Camp Gear Note Vol.35
2020.03.15
LEISURE

「ファイヤーサイド」が提案する“火”日常の暮らし

連載「Camp Gear Note」●90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。

 

長野県の「駒ヶ根」という町の名を耳にしたことはあるだろうか。

諏訪湖の南方に位置し、東は南アルプス、西は中央アルプスと2つの大きな山脈に挟まれたエリアである。そんな場所柄、清らかな雪解け水が育む農産物や果物などが有名で、豊かな森を活用した林業も盛んに行われている。

オフィスの窓から見えるのは、雪を抱いた南アルプスの山々。

この自然に溢れた信州の地を軸に、30余年に渡り、日常に火のある暮らしを提案し続けてきたのが、今回の主役「ファイヤーサイド」。彼らが手掛ける小型ストーブや焚き火道具の数々は、いつかは手に入れたい一生モノとして、キャンパーのあいだでかなり熱いらしいのだ。

ファイヤーサイドならではの2つの特徴

御年66歳とは思えないほどエネルギッシュなポールさん。仕事中にふらりと山登りに出かけてしまって困る、とは社員さんの弁。

まず、同社の代表を務めるポール・キャスナーさん抜きに、ファイヤーサイドの魅力を語ることは難しいだろう。

1953年生まれのポールさんは、今から40年ほど前に尺八を学ぶためにアメリカから来日。存分に尺八を吹ける環境を求めて東京から移住したのが、信州・長野の山奥だった。

当時は、高速道路を建設するために立ち退く民家に出向き、古道具や骨董品を買い付けて修理する仕事で生計を立てつつ、自給自足の生活を送っていたという。

機能性と美しさを併せ持つ、「バーモント キャスティング」の薪ストーブの輸入販売から会社はスタートした。

暖房や調理道具として薪ストーブを使う日常生活を送る中で、ポールさんは理想の薪ストーブに出会う。友人であった翻訳者で作家の故・田渕義雄さん(アメリカのアウトドアカルチャーを伝える良書を数多く出版しているのでチェックしてみて!)の自宅で使われていたバーモントキャスティング社の薪ストーブである。

縁あって日本で同社の輸入代理店として「ファイヤーサイド」をスタートしたのが1987年のこと。以降、暖房器具としてだけでなく、薪火調理や薪作りなど、薪ストーブがある暮らしの楽しみ方を幅広く提案し続けてきた。

「薪ストーブを広めようとするなかで、自然とストーブや焚き火関連の道具も扱うようになりました。でも、既存の道具では満足することができないことも多くて、オリジナルの道具を作り始めたのです」。

ポールさんは、火を焚くことだけでなく、キャンプや直火を使った料理も大好き。自宅やフィールドで道具を使うなかで、「もっとこういうものがあったらいいのに」を形にするうちに、ファイヤーサイドのラインナップは徐々に増えていった。

信州に移住したばかりのポールさん。この頃から薪の火は常に身近にあった。

ファイヤーサイドの取り扱う製品には、2つの大きな特徴がある。

「まず、生活を豊かにしてくれる機能性がしっかりとあること。当然、どれだけ見た目の良い道具でも、便利じゃないと長く付き合うことはできません。もうひとつは、使っていないときでもかっこいい道具であること。美しい道具はオブジェにもなりますし、長く使い続けることができるのです」。

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長く付き合うには機能だけでなく見た目も重要

使い込むほどに味が出ることも、ファイヤーサイド製品の特徴。祖母から譲り受けたケトルもいまだに手元にあるそう。

オリジナル商品第1号であり、現在もロングセラーを続ける看板商品「グランマコッパーケトル」には、ファイヤーサイドらしい特徴が色濃く現れている。

ストーブや焚き火にかけて大量のお湯を沸かすことができるこの商品。名前の通り、ポールさんの祖母(グランマ)が何十年も愛用していた銅製(コッパー)のケトルをもとにデザインされている。

初めはインドで生産していたが、現在は新潟県長岡市、燕市の職人に制作を依頼している。

「価格は上がりましたが、クオリティが格段に高まり、より長く付き合える美しい道具になりました。銅は熱伝導率がいいだけでなく、使い込むうちに味が出る、育てがいのある素材でもあります」。

少ない力で握ることができ、細かい炭も掴める。何より、佇まいが美しい。

炭を掴むための道具「ファイヤーバード」も、さりげなく転がしておくだけで美しい、同社を代表する製品のひとつ。

地元・駒ヶ根の鉄工所で作られており、掴む、砕く、平す、返すなどの作業が、これ1本で行える汎用性の高さも魅力だ。

オリジナルではない製品からも同様の哲学が感じとれる。例えば、小型ストーブ「Ozpig(オージーピッグ) Fireside Edition」は、生産者との話し合いを経て、ファイヤーサイドだけの特別仕様のモデルを扱っている。暖房器具としてだけでなく、調理器具として使えるようなオプションも各種充実させた。機能面だけでなく、キャンプ場でひと際目立つ個性的な見た目も人気の理由だ。

ファイヤーサイド
商品名は、足が短いオリジナルは豚のような見た目だったことが由来。かわいい……。
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アメリカと日本で育んだ道具に対する独自の価値観

ポールさんは、道具を手掛けるにはセンスと自分なりの基準を持つことこそが大切だと説く。

「私の場合は、22歳までアメリカで生活してきた感覚に加えて、日本で骨董品を扱っていた時期にものを見るセンスと価値観を養わせてもらいました。当時の民家からは松本城の弾薬箱が出たり、博物館クラスの民具を目にできる機会も多かったんですよ」。

製品はプラスチックや電気を使わないものがほとんど。シンプルな造りなら修理しながら長く付き合える。

アメリカと日本、異なる2つの大きな経験が、ポールさん独自の価値観とファイヤーサイドの道具を形作っているのだ。

「昔に比べアウトドアへの関心が高まっている時代だからこそ、安い買い物ではないかもしれないけれど、長く使ってもらえる本物を届けたい。ただ便利な道具としてだけではなくて、火を焚いて日常を楽しくするための作り手のこだわりも伝えたいんです」。

今年からは新たにモバイル型のサウナテントの展開も始め、ゆくゆくは駒ヶ根を「薪火の聖地」として盛り上げたいと笑うポールさん。そのパッションの炎はまだまだ消えそうにない。

[問い合わせ]
ファイヤーサイド
0120-46-7877(平日9:00〜17:30)
www.firesidestove.com

池田 圭=取材・文 宇佐美博之=写真

# Camp Gear Note# キャンプ# ファイヤーサイド# 小型ストーブ# 焚き火
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