37.5歳からの愉悦 Vol.125
2019.12.26
FOOD&DRINK

神泉の立ち飲みコンビニで、看板娘がK-1デビュー戦の直前だった

看板娘という名の愉悦 Vol.97
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。

酒屋からコンビニ、そして立ち飲みそば屋。時代を追うごとに業態を変えてきた不思議な店がある。最寄りは京王井の頭線の神泉駅。

神泉駅
ここから徒歩3、4分だが渋谷駅からも歩ける。

店名は「酒 みさわ」。オフィスビルが立ち並ぶ一角で営業している。

外観
そば、うどん、立ち飲み、コーヒー、たばこと守備範囲が広い。

営業時間は朝8時から夜10時。土日祝は定休日となる。訪れたのは木曜日の午後2時。店内では看板娘が働いていた。

内観
天ぷらを調理中。

この店は代々家族経営で、取材日にはちょうど先代に会うことができた。初代の頃は幅広く商売をしていたが、酒屋1本に絞ったのはこちらの先代だという。その後、コンビニチェーンの「スリーエフ」となり、再び独立して現在の業態に進化した。

先代
レタスと牛乳を手に来訪。

さて、棚にはお酒もずらりと並んでいるが、普通のコンビニとは品揃えが少々異なる。日本ビールが販売しているベルギー直送の「白濁(しろにごり)」「赤濁(あかにごり)」というレアな缶ビールもあった。

「白濁」(370円)をいただきましょう。

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看板娘、登場

看板娘
「お待たせしました〜」。

こちらは先代の孫にあたる壽美さん(23歳)。フードはそば、うどんがメインだが、壽美さんいわく「実は牛丼がおすすめ」とのこと。

メニュー
そばとうどんに「頭のせ」も可能。
牛丼
結果、こうなった。

初めて飲む「白濁」はフルーティーで絶品。デザインが逆さまになっているのは飲むときに「にごり」がちょうど攪拌されるようにという気遣いから。そして、牛肉とそばも予想以上に本格的で、そこらの牛丼屋とそば屋のレベルを超えていた。

おつまみも選び放題。

コンビニ時代の雰囲気を色濃く残す、というよりは需要に応じて進化を遂げている店なのだ。

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さて、壽美さんは巣鴨生まれ。小学校に上がるタイミングでこちらに引っ越してきた。

「子供の頃は虫が好きで、友達と公園に行ってトンボやセミを捕まえていました。今はまったく触れないから不思議ですよね」。

幼少期
なぜか自分で自分の顔にペイントしてご機嫌な様子。

中学、高校はバスケ部に所属。特に高校はガチの部活でテスト期間と正月以外は毎日練習があったそうだ。

「しかも、土日は朝から夜まで。私はずっとベンチでしたが、練習時間は同じなので授業中はよく寝ていました。糖質制限も厳しくて、甘いものを食べるとぶっ飛ばされます(笑)」。

プリクラ
バスケ部はショートカットというお約束(中央が壽美さん)。

ここで、衝撃の事実が発覚した。壽美さんは格闘家だったのだ。

「高3の夏にバスケ部を引退後、すべてから解放されてめちゃめちゃ食べたら10kg太ったんです。さすがにダイエットしないとと思ってジムに通い始めたのがきっかけ。そこでキックボクシングの面白さに目覚めました」。

アマチュアの試合で勝ち上がった壽美さんは20歳でプロデビュー。12月28日(土)のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)でK-1初参戦を控えている。

試合中の写真
今年8月に後楽園ホールで試合をしたときの写真。

「普段はふわふわしていますが、リング上では闘争心むき出し。アドレナリンが出過ぎてわけがわからない状態です。今は減量中ですが、試合が終わって大好きなスイーツを食べまくるのが楽しみ」。

イチ推しは全国に展開するHARBS(ハーブス)というケーキ屋のミルクレープ。格闘家の先輩と2人で大きなワンカットを4つ食べたこともあるそうだ。

ケーキ
試合後にもらえるしばしのご褒美。
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この店もさまざまなお菓子を置いているが、中でもおすすめを聞いてみた。

エアリアル
「これです。口の中にめっちゃ濃厚なチーズが広がります」。

現在、店を切り盛りしているのは3代目の一壽さん(51歳)。つまりは、壽美さんのお父さんだ。

お父さん
文字通りの看板“娘”、どんなお子さんですか?

「基本的には素直ですが、我が強い一面もありますね。でも、芯が通っているのでいいんじゃないかなと。格闘技も最初は反対しましたが、今では家族全員で応援しています」。

取材中もひっきりなしにお客さんがやってくる。ほとんどが常連のようで、一壽さんはその一人ひとりに何かしらの声をかけていた。

お客さん
「粉の紅茶がお好きでしたよね。でも、なかなか仕入れられなくてすみません」。

一方の壽美さんは大事な試合を控えているが、「こうして働いていたほうが気がまぎれます」とのこと。

仕事姿
天ぷらを揚げるほか、新メニューの開発も。
天ぷら
看板娘が揚げた天ぷら、もう少し高くてもいいのではと思ってしまう。
Wi-Fi案内
フリーWi-Fiも完備。
味噌汁コーナー
味噌汁コーナーにも愛が溢れている。
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壽美さんが言う。

「負けず嫌いなので、バスケ部時代は絶対にレギュラーになると思いながら練習していました。今はそれが格闘技に変わった感じ。当面の目標はベルトを獲ることです」。

とにもかくにも、K-1デビュー戦の勝利を祈っています。読者へのメッセージもどうぞ。

メッセージ
左手にグローブ(壽美さんはサウスポー)。

【取材協力】
酒 みさわ
住所:東京都渋谷区神泉町9-7
電話:03-3461-1427

 

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石原たきび=取材・文

# K-1# 看板娘# 神泉# 立ち飲みコンビニ# 酒 みさわ
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