OCEANS × Forbes JAPAN Vol.68
2021.07.20
FASHION

アディダスとオールバーズが革新的コラボで得た「大切な気付き」

当記事は「Forbes JAPAN」の提供記事です。元記事はこちら

アディダス ジャパン副社長 トーマス・サイラー氏(左)とオールバーズ日本法人代表 竹鼻圭一氏(右)

この数年、フットウェアのコラボレーションが世の中を賑わせている。ハイブランドがスポーツブランドとコラボしたり、人気のミュージシャンやアーティストとコラボしたり、そうして誕生した限定モデルが高値で取引されている。

そんななか、アディダスとオールバーズがコラボした。これは、よくあるそれとは大きく異なる。

フットウェアのカテゴリで市場を分け合う両社は、共有する「脱炭素」という共通の大きな目的に向けて、知見や技術を共有し合い、革新的なシューズを生み出した。

「FUTURECRAFT.FOOTPRINT」と呼ばれるそのシューズは、史上初めてカーボンフットプリント(CO2換算排出量)3kg以下を実現。それでいて、アスリートも認める機能性を維持し、高いデザイン性を誇る。

ライバルの提携はどのように生まれ、今後の業界や社会に何をもたらすのか。アディダス ジャパン副社長のトーマス・サイラー氏と、オールバーズ日本法人代表の竹鼻圭一氏に聞いた。

カーボンフットプリント削減への道

ビーガンレザーやリサイクルポリエステルの採用、海洋保護団体「PARLEY FOR THE OCEANS」との提携など、アディダスは特に近年、サステナブルに関する動きが顕著だ。しかしサイラー氏によると、同社は30年以上前から環境保護の取り組みを続けてきた。

「アディダスには『スポーツを通して、私たちには人々の人生を変える力がある』という大きな軸があり、サステナビリティはその中の重要な柱の一つです。

長年、積極的には発信してきませんでしたが、2015年に前CEOが“海洋ゴミでできたフットウェア”を発表したことから流れが変わりました。現時点では、2025年までに製品の90%をサステナブルな形で作ること、2030年までにカーボンフットプリントを30%削減することを目標に掲げています」。

他方、2015年に創業したオールバーズは、「より良いものを、より良い方法で」をミッションに掲げ、当初から環境に配慮したモノ作りにコミット。中でも、ウールやユーカリ、サトウキビなど自然由来の素材の開発を推し進めてきた。

「数量制限、リサイクル、アップサイクル、いずれも正しいと思いますが、素材選定から製品が破棄されるまでの全ての工程においていかにカーボンフットプリントを減らすかに重きを置いています」と竹鼻氏は言う。

「そして、サステナビリティに関しては、気候変動を“逆転させる”という目標を立てています。2030年までに商品のカーボンフットプリントをゼロ、ゆくゆくはゼロ以下を目指しています」

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同じ業界で、同じ目的があるのであれば、競うより手を組む方が生み出せるインパクトは大きいのではないか。両社のコラボは、2019年、オールバース共同CEO ティム・ブラウンがアディダス ノースアメリカのザイオン・アームストロングCEOに電話をかけたことから始まった。

その頃は新型コロナの影もなかったが、次第に感染が拡大。約1年間におよぶプロジェクトは、両社互いに顔を合わせることなく全てオンラインで行われた。ドイツ本拠のアディダスと米西海岸に本社を置くオールバーズ、時差の影響がない時間にミーティングをし、一方が寝ている間にもう一方で作業を進めていったという。

「そのパーツは、本当に必要か?」

肝心のカーボンフットプリントの算出には、オールバーズが用いている「ライフサイクルアセスメントツール」を採用。これは、CO2換算排出量を、素材/生産・梱包・輸送・使用・廃棄という5つのフェーズに分けて考えるもので、それぞれにおいて削減を追求した。

生産においては、アディダスで最もカーボンフットプリントの低い「アディゼロ RC3」(7.86kg)をベースに据え、両社の知見やテクノロジーを総動員。「当たり前に取り入れていた構造やパーツも、本当に必要か? 糸や繊維はそれでいいのか? と細かな点まで一から見直した」という。

梱包もユニークだ。シューズボックスといえば長方形が一般的だが、一つのコンテナにより多く詰めるような形にリデザイン。輸送は海運で、その燃料もバイオ燃料にすると徹底している。

これらの工夫により誕生した「FUTURECRAFT.FOOTPRINT」は、基準としたアディゼロ RC3と比較してCO2排出量を63%削減し、2.94kgを実現した。

“パフォーマンスシューズ”というチャレンジ

史上最もカーボンフットプリントが低いというと、そこばかりに目がいきがちだが、「このシューズのすごいところはパフォーマンスシューズであること」だと竹鼻氏は強調する。

「ただカーボンフットプリントが低いシューズであれば、作るのはあまり難しくなかったかもしれない。重要なのは、これがアディダスの他のシューズと同じ厳しいテストをパスした機能的なシューズであることです」。

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42.195kmを2時間23分53秒で走るマラソンプロランナー、岩出玲亜選手も「これまで履いてきたランニングシューズで一番軽くて、無駄がない。アッパーの素材が柔らかくて甲への負担がなく、地面をとらえる感覚が強い。アディダスの中ではアディゼロに近く、スピードが出しやすい」と、その性能を高く評価している。

また、岩出選手は、「先日チェコ遠征があり、その際の飛行機移動や街歩きでも履いていた」とコメント。スポーツに限らずタウンユースにも合うデザイン、また軽量さとコンパクトさからも旅行好きにも需要が高そうだ。

カーボンフットプリント2.94の数字は全て手書き。刺繍糸は、強度を補う役目も果たしている

見えなかったものが見えてきた

「FUTURECRAFT.FOOTPRINT」は12月に数量限定で発売される予定だが、それに先駆けてアディダス会員に向けて行なった抽選では、予想を超える反響を得たという。

「世界で100足という数に対して、1万件を超える応募がありました。これは、通常の限定品と比較しても高い反応で、多くの人の共感を感じ、嬉しい後押しとなりました」とサイラー氏。

それは、このフットウェアが「妥協のない一足」だからだろう。その点に関しては、「サステナブルだから購入されるとは思っていない。あくまでも商品ありき」という両氏の意見からもうかがえる。

今後、アディダスとオールバーズは、パートナーシップを拡張するためにタスクフォースを結成。若く優秀な人材を募り、互いに強みを学びあったり、消費者を含めたコミュニティを活性化させたりと、サステナブル活動を展開していくという。

竹鼻氏は、今回のプロジェクトを振り返り、デザイナーたちが「協業しなかったら、自分たちが何を知らないか知らなかった」「見えていなかったことが見えてきた」と言っていたのが印象的だった語る。

一社で勝ち抜こうとするのではなく、手を取り、手の内を見せ合い、ときに自社の“当たり前”も覆しながら、社会を変えていく。この協業が業界や社会にどのように波及していくのか、期待したい。

 

山田大輔=写真 鈴木奈央=編集

記事提供=Forbes JAPAN

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