それは禁断の着心地……愛さずにはいられない「楽な服」! Vol.5
2020.04.08
FOOD&DRINK

さらにグローバルなスナックカンパニーへ。『食としてのベビースター』の挑戦

子供が大好きであり、かつ、僕らが酒のつまみとしても楽しめる傑作おやつ「ベビースターラーメン」。

商品誕生から60年を経た今、食品としての新たな価値を創造しようとしている。

おやつカンパニー 取締役専務執行役員/マーケティング本部長 髙口裕之
「国籍は“食品”、現住所が“おやつ”の会社です」おやつカンパニーの取締役専務執行役員/マーケティング本部長 髙口裕之 氏 1969年、神奈川県生まれ。大学で経営学を学んだのち、中埜酢店(現ミツカンHD)に入社。各グループのブランドマネージャーを歴任し、多くの新商品開発に携わる。MBA取得後、規格外農産物流通会社の起業や食品マーケティングコンサルタントを経て、PEファンド投資先メーカーの代表取締役に就任。2017年より現職。趣味はクルマ。

Brand Profile 「おやつカンパニー」
1948年、三重県一志郡一志町(現・津市一志町)に設立した松田産業有限会社が前身。当初は学校給食用の麺を製造していた。’59年に「ベビーラーメン」を10円で発売開始(商品名と価格は当時)。以降「ラーメン丸」をはじめとしたさまざまな商品を開発。子供から大人にまで親しまれるおやつを販売する。現在も創業地に本社を置く。

“おやつの会社”は転換期を迎えている

「海外では“スナッキング(※1)”という言葉が使われ始め、おやつと食事の明確な垣根がなくなってきています。日本も例外ではなく、おやつに対する価値観は変わってきている。私たちはもちろんおやつの会社ですが、大きな意味での“食”というカテゴリーに参入するチャンスだと思っています」。

そう語る髙口裕之氏は、おやつカンパニーという企業でマーケティングを実践するために参画した人物である。前身となる松田産業有限会社の設立から70年、「ベビースターラーメン」の誕生から60年。おやつカンパニーはまさに今、転換期にあると言っていい。

「とはいえ私たちの“一丁目一番地”が『ベビースターラーメン』であることは変わりません。そのなかで、日本国内で取り組むべき点は大きく言って2つ。まずひとつはベビースターの名前を冠した数多くの商品を4つのブランドに分け、それぞれの歩いていく道を明確にしていくことです」。

ピーナッツ入りの「ラーメンおつまみ」は、ビールやハイボールと相性抜群。ちょうど良い内容量とピリ辛具合が絶妙だ。/おやつカンパニー
ピーナッツ入りの「ラーメンおつまみ」は、ビールやハイボールと相性抜群。ちょうど良い内容量とピリ辛具合が絶妙だ。オープン価格/おやつカンパニー ︎059-293-2398

4つのブランドとは「ベビースターラーメン」「ドデカイラーメン」「ラーメン丸」「ラーメンおつまみ」のこと。おやつカンパニーの収益を担う4ブランドであるが、その商品は形状もパッケージもターゲットもまったく違う。

名前の違う“4兄弟”それぞれのマーケティングを行うことで、より深いストーリーを描きたいという。

「ラーメンおつまみ」とともに、1999年に登場した「ラーメン丸」と「ドデカイラーメン」。
「ラーメンおつまみ」とともに、1999年に登場した「ラーメン丸」と「ドデカイラーメン」。「ラーメン丸」は濃厚なチキン味をギュッと凝縮。「ドデカイラーメン」はサクッとした食感が特徴。それぞれが個性ある味わいとなっている。ともにオープン価格/おやつカンパニー ︎059-293-2398

「もうひとつは4兄弟の長男、すなわち企業価値の源泉である『ベビースターラーメン』を、この先ずっと輝かせ続けていくことです」。

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料理に使う食材としてのベビースターとは?

魚介のすり身を練りこんだ新感覚のおつまみ「オヤツチンミ」。左が鯖のすり身を使った「鯖ピリ辛味噌味」、右がタラのすり身を使った「濃いチーズ味」である。/おやつカンパニー
魚介のすり身を練りこんだ新感覚のおつまみ「オヤツチンミ」。左が鯖のすり身を使った「鯖ピリ辛味噌味」、右がタラのすり身を使った「濃いチーズ味」である。カリッ、ポリッとした食感が楽しい。「ベビースターラーメン」の味付け製法を活かし、手に油や粉がつきにくく仕上げてある点が見事。ともにオープン価格/おやつカンパニー ︎059-293-2398

「ベビースターラーメン」を輝かせ続けるために、具体的に何をするか。そのヒントは冒頭の“食”のカテゴリーにあった。

「2018年度から、『料理の素材に使えるスナック』という新しいポジショニングにチャレンジしています。私たちは子供が小腹をすかせたときに食べるおやつを作ってきました。でもそれは角度を変えて見ると、『おやつを食べるシーンに限定したブランド』になっていた、ということなのです」。

そこで新たに「ベビースター」を使った多彩なレシピを提案、ホームページで紹介した。「ベビースターラーメン」をトッピングしたサラダや衣の代わりに使ったから揚げ。「ドデカイラーメン」を使ったチョコフォンデュなどもある。

「ベビースター」を使ったさまざまなレシピをホームページで紹介。左は「ドデカイラーメン」のチョコフォンデュ、右は「ベビースターラーメン」とネギを包んだ卵焼きだ。そのほかサラダ、まぜそば、から揚げ、オムレツなどなど。あえて普通の料理に仕上げている点が、おやつカンパニーが考える食へのアプローチなのだ。

「普段の食事に出せる料理を提案していますし、子供が遊びの延長で楽しみながら作るメニューもあります。主婦、年配の男性、一人暮らしの若い方などあらゆる人がターゲット。おそらく、30年前の大人に『ベビースターを料理に使ってください』と提案しても、『何言っているの?』という反応だったでしょう(笑)。でも今なら『それ、いいかも』になる。現代の大人には頭の柔らかさと、フレキシブルな姿勢があると思います」。

さらに家庭用レシピのみならず、業務用レシピの提案もスタート。つまり外食産業とのコラボレーション展開である。これまで「元気寿司」「ロッテリア」「幸楽苑」「がブリチキン。」などで、期間限定のメニューを展開している。

「1年強の期間、さまざまなフードサービスとコラボしてきました。『ベビースター』は認知率が高いので、企業にもお客様にも通りがいい。“ちょい足し”が基本だから作るときのオペレーションが楽という利点もある。そして、材料コストを抑えたいという要望にも応えることができます。トリュフのような高級食材ではないので(笑)」。

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グローバルなスナックカンパニーへ

パッケージの変遷。左2つの1959年、1973年のキャラクターには名前がなかった。右は1988年に登場した2代目キャラの「ベイちゃん」。現在のパッケージは3代目の「ホシオくん」だ。お調子者で憎めない男の子。4万7000件以上の一般公募のなかから選ばれた名前である。

マーケティングと経営の専門家として’17年に入社した髙口氏。当時のおやつカンパニーにマーケティング部門はなかったという。まずは「マーケティング」を社内に根付かせることから始まった。

「いいものを作っていればマーケティングはいらない、という空気感もあったように思います。ですから最初は『そもそもマーケティングとは何か』から伝えていきました。すると興味のある社員から反応し始めるんです。感度の高い社員にはより多くの情報を伝え、より多くコミュニケーションをとるようにしました」。

「マーケティングの必要性」を浸透させること2年。現在、マーケティング本部に所属する社員は16名となった。このチームを核に、“食”という新たなカテゴリーに挑んできたのは述べてきたとおりだ。

説明不要のロングセラー「ベビースターラーメン」/おやつカンパニー
説明不要のロングセラー「ベビースターラーメン」。即席麺製造時に出る麺のかけらを集め、従業員のおやつとして配っていたことがその始まり。定番のチキン味のほか、ソース味、うましお味、鶏ガラしょうゆ味がある。すべてオープン価格/おやつカンパニー ︎059-293-2398

「私はしばしば、おやつカンパニーという企業を『国籍は食品です。今の現住所がおやつなんです』と説明します。創業当初は即席麺を作っていた会社ですから、“食”との相性が悪いはずがない。ですから料理の市場への参入は、本来眠っていた価値を改めて掘り起こした結果の、誰もが『確かに』とうなずける展開だと思っています」。

日本でのマーケティング、ブランディングに並行して、海外での事業展開にも積極的に取り組んでいる。現在は台湾をはじめとした東アジアでの商品展開に注力。現地の味覚の好みに合わせた「ベビースター」を販売している。

「これまで“たっぷり、たのしい。”を企業理念に、子供のおやつを作ってきました。もちろんそのおいしさは追求します。そのうえで『さらにグローバルなスナックカンパニーへ』という意識を社員全員が共有しています。これからも『食としてのベビースター』の挑戦を続けていきたいですね」。

 

※1 スナッキング
3回の食事に加えて、適度な間食をとる食事法。空腹状態を減らし、反動としての過食を抑える効果があるという。多くの海外セレブが実践していることから、日本でも話題に。

 

鈴木泰之=写真 加瀬友重=編集・文

# おやつカンパニー# ブランド知り# ベビースターラーメン
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