めたのは祖父の代から。規模こそ今と違いますが、当時はナショナル(現・パナソニック)と競い合っていたのだそうです」。

その後、LEDの登場に伴い、夜釣り用の電気ウキなどの生産も開始。現在まで開発から、検査、組み立てまですべての工程を大阪府阿倍野区天王寺町(あべのハルカスのお膝元)で行っている。

マイルストーン
兄と一緒に釣り用のランプを扱うブランド「ZEXUS(ゼクサス)」の立ち上げにも参画。同ブランドは釣り業界ではすっかりお馴染みの銘柄に成長している。

「ガレージブランドが増えていますが、なかなかヘッドランプを選択するブランドはないですよね。でも、僕の場合は灯り、LED、電池が常に身近にあったので、自然な流れでヘッドランプの開発に取り組んだのです」。

こうした環境下で育ち、働いてきた西岡さんが自身のブランドを立ち上げるにあたって、これまで培ってきた経験を生かせるヘッドランプを選んだのは必然だったのだ。

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暖かい電球色のLEDとシンプルを極めた操作性

マイルストーン
右が通常の白色LEDで左が電球色。並べてみると違いは歴然。

灯りを扱ってきた歴史は長いとはいえ、アウトドア用ヘッドランプ市場への参入は初めて。そこで、特色を出すために彼らが取り組んだのは、通常は白色が使われるLEDに暖かい電球色を採用することだった。

「キャンプシーンで親しまれているランタンの暖かい光をイメージしました。テクニカルなお話をすると、フォグランプと同様、電球色は光の透過性に優れていて霧の中でも乱反射せずによく見えるんです」。

さらに、暖かみのある光は食事をおいしそうに見せてくれる効果もある。無機質な蛍光灯の下で食べるよりも、ランタンの明かりで食べるほうが美味しく感じるのと同じだ。

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あえてスイッチを2つにすることで、それぞれのスイッチが持つ機能を振り分けて操作をシンプルにした。

また、操作性の良さとシンプルさも特徴のひとつだろう。

徐々に機能を付け加えていった結果、光量の調整方法や色の変更方法などの手順が複雑で使いづらいヘッドランプは少なくない。消し方がわからない、なんて元も子もないことも起こり得る。

そこでマイルストーンの製品は、あえて機能をシンプルに絞り、複数のボタンに役割を振り分けるなど操作を簡略化した。

「複雑にすると基板の不良など故障の原因になり得るし、扱いづらくもなる。我々はいかに使いやすいか、を追求して物作りをしています」。

カラーも1機種に1カラーのみの展開と非常にシンプル。実に単純明快。

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スペック値だけではなく、ブランドとして選んでもらえる魅力を目指す

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ベルトのデザインやパッケージを含めたデザイン製の高さは、売り場でもひと際目を引く。

アウトドアショップのヘッドランプ売り場に足を運ぶと、その一画でマイルストーンが異彩を放っていることにすぐに気がつくだろう。商品のパッケージやデザイン、ディスプレイがとにかく洒落ている。

「カタログのスペック数値だけでなく、マイルストーンという“ブランド”で選んでいただけるような見せ方を大事にしています。パッケージやカラー展開でも、ほかとの見え方の違いを意識しています」。

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手をかざすだけでON/OFFの操作ができる。不要なときはセンサーをOFFにできるので誤作動の心配もない。

デザイン性と操作性の高さ、電球色のLEDに加え、もうひとつマイルストーンならではの特徴に「モーションセンサー」という機能がある。

「キャンプで料理をするときに手が汚れている。もしくは焚き火をいじっていて分厚いグローブをしている。そんなときに、手をかざすだけでON/OFFができる便利な機能です」。

これは、かなりキャンプでの実用性が高い機能だ。

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この人あって、このブランドあり

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近年はトレランに傾倒し、走ってもブレにくいヘッドランプなどの開発も進めている。

いくつかの特徴を紹介してきたが、マイルストーンの最大の特徴は、なんと言っても西岡さん自身の存在にある。

新規参入がなかなか難しいアウトドア業界において、「なんだかエネルギッシュな関西の人が面白い商品を持って回っているぞ」と話題になり、急速にその顔を知られていった。各地のイベントや大会会場にも本当によく現れ、熱く自社製品を解説している姿は印象的だ。

自身もキャンプやトレランに熱心で、本人が何より楽しんでいることは製品のディテールから滲み出ている。

しかも、開発だけでなく、プロモーションやカタログの撮影まで、なんでも自身でこなしてしまうのだから頭が下がる。

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プロ顔負けの写真のクオリティ、というより、元々プロだったのだから間違いない。

写真を専攻したアメリカの大学を卒業したあとは、向こうの新聞社で報道写真を撮っていた時期もあるそうだ。

「カタログは創業以来、世界観を伝えるための写真集として、自分で撮り続けています。開発や広報活動だけでなく、工場で検査や組み立てをしたりもしますよ。イベントに関しては、ユーザー様からの声を直接聞ける貴重な機会なので、できるだけ参加したいんです」。

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カタログの写真撮影から営業、商品の組み立てまで、まさに1から10まですべてに携わるのは西岡さんならではのスタイル。

カタログ撮影の舞台は、釣り用品の展示会で訪れる海外にも及ぶ。イメージに合う人にアポなしで声をかけて撮影させてもらう、というストロングスタイルだ。

西岡さんの作る世界観と機能性の高さは年々知名度を増し続けており、今や海外6カ国でも販売されるまでになった。

ティートンブロスとコラボした機能性Tシャツ、clefとのコラボキャップなど、他ジャンルのブランドとの共同制作も積極的に行っている。

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ヘッドランプを選ぶポイントは、各要素の絶妙なバランス感にあり

マイルストーン
特徴はメーカーやモデル次第で様々。明るさ、点灯時間、バッテリー容量、軽さ、機能性など、どこに重きを置くかで特徴が変わってくる。

最後にヘッドランプを選ぶ際に気をつけるべきポイントも伺ってみた。

「数値だけを見比べて購入される方がほとんどだと思います。しかし、表記されている明るさがずっと照射されるわけではなく、使用時間とともに徐々に暗くなるのがほとんどなんです。酷いものだと最初の数秒だけ明るくてあとは照度が低くなるものもあるので注意が必要です」。

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どの要素に比重を持たせるかで各製品の特徴が決まる。小さなギアだがモデルによる違いは大きい。

「明るさと点灯時間の関係性による照射カーブが、どのような曲線を描くのかが大切です。ほかに機能性、操作性、軽さ、充電式ならばバッテリー容量など、さまざまな要素の絶妙なバランス感こそがヘッドランプ選びのポイントなんです」。

ヘッドランプはわずか数十gの小さなギアではあるが、実にさまざまな要素が求められる。

スタミナがあって明るく、マルチな能力に軽快なフットワークを兼ね備える。バランスの取れた良いヘッドランプとは、なんだか西岡さん自身のようだ。

[問い合わせ]
マイルストーン
06-6719-2281
http://milestone81.com

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90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。 上に戻る

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池田 圭=取材・文 矢島慎一=写真

# Camp Gear Note# キャンプ# ヘッドランプ# マイルストーン
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