普段着もランニングウェアも「黒」を選べば間違いない
中目黒のサイドウォーク・スタンドで焙煎士として働く小林修人さんは、フルマラソンでサブスリー(3時間切り)を継続中の実力派ランナーだ。でも、ギア選びの目線は一般的なスピードランナーとはひと味もふた味も違っている。
その一端がうかがえるのが、シューズへのこだわりだ。

ニューバランスに履き替えたら靴ズレが無くなった
「もともとニューバランスを愛用していて、今は縁あってギアのサポートを受けています。走り始めて間もない頃は他メーカーのものを履いていたのですが、2014、2015年ごろからニューバランスを履くようになりました。
ニューバランスのシューズはウィズ(足幅)が選択できるため、比較的幅広な自分でもベストフィットを探しやすいんです。その証拠に、ニューバランスに変えてからは靴ズレが無くなりました。それからクッション性に富んだモデルが揃っている点も気に入っています。
普段からとにかくストレスを感じずに走りたいんですよね。最近はミッドソールの厚いシューズがトレンドになってきていますが、足のダメージが少ないですし、攣ることもなくなりました」。
この日履いていたのは「フレッシュフォーム1080」というニューバランスのなかでも最上位のクッションを搭載するモデル。速く走るというより、心地よく走りたいときにセレクトする。トウボックスがワイドなため足型に合い、またグローバル規格のシンプルなデザインも小林さん好みだ。

ブラックで統一しておけば、いつでも心地良い
ウェアに関しても「着心地の良いもの」が優先順位の第一にくる。
「僕は黒いアイテムがランニングワードローブの基本です。ランニング中は余計な事を考えずに走りたいので、究極にシンプルでカラーリングも統一感があるほうが気持ち良いです。
カラフルなウェアの場合、コーディネートの組み合わせ方によっては余計なことを考えすぎて、気持ちが下がってしまうこともある。それって立派なストレス要因ですよね。その点、手持ちのアイテムをシンプルな黒で統一させておけばその心配もありません」。
モノ選びの目線がシンプルに洗練されていくことも、ランニングからのマインドセットかもしれない。その影響は普段着にも及ぶ。
「走るようになって普段着も黒が多くなりました。仕事中に履いているシューズもランシューです。やっぱり快適ですからね。普段から立ちっぱなしですし、ロースターとショップとの行き来も多いので、自然とストレスを減らすようなモノ選びになってきているのだと思います」。
「ラブは英国のアウトドアメーカーで、このジャケットはたったの90gしかありません。でも、その90gのなかにパフォーマンスアップのための最先端技術が詰まっています。素材は7デニールのパーテックスシールド。耐水性と防風性を備えつつ透湿性にも優れている点が気に入っています。
天候が変わりやすく風の強い日が多い湘南でのランニングには最適なんですよね。それに羽織らないときはとてもコンパクトにまとめることができるので、『走り始めは寒いけど……』ってときには最高ですね。
アンダーウェアはザ・ノース・フェイスのもの。ポリプロピレンという疎水性のある素材を使っているのが特徴で、汗をよく吸ってアウター側へと排出してくれます。汗っかきなので衣服内は常にドライに保っておきたいのですが、これを着るのと着ないのとでは全然違います」。
ガチで走っているからこそ、機能性ウェアの最前線を体感できる。それもランナーであることの面白さだ。
「最近はタイツスタイルで走ってますね。ゴールドウインのc3fitを愛用していて、日本人に合わせて設計されているのと、ほど良いコンプレッションが効いていて本当に快適。肌触りもいいですし、丈の長さもモタつかなくてちょうどいい。気に入ったモノをリピートして使い続けるのが性分です」。
海外モノのようなシンプルなキャップを日本人サイズで
自身が主宰するランニングチーム「IKISM(イキズム)」では、オリジナルアイテムも作っている。それがシンプルな5パネルのキャップだ。
「海外のブランドにはこの手のシンプルなキャップがありますけど、欧米人は頭が小さいですから、実際に僕らが被るとフィットが浅めになりがちですよね。そこで日本人へのフィット感にこだわってオリジナルで企画しました。
元々アパレル業界にいた時のツテで。サンプルを作っては修正するといったやりとりを3回ほど繰り返して、ようやく満足のいく被り心地になりました。表地はコーデュラ、裏地はクールマックスという組み合わせも良い感じです。ロゴすら入っていないので、どんなシチュエーションでも合わせられますよ」。

このキャップともうひとつ、走るときに手放せないのがオークリーのサングラスだ。
「レーダーというモデルで、視界を広く確保できる一枚レンズで汗をかいても曇りにくく、どれだけスピードを上げても絶対にズレないので信頼しています。
サングラスが必要ないシチュエーションになったら額に上げて装着して走ります。テンプル部分のラバー素材がいいんですよね。太陽の光って意外と体力を奪いますし、目線を細かく修正したりしなくてはいけないので、走っている最中に実はかなりのエネルギーを使っていると思うんです。日中のランニングの場合はサングラスをすることで、走りに集中できますよ」。

頭の上からつま先まで、気持ち良く走れるかどうかにこだわり抜いた小林さんランニングスタイル。そのうえでサブスリーの実力の持ち主なのだから説得力は段違いだ。ストレスフリーだからこそ良いトレーニングが積めて、結果パフォーマンスも高く保てる。
地元・茅ケ崎の海岸沿いを駆ける小林さんの後ろ姿は、ランニングにとって心地良さをアップデートすることがいかに大事かを教えてくれているようだ。
「Running Up-Date」
ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。 上に戻る
RUNNER’S FILE 08 氏名: 小林修人 年齢:35歳(1984年生まれ) 仕事:SIDEWALK STAND 焙煎士 走る頻度:週3回、15~20km程度 記録: 2時間54分 instagram : @shupresso |
礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真