37.5歳からの愉悦 Vol.178
2021.01.14
FOOD&DRINK

中目黒の居酒屋で、看板娘が“大学を首席で卒業する”という両親への恩返しをしていた

「看板娘という名の愉悦」とは……

中目黒といえば、言わずと知れたEXILEのお膝元。所属会社はLDH JAPAN(LOVE DREAM HAPPINESS)だが、そんなLDHグループが運営する居酒屋にも看板娘がいた。

訪れたのは中目黒駅から徒歩3分。産地直送の食材と厳選した日本酒が売りの「居酒屋 三盃」である。

「居酒屋 三盃」
古木を使用した外壁が目印。

一歩入っても木のぬくもりは続く。床は漆喰仕上げだ。

右側には個室が並ぶ。

さらに奥に進むと……。

看板娘の姿が見えた。

カウンターの端にはLDH仕様の熊手。

アマビエにさまざまな願いを託して。

席に着いてドリンクメニューを拝見。

ビール、ホッピー、サワー、ワイン、カクテルと、ひと通りのお酒が揃っている。EXILEつながりでレモンサワーを推しているわけではないようだ。

力を入れているのは、やはり日本酒。

看板娘いわく、「全国名水百選に指定された湧水で仕込んだ新潟の『越乃景虎』がおすすめです」。1合880円。いただきましょう。

NEXT PAGE /

看板娘、登場

「お待たせしました〜」。

こちらは横浜の上星川で育った琴恵さん(26歳)。若くして店長代理だという。

丁寧に注いでいただきました。

料理はどうしよう。佐賀のブランド鶏、有田鶏をメインとした串ものが人気のようだ。

「チーズ稲荷」、「イカダ」など想像がつかなくて気になる。

「『お刺身の盛り合わせ』もめっちゃ美味しいです。あと、料理長自慢の『カニクリームコロッケ』はぜひ食べてください」。

琴恵さんの筆による「本日のおすすめ」。

迷った末に「お刺身の盛り合わせ」(2人前・2000円)と「カニクリームコロッケ」(750円)を注文した。

「LOVE」「DREAM」「HAPPINES」が揃った。

名水仕込みの日本酒は美味しい。新鮮な刺身も絶品だ(下から時計回りに、ミズタコ、カンパチ、エンガワ付きのヒラメ、生本マグロ、ホタテ)。しかし、一番感動したのは「カニクリームコロッケ」。

美しい断面を見て下さい。

「シェフを呼んでくれ」ならぬ「料理長を呼んでくれ」だ。現れた料理長・磯田さんいわく、「ズワイガニをたっぷり使った自家製コロッケです。毎日、一個一個丁寧に仕込んでいます」。

ついでにと言っては変ですが、琴恵さんの仕事ぶりはいかがでしょう。

「真面目で気が利くし、仕事が丁寧で早い。琴ちゃん目当てで来る常連さんもいますよ。接客中にちょっと話すのが楽しいらしいです」。

琴恵さん、照れています。
NEXT PAGE /

さて、そんな看板娘が育った上星川とはどんな街?

「何にもないですよ。あ、駅前に『満天の湯』というスーパー銭湯があります」。

天然温泉の露天岩風呂が人気らしい。

「高校時代はバスケ部の同級生や後輩とよく行っていました。部活帰りにいったん家に帰ってから、また『満天の湯』に集合したり(笑)」。

泣ける話も聞けた。琴恵さんのお父さんは市営バスの運転手。録画した『孤独のグルメ』を毎回一緒に観るほど仲はよいが、かなり厳格に育てられたそうだ。

「たぶん、一回も褒められたことないです。本人がめちゃめちゃ真面目なので、『一に努力、二に努力。お前は今、何の努力をしてるんだ』といまだに言われます」。

かなり古い写真だが、お父さんの仕事場。

子供の頃はお母さんに抱っこされて、このバスにしょっちゅう乗った。出かける用事はない。お父さんが運転するバスに乗るためだけにだ。

「父親の運転は本当に自慢できるぐらい上手なんですよ。バスやタクシーに乗るときに『お願いします』、降りるときに『ありがとうございました』と言うようになったのも父親の教えです」。

仕事道具の帽子を被らせてもらってご満悦の琴恵さん。

中学時代はバレー部で汗を流した。

「入部した頃は部内でいちばん身長が低かったんですが、竹下佳江選手に憧れていて、小さくてもその分高く跳べばいいと。ひたすら練習に打ち込んだ時期です。結果、17cmも伸びてアタッカーになりました」。

中3の地区大会でアタックを打つ琴恵さん。

高校でもバレー部に入ったが、顧問とソリが合わず、1年生の夏に退部。バスケ部に転向した。さらに、高校卒業後は日本体育大学に進学。「やっぱりいちばん好き」なバレーの同好会に入り、男女混合バレーの全国大会で優勝した。

「4年生のときに母校の高校に教育実習に行ったんです。そこで面倒を見てくれたのが、男子バレー部顧問の小杉先生。バレー部を辞めたときから、ずっと気にかけてくれた恩師です。『日体大に行ったら?』と言ったのも『バレーを続けたほうがいい』と言ったのも小杉先生でした」。

高校の卒業式の日に体育教官室で撮った思い出の写真。

そして琴恵さん、なんと日体大を首席で卒業する。

「大学は奨学金ではなく、両親が一生懸命働いて払ってくれた学費なんです。小さい頃から本当に迷惑をかけた子供だったので、少しでも恩返しができればと。みんなが遊んでいる時間は図書室で隠れて勉強したり、授業をいちばん前の席で受けたりしていました」。

両親への恩返しとなった賞状とトロフィー。

やがて、大学時代にお台場で開催される夏季限定のイベント、「居酒屋えぐざいる」でアルバイトをした経験が縁でLDHグループのスタッフとなる。

「周囲に尊敬できる先輩がたくさんいるし、お客さんもみんなやさしい。毎日めっちゃ楽しいです」。

代理が外れて「店長」になり、尊敬される側になる日も近いだろう。

店頭では中目黒全域で使えるクーポンブックも販売中(300円)。

では、最後に読者へのメッセージをお願いします。

「くりの」じゃなくて「あわの」さんです。

 

【取材協力】
居酒屋 三盃
住所:東京都目黒区上目黒3-6-5 中目ビル1F
電話番号:03-6451-2330
www.izakaya-sanbai.jp

「看板娘という名の愉悦」Vol.135
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
上に戻る

連載「看板娘という名の愉悦」をもっと読む

石原たきび=取材・文

# 中目黒# 居酒屋 三盃# 看板娘
更に読み込む