Running Up-date Vol.19
2020.04.25
LEISURE

フィジカルもメンタルも更新し続ける、チョリパン屋オーナーのランニングアップデート術

中尾真也

「Running Up-Date」とは…

突然だが「チョリパン」を食べたことはあるだろうか。

代々木上原にあるミ・チョリパンは、おそらく日本唯一となる本格的なチョリパン専門店だ。オーナーの中尾真也さんは熱心なランナーで、前回登場いただいた藤川英樹さんとともに「チキンハート ラン クラブ」を立ち上げたメンバーでもある。

中尾真也

「アルゼンチンのソウルフードなんですが、スペイン語で『chorizo(チョリソー)』はソーセージ、『pan(パン)』はそのままパンという意味。つまりパンにソーセージがサンドされているものがチョリパンです」。

それにしても、どうしてチョリパンなんだろう。

本場アルゼンチン人も驚く絶品チョリパンが東京で味わえる

「旅をすることが好きで、2009年から1年半ほどかけて世界一周旅行に出ていました。30歳で帰国したのですが、もともと縁と経験のあった飲食関係で開業したいなと考えていました。条件は自分の好きな国の食べ物で、1品で成立する、まだ誰もやってない料理。この1品だけは誰にも負けない、と言えるものを作って勝負したいなと。そこでひらめいたのがチョリパンでした」。

中尾真也
ミ・チョリパンの基本のチョリパンは1本770円、レタスやトマトなどを好みの分量盛れるカスタムチョリパンは1120円。いずれも税込み。テイクアウトやデリバリーにも対応している。

そうと決まればあとはやるかやらないか。日本一のチョリパンを目指して再度アルゼンチンの首都ブエノスアイレスへと飛び、現地の専門店にて飛び込みで修業を敢行。さすが世界一周旅行経験者、そのフットワークとバイタリティはハンパない。ちなみに、まだこのときは走っていない。

「チョリパンって煙をモクモクと立てている街角の屋台で手軽に食べる下町グルメなんですよね。余談ですが、チョリソーと聞くと多くの方は辛いソーセージを思い浮かべますよね。

でも、それはメキシコ流のチョリソーの特徴で、日本ではこのメキシコのチョリソーが広まっているのでスパイシーなイメージがあるのかもしれません。ですがチョリパンに挟むチョリソーはアルゼンチン流。牛肉をふんだんに使った極太の粗挽きソーセージなんです」。

ミ・チョリパンのチョリソーは1本100g以上というボリューム。2種類のひき肉を約10種類のスパイスと混ぜ合わせ、豚の腸に詰めて炭火でじっくり下火をいれたあと数日間熟成し、提供前に再加熱してサーブしている。

だからほぼ肉料理であり、ホットドックというよりはハンバーガーに近い。もともとテイクアウトやデリバリーでの利用も多いとのことなので、代々木上原近郊の方はぜひ!

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アタカマ砂漠を走って、マジになる

2013年に日本では珍しい本格的なチョリパン屋をスタートさせた中尾さん。飲食店に限らず仕事の転機にはありがちなことかもしれないけど、不規則な生活がたたって順調に体重が増えていった。

「そのころは一緒にお店をやっている妻と、週に3回くらい飲みに行ってました。〆はラーメン。これでは太らないはずもないですよね。みるみるとベスト体重から10kg近く増えてしまって、まずはプラマイゼロに戻したいなと。走り始めてから最初の2〜3年は、休みの日にちょろっと、飲むために走っていました」。

中尾真也

熱心にランニングへと打ち込むきっかけになったのは、前述の藤川さんに誘われてトレイルランを始め、チリで行われるアタカマ砂漠マラソンへと出場したことだ。

「『アタカマ・クロッシング』というレースなのですが、そのドキュメンタリー番組を飲みながら鑑賞していて、そのときのノリで『砂漠を走っちゃおう』って。総距離250kmを1週間かけて走破するステージレースで、翌2018年の大会に出場しました」。

アタカマ砂漠を走りぬくために本腰を入れて走り始め、結果、見事完走を果たす。

中尾真也
こんなコースを駆け抜ける。中央が中尾さん。ちなみに右が前回取材した藤川さん

「完走できたのはうれしかったのですが、3人で組んだチームのうち1人が途中で走れなくなってしまい、最終的には藤川さんと自分の2人で走り抜くことになりました。なので、どこかやり残した感じがあって、もっとやり切ってみたいと、今では自分なりに本腰を入れて走っています」。

目下の目標はトレイルランニング界で「これが出来たらツワモノ」と目される100マイル(160km)レースに出場し、力強い走りでフィニッシュすること。本来であれば2020年の春に挑戦するはずだったが、新型コロナウイルス拡大の影響でしばらくお預けとなっている。

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ランニングは年齢が上がってもアップデートできる

「仕事柄、日中は仕込みやお店が忙しいので、走るのはもっぱら夜の仕事上がりになります。自宅を起点に、代々木上原の周辺をまわる1周8kmのコースを設定して、催事などへの出店がない通常営業の日は、ほぼ毎晩走ってますね。

この辺は坂道が多いのがトレーニングに良くて、8kmのコースの中に登りが11カ所あるんですよ。『月間これくらい走りたい』というのを自分の中の決めごとにしているのですが、それもできなきゃ100マイルなんてダメだよねというか、達成感が日々走ることのモチベーションになっています」。

より本気でランニングに打ち込むため、藤川さんと一緒にランニングチームを作ったのは以前お伝えした通り。自分が本気になると本気な人が集まって、気の合う仲間が増えていく。そして、お店の認知にも繋がる。

「もともと追い込むのは好きなタイプだったんです。しかも長めの距離を走りたい。瞬発力があるタイプではなくって、我慢することが好きなのかもしれません。だから走ることは向いているのかなと」。

中尾真也

「反面、ケガなどで走れないとストレスを発散する機会がないというか、仕事にも悪影響がありました。そのことに気がついてからはケアに関しても気を遣うようになりました。ランニングで必要なのは止まらないこと。進み続ける、やり続ける力が大事で、それってある程度年を重ねてもできることじゃないですか。

フィジカルだけでなくメンタルもアップデートし続けられるのが自分の性に合っています。いずれはアルゼンチンで開催されているレースにも出てみたいですね。今お店で出している牛肉はアルゼンチンの肉ではないのですが、アルゼンチンにもいい肉牛が肥育されているので、仕事も絡めて行きたい」。

走ることは趣味。でも、その趣味に本気になってみることで、年齢を重ねてからでもいろいろなアップデートのチャンスが得られる。そういう機会はありそうでないものだ。ある意味ではランナーの特権なのかもしれない。

中尾真也
アタカマ・クロッシングをともに走り抜けたシューズ。コースのアドベンチャー度合いを物語る。

後編では中尾さんがこだわるランニングギアを紹介する。

「Running Up-Date」
ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。 上に戻る

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RUNNER’S FILE 10
氏名:中尾真也
年齢:38歳(1981年生まれ)
仕事:チョリパン専門店「ミ・チョリパン」オーナー
走る頻度:ほぼ毎晩、1~1.5時間ほど
記録:砂漠マラソン完走

 

礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真

# Running Up-Date# トレイルランニング# ミ・チョリパン# ランニング# 中尾真也
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