37.5歳からの愉悦 Vol.164
2020.10.08
FOOD&DRINK

新宿ゴールデン街のバーで、看板娘が5匹の猫に囲まれて楽しく働いていた

「看板娘という名の愉悦」とは……

前回取材した看板娘は、同じゴールデン街のなかでもうひとつのバーと掛け持ちで働いていた。そして、その店には猫が5匹いると……。

「4C's Bar ROSSO」
さっそく、入り口でお出迎えされました。

こちらは「4C’s Bar ROSSO(ヨッシーズ バー ロッソ)」。ワイン、ウイスキー、ジンの品揃えが豊富なバーだ。猫に誘われて階段を上がると看板娘の姿。

コロナ感染対策も万全。

カウンター席では看板猫が女性客に甘えている。

ん? 指を舐めている?

「『CIAOちゅ~る』をあげているんです(笑)。ここで買えますよ」。

お値段は「100円以上」で上限はなしとのこと。

この女性はコロナの自粛期間で猫動画ばかりを見ていたら、猫愛に目覚めてしまったという。1日に1回は猫と戯れないとダメな体質になり、今では毎日のように通っている。

「最初は1匹でしたが、保護猫や行き場のない猫を引き取っているうちに5匹になったそうです」。

16歳のオス猫、チャメくん。

というわけで人間の方の看板娘だ。好きなお酒はウイスキーで飲み方はもっぱらストレート。渋い。同じスタイルでいただきましょう。

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看板娘、登場

「お待たせしました〜」。

ちろさん(27歳)。横浜で生まれ、小学校からは東京・東大和市で育った。

「男女とも仲が良かったですね。今でも覚えているのは私の家がマンションの2階で、ふつうに外階段から上がればいいのに男の子たちは石垣をよじ登ってベランダから入ってきていたこと(笑)。放課後は誰かの家に集まって『バイオハザード』とかやってました」。

ちろさんが悩み抜いた末に選んだのは「あかし」。

30ccで1600円と少々値は張るが、コクのある味わいになるオロロソシェリーの樽で3年5カ月貯蔵したシングルモルトは香りも気品も高かった。

ワインサーバーを置く店は新宿でも5軒あるかないかだという。

窒素ガスを注入することでワインが空気に触れないので酸化しない。お高いワインはボトル売りだとなかなか注文されないが、これがあれば味の劣化もなくグラスで出せる。

なお、右上のホワイトボードに書かれた「4C風カレー」(900円)が気になる。ウイスキーとの相性が気になるところだが注文してみた。

チャージは1000円(お通し代)。

赤ワインで丸一日煮込んだ牛すじカレーはマスターの自信作。これが驚くほどウイスキーに合うのだ。カレーをつつき、ウイスキーを舐める。新しい世界が見えた。

カウンターの中にはママの明起(あき)さんもいる。

「ちろちゃんですか? 最初は見た目が大人しそうだから大丈夫かなと思ったけど、意外とコミュニケーション能力が高くてびっくり。お客さんに『私も飲んでいい?』『シャンパン開けましょうよ』とかしっかり煽る(笑)」。

ちろさん、「ちゃんと人と状況を見てますから」と照れている。

明起さんによれば、この店はジャパニーズウイスキーに力を入れているそうだ。ちろさんが棚から1本のボトルを取り出す。現在は入手困難な山崎の「ジ エッセンス」シリーズだった。

ネットで調べたらちょっとびっくりするほどのお値段でした。
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さて、ちろさんのゴールデン街デビューは20歳の頃。新宿で友人と飲んでいて終電を逃した彼女は、かねてから興味があったこの飲み屋街に足を向ける。

「とはいえ前情報は何もないんですが、ふと目に留まったのがポップな外観の『裏面』。勇気を出して入店しました」。

マスターの応対はやさしく、他の店も紹介してくれた。さらに、ちろさんは「裏面」で働くことになる。

すべてはここから始まった(現在は会員制)。

時を同じくして打ち込んでいたのが音楽イベントのプロデュース。よく使っていた会場は2017年にビルの取り壊しによって閉店した新宿JAMだった。

「高校生のときに通っていて、のちにそこで自分のイベントを企画するようになって、最終的にはスタッフになりました。いろんな人に会えて、いろんな勉強もさせてもらえた大切な場所です」。

在りし日の新宿JAMの前で当時の店長・石塚明彦さんと。

最近の生活についても聞いてみた。

「中野新橋の『星屑と三日月』というバーによく遊びに行っています。バーテンダーのネギシマユちゃんがアイドル時代からかわいくてかっこよくて大好き人なんです」。

家のお気に入りブースは9割がネギちゃんグッズ。

ハマっているラーメン店は八王子にある「TAMAZOU-86」。普通の塩ラーメンやチャーハンもすべて美味しいが、とくに生ハムの脂が出汁に溶ける「冷やし塩ラーメン」最高だそう。

昼は塩ラーメン専門店、夜は生ハム酒場となる。

好きな本についても教えてくれた。

「『厭な小説』は内容がスッキリしないし、なかの紙も少し煤汚れていて一枚が地味に厚い厭な感じ。『はこにわ虫』は読んでいて不思議な世界に連れていってくれる漫画です」。

不可思議な感覚にさせてくれる本が好きとのこと。

ここで、トイレから出てきたマスターが「これ、ちろのじゃない?」。手には化粧品。実はちろさん、すっぴんで出勤したが、「取材なんだから多少はやりなよ」とママに言われてトイレでメイクをしていたのだ。

必要最小限のラインナップで勝負。

ところで、もしやその『東京 看板ネコめぐり』という本には……。

「はい、このお店も載っています」。

「お酒も猫も豊富に揃うゴールデン街の安らぎ店」とある。

さて、そんな「4C’s Bar ROSSO」は今年で6周年。10月8日(木)〜10日(土)の3日間は猫たちも含めてアニバーサリー態勢となる。比較的混まない早めの時間帯がオススメかもしれません。

猫好きのための贅沢なラガービールも飲める。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

猫と一緒に楽しく踊っているような字でした。

 

【取材協力】
4C’s Bar ROSSO
住所:東京都新宿区歌舞伎町1-1-10 ゴールデン街G1通り 2F
電話番号:03-5155-1424
https://twitter.com/4csbar_rosso

「看板娘という名の愉悦」Vol.121
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
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石原たきび=取材・文

# 4C's Bar ROSSO# ゴールデン街# 看板娘
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