みんなの“欲しいモノ”を徹底特集! 「2020年、これ始めます」カタログ Vol.95
2020.03.03
LEISURE

老舗旅館「おちあいろう」に泊まる。そんな贅沢も悪くない。大人ですから

近代的なホテルもいいが、代々続く伝統のおもてなしが受けられる老舗旅館に目を向けてみるのもいい。

1874年に創業し、登録有形文化財の宿「おちあいろう」。この宿を愛した川端康成や北原白秋などの名だたる文人たちみたいに、趣ある宿でおこもりも悪くない。そんな贅沢も、大人ですから。

 

いい大人として、老舗旅館を訪れたい

いい大人として、老舗旅館を訪れたい「おちあいろう」

人生で初めて旅館に泊まったのは3歳頃だ。父母との初めての旅だった。旅館に着いた途端、私は番頭さんの立つ玄関先に走り寄り、「子供用お寝間着はありますか」と言ったのだった。

自分でも覚えているが、その後繰り返し父母から聞かされた「こまっしゃくれた子供」であった私の逸話として、再記憶されたものなのかもしれない。

木造建築の9割が国の有形文化財に登録されているだけあり、玄関に一歩足を踏み入れると、そこはまるで別世界のようだ。

宿泊の夜、ひとしきりの雨と雷があった。怖かった私は、丁寧に並べて敷かれた2枚重ねの敷き布団の間に滑り込んだ。

早生まれで小さな子供だったので、布団の間にサンドイッチにされていても誰も気付かず、「子供が行方不明」のひと騒動があったらしいのだが、私の記憶にあるのは、温かな色の行灯が灯る枕元と、笑う父母の顔、そして優しそうな仲居さんの姿のスナップショットだけだ。

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心を柔らかくして、いざ出陣

各部屋にはコーヒー豆とミルが用意されている。

まるで生業でもあるかのように旅をしている。その滞在の多くはホテルになる。海外は言うまでもなく、国内でも仕事がらみであればホテルである。旅館に泊まる機会が多いとは、決して言えない。しかも、それが老舗旅館であれば、泊まるにはそれなりに心の余裕が必要だと思っている。

宿泊する者をくつろがせようと心を配られた調度、その土地の豊かな実りが丁寧に調理された食事、そして何よりも、お世話をしていただく仲居さんの方々、そして女将さんの、さりげなさの中にある心遣い、それらを感じ取るためには、こちらの心が柔らかくないとならない。

日々、いかに慌ただしく、心が固くなっていようと、旅館に出かける前には、静かに音楽を聴いたり、神社に寄ってみたり、まずは心のストレッチをして出かけたいと思っている。

源泉賭け流しの内風呂では、窓から差し込む光が、四季折々の表情を映し出す。

母はポチ袋を集めていた。昔はあった酒屋や米屋の御用聞きさんへの季節の挨拶、そして料亭や旅館でお世話になった仲居さんへのお心づけを入れるために、粋な柄、かわいい柄の描かれた袋が入った小箱があった。探せば、どこかから出てくるかもしれない。

そろそろ母のポチ袋を使わせてもらおうか。お世話になった感謝を、照れずに自然に、女将さんや仲居さんにお伝えするには、少々の年季がいるものだ。

茶室のようなサウナはプロサウナー松尾大氏が手掛けたことで話題に。

老舗旅館に泊まる喜びを知るには、自分の力量が必要なのだなと、今は思う。旅館に泊まっても良い大人になっただろうか。

おちあいろう
住所:静岡県伊豆市湯ヶ島1887-1
電話:0558-85-0014
1泊6万7000〜10万2000円(税・サ込み)※1名料金1泊2食お飲み物代含む
www.ochiairo.co.jp

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お世話になった旅館へちょっとした心遣い

[左]ポチ袋
さまざまな絵柄や紙質があるので、あなたらしいと思うものを選び、自分でも愛でてほしい。必ず伝わる何かがある。お心づけが必要になった機会に慌てないですむよう、常に財布に1、2枚忍ばせておきたい。

[中]お菓子
お世話してくださった皆さんに、ほっとひと息をついていただきたい、そんな気持ちを小さなお菓子に込めて。季節を感じられ、ひと口で食べられるものが最高。これは、受けたもてなしのほんの一部をお返しする心だ。

[右]一筆箋
「ありがとう」「お世話になりました」「また戻ってきます」、素直なひと言を気取らずに。お礼を書き記すのは、自分でも清々しい気持ちになれるものだ。これをきっかけに日常でも一筆したためる習慣を持ちたい。

 

清水健吾=写真 平野 佳=文

# おちあいろう# 旅館
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