同じ業界で、同じ目的があるのであれば、競うより手を組む方が生み出せるインパクトは大きいのではないか。両社のコラボは、2019年、オールバース共同CEO ティム・ブラウンがアディダス ノースアメリカのザイオン・アームストロングCEOに電話をかけたことから始まった。
その頃は新型コロナの影もなかったが、次第に感染が拡大。約1年間におよぶプロジェクトは、両社互いに顔を合わせることなく全てオンラインで行われた。ドイツ本拠のアディダスと米西海岸に本社を置くオールバーズ、時差の影響がない時間にミーティングをし、一方が寝ている間にもう一方で作業を進めていったという。
「そのパーツは、本当に必要か?」
肝心のカーボンフットプリントの算出には、オールバーズが用いている「ライフサイクルアセスメントツール」を採用。これは、CO2換算排出量を、素材/生産・梱包・輸送・使用・廃棄という5つのフェーズに分けて考えるもので、それぞれにおいて削減を追求した。
生産においては、アディダスで最もカーボンフットプリントの低い「アディゼロ RC3」(7.86kg)をベースに据え、両社の知見やテクノロジーを総動員。「当たり前に取り入れていた構造やパーツも、本当に必要か? 糸や繊維はそれでいいのか? と細かな点まで一から見直した」という。
梱包もユニークだ。シューズボックスといえば長方形が一般的だが、一つのコンテナにより多く詰めるような形にリデザイン。輸送は海運で、その燃料もバイオ燃料にすると徹底している。
これらの工夫により誕生した「FUTURECRAFT.FOOTPRINT」は、基準としたアディゼロ RC3と比較してCO2排出量を63%削減し、2.94kgを実現した。
“パフォーマンスシューズ”というチャレンジ
史上最もカーボンフットプリントが低いというと、そこばかりに目がいきがちだが、「このシューズのすごいところはパフォーマンスシューズであること」だと竹鼻氏は強調する。
「ただカーボンフットプリントが低いシューズであれば、作るのはあまり難しくなかったかもしれない。重要なのは、これがアディダスの他のシューズと同じ厳しいテストをパスした機能的なシューズであることです」。
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