「感動の服」特集 Vol.22
2021.09.11
FASHION

「責任ある生き方」宣言。サステイナブル視点から捉えたディーゼルの今の姿

オーシャンズ読者にとっては馴染み深いブランドであろうディーゼル。

現在ではデニムをはじめとしたカジュアルウェアからインテリアまであらゆるコレクションを手掛け、カフェやアートギャラリーなども運営するこのブランドを、改めてサステイナブルな視点から捉えてみようと思う。

 

創始者レンツォ・ロッソの「責任ある生き方」宣言

「責任ある生き方」という胸に刺さる宣言。サステイナブルな視点からディーゼルを捉える
ディーゼル創始者のレンツォ・ロッソ(右)と、サステイナブルのパートナー企業であるコンサルティング会社「エコエイジ」の共同創業者兼クリエイティブ・ディレクターを務めるリヴィア・ファース(左)。

ディーゼルのサステイナブルに関する戦略は、2020年の1月に発表された「責任ある生き方(FOR RESPONSIBLE LIVING)」というひとつの宣言から始まった。当時、創始者のレンツォ・ロッソはこうコメントしている。

「現在私たちは新しく、いまだかつてないほど大きく重要な課題に直面しています。ファッション業界が社会、経済、環境に与える影響について認識が高まるなか、課題に全力で立ち向かう用意がディーゼルにはできています」。

立ち向かうべき課題とは何か。それはディーゼルが考える「責任ある生き方」を実現するための、“4本の柱”に集約される。

製品の素材やパッケージを見直す「代替案の模索」。温室効果ガス排出の最小化など気候変動に対するアクションを表す「地球のために戦う」。社員の権利や多様性を尊重し就業環境の安全を促進する「個性を讃える」。そしてすべてのサプライチェーン(※1)で最高レベルの環境水準を目指す「模範の促進」の4つである。

この戦略にもとづく具体例は後述していきたいと思うが、いち個人としてはこの「責任ある生き方」という言葉にぐっとくる。胸を打つというよりは刺さる。

厳しい言葉だが、意識ある大人にサステイナブルを改めて意識させるには打ってつけの言葉。これがメッセージというものである。

オーガニックコットンとリサイクルナイロンを混紡したスウェットシャツ。3万800円/ディーゼル(ディーゼル ジャパン 0120-55-1978)

同年2月には早々に次の手を打つ。地球温暖化阻止、生物多様性の復元、海洋保護に焦点を当てたファッションブランドの同盟組織「ファッション協定(The Fashion Pact)」への参加だ。

ケリンググループ、エルメス、ナイキなど現在250を超えるブランドが参加する、’19年に発足した組織。「ファッション協定」への参加はよりグローバルに、よりパワフルな実行力で「責任ある生き方」を実現していくための選択であったに違いない。

また8月には「ベター・コットン・イニシアティブ(BCI)」に加盟する。コットンの持続可能性を実現するための非営利団体で、水の効率的な利用、土壌の管理、労働指針の研修などを行っており、23カ国200万以上の農家がBCIの認可を取得しているという。

[左]オーガニックコットンを使用した長袖Tシャツ。滑らかな肌触りと適度な光沢が特徴だ。8800円/ディーゼル(ディーゼル ジャパン 0120-55-1978) [右]BCIに加盟している栽培農家のコットン。BCIコットンは世界の綿花の22%を占めているという(2019年時点)。©Better Cotton Initiative

ディーゼルではこのBCIコットンをはじめとしてリサイクルコットン、オーガニックコットンを含め、’25年までに50%以上のコットンを「責任あるコットン」として調達することを目指している。

NEXT PAGE /

サステイナブル戦略を支える「グリーンレーベル」

「グリーンレーベル」の製品にはこのグリーンのタグが付く。安全性認証を取得した化学物質は全アイテムにおいて最小限の使用にとどめ、従来の生産方法と比較して水の使用量を最大40%削減している。

ではそのサステイナブルな戦略は、具体的にどうファッションに落とし込まれているのか。主軸となるのは「グリーンレーベル」という存在だ。

こちらは’20年秋冬シーズンに登場したコレクション。製造工程において水と化学薬品の使用を大幅に削減し、高い環境基準にもとづいて生産したデニム5型から、このコレクションはスタートした。

「現在ではデニムをはじめブルゾン、スウェット、Tシャツなど数多くのアイテムをラインナップ。オーガニックコットンや再生ポリエステル、またそれらのハイブリッドな再生繊維などを素材に使用しています」(プレス・桑野宏一郎さん)。

ストリートテイスト溢れるスウェットパーカも「グリーンレーベル」のもの。オーガニックコットンを使用し、タイダイ風に仕上げたボリューム感ある一枚。4万6200円/ディーゼル(ディーゼル ジャパン 0120-55-1978)

目印となるのはコレクション名のとおり、服に付けられたグリーンのタグ。全体の生産量から考えれば、グリーンレーベルの服の割合は決して高くない。

しかしながらシーズンを追うごとに着実にそのバリエーションと生産量を増やしている。何よりグリーンレーベルという枠組みが、よりチャレンジングな服作りの“背中押し”になっていることに注目すべきだろう。

そのひとつの成果が、今年6月に発売された抗菌・抗ウイルス加工とニオイの吸着分解加工を採用したデニムだ。

[左]「BCI(ベター・コットン・イニシアティブ)」の認可を受けたコットンを使用したデニム。さまざまなウォッシュ加工のモデルが用意されている。5万2800円 [右]抗菌・抗ウイルス加工、防臭加工が施された「ポリジン・バイラルオフ/ポリジン・オドークランチ デニム」。3万3000円/ともにディーゼル(ディーゼル ジャパン 0120-55-1978)

スウェーデンを拠点とする抗菌防臭加工のリーディングカンパニー、ポリジン社との協業により誕生したこのデニム。その特性は2つの技術によって実現される。

繊維上の微生物を減少させウイルスやバクテリアの汚染から守る「ポリジン・バイラルオフ」。そして独自の触媒作用により臭気分子を分解し効果的にニオイを消滅させる「ポリジン・オドークランチ」という技術である。

コロナ禍という状況下で大きな話題となった商品である。だがこのデニムが目指すもうひとつの目的は、抗菌・抗ウイルスの先にある。

デニムにニオイがつきにくくなるから、洗濯の回数を抑えられる。洗濯が少ないから生地へのダメージも少なくなる。つまり余分な水やエネルギーの使用を抑制することで環境負荷を軽減し、服を長持ちさせることにもつながるというわけだ。

NEXT PAGE /

力強く走り出し、ぐんぐんと加速している

イタリア最大のデニム生地メーカー、カンディアーニ社との協業により誕生した「サーキュラー(循環型)デニム」がこちら。ご覧のとおり金属ボタンは簡単に取り外すことができ、容易に分別が可能。6カ月で土に還るという天然ゴム糸に、オーガニックコットンを組み合わせて作られたデニム生地を使用する。耐久性、伸縮性、味わいとあらゆる面で、既存のデニムと遜色のない仕上がりとなっている。またレザーパッチは使用せず、レーザープリントによるロゴパッチを採用する。デニムジャケット7万4800円、デニムパンツ5万2800円/ともにディーゼル(ディーゼル ジャパン 0120-55-1978)

そしてこの9月に満を持して登場するのが“土に還るデニム”。ボタンが取り外し可能な「サーキュラー(循環型)デニム」である。

ネジのように回せばポロリと外れる。Gジャンやデニムのボタンは金属製が一般的。ごみに出すにしてもリサイクルするにしても、ボタンを外すのがひと苦労であった。この手間が省けることで、分別への意識が高まるという仕掛けなのだ。

ディーゼルの原点でありアイデンティティでもあるデニム。サステイナブルの視点からも、デニムというアイテムには多くの可能性が秘められていると感じる。

リサイクルポリエステルを使用したブルゾン。裏地はメッシュでさらりとした着心地だ。スタイリッシュなデザインと機能性を両立した一着なのである。3万5200円/ディーゼル(ディーゼル ジャパン 0120-55-1978)

さて、ここまでは過去を振り返った。ではネクストチャプターは? 直近では’22年春夏コレクションより登場する「ディーゼル ライブラリー」に注目したい。

ファッション業界内では知られているが、ディーゼルは定番商品を持たないブランドである。デニムですら継続して作られるモデルは存在しない。

この方針を大きく変更したのが「ディーゼル ライブラリー」なのだ。アイテムはすべてデニム生地を使用しており、その50%がパーマネントコレクション、つまり定番商品となる。

昨年クリエイティブ・ディレクターに就任したグレン・マーティンス。2022年春夏コレクションより登場するサステイナブルな新コレクション「ディーゼル ライブラリー」の全貌は、近々に発表される予定。

クリエイティブ・ディレクターのグレン・マーティンスいわく「デニムといえど単なるクラシックではありません。トレンドを超えるマスターピースを提案したい」とのこと。

その言葉のとおりジェンダーレスなデザインアプローチを採用し、素材、加工、パーツなどのあらゆる側面においてひときわサステイナブルに配慮。その製造の詳細は各アイテムのタグに付くQRコードから確認できるという。

今後のデニムアイテム製作の過程を大きく転換し、メンズとウィメンズの境界線を超えるコレクションとなるであろう「ディーゼル ライブラリー」に、大きな期待を寄せたい。

こうしてたどると、ディーゼルにおけるサステイナブルへの挑戦は、始まったばかりと表現するのが正確なところだろう。だが力強く走り出し、そのスピードはぐんぐんと加速している。

おそらく今このときのサステイナブルに絶対の正解はない。正解があるとすれば、言葉にして、実行して、間違いは修正すること。つまりディーゼルのように、動き始めて動き続けることなのだと思う。

 

DIESEL ディーゼル
創業年:1978年
創始者:レンツォ・ロッソ
本社所在地:イタリア・ブレガンツェ
事業展開:世界80カ国以上

Sustainable Keywords
・代替的かつ責任ある製品やパッケージの製造
・気候変動に対する改善的なアクションを推進
・全社員の個性を讃え安全な就業環境を実現
・サプライチェーンにおける社会・環境水準の向上

(※1)サプライチェーン
製品の原料や素材の調達、製造、在庫管理、流通、販売、消費までの一連の流れのこと。このサプライチェーンのマネジメントが、製造業におけるサステイナブルの鍵といわれている。

 

鈴木泰之=写真 加瀬友重=編集・文

# ディーゼル# サスティナブル# デニム
更に読み込む
一覧を見る