2021.03.05
FASHION

ニューバランスの今年の顔「57/40」とは何者か。新作発売前に徹底解剖

名作揃いのニューバランスにあって、1、2を争うセールスを記録したといわれる「574」が新たなアイデアで生まれ変わった。それが、「57/40」である。

1月9日にリリースされると、たちまちのうちに在庫が払底した「57/40」。その新色が店頭に並ぶ3月13日(土)を前に、改めてこのモデルのおさらいをしよう。

「57/40」1万5000円/ニューバランス(ニューバランス ジャパン 0120-85-0997)

「57/40」は“80’s meets 90’s”をテーマに掲げ、「574」をベースに「650」のエッセンスを注入したモデルである。

「574」はご存じのとおり、80年代に誕生したトレイルランニングシューズ「576」をルーツにもつモデルだ。アジア生産により控えめなリセールプライスを可能とした「574」は爆発的なセールスを記録。同社によればニューバランス史上、もっとも売れたモデルといっても過言ではないという。

「57/40」のベースとなった「574」。

一方の「650」は’90年代に登場したクロストレーニングシューズ。ソールに見られるウェービーなパターンワークがその特徴である。

「57/40」はスエード、ヌバック、メッシュで構成されるアッパーに象徴的な「574」のDNAを受け継ぎつつ、ミッドソールに「650」のソールを噛ませることによりかつてないスタイルを創造した(波打つようなデザインはレースステイやマッドガードにも確認できる)。

同じく、「57/40」のベースとなった「650」。その特徴的なソールを受け継いでいる。

「ニューバランスはこの1年、例年にないペースでさまざまな提案をしてきました。数ある仕掛けのなかでも『992』や『MR2002』という定番の復刻は反響が大きかったですね。我々は確かな手応えを感じ、さらなる定番への注力に舵を切りました。それが『574』だったのです」(PRシニアスペシャリスト・小澤真琴さん)。

2021年は、「574」をベースとしたさまざまなモデルのリリースも控えているという。言葉は悪いが、「57/40」は話だけ聞けばなかなかエキセントリックなモデルである。「574」イヤーになりそうな2021年の一発目として、「57/40」をもってきたのはなぜか。

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「327」のヒットが背中を押した

こちらは昨年登場し、すでに完売した「327」。

「カスタマーの関心を十分に引き寄せたタイミングで、次なる一歩として踏み出したのが“過去を現代にシフトする”というアイデアでした。背中を押したのは『327』の成功です」(小澤さん)。

「327」はファッションブランドのカサブランカとのコラボレーション・モデルとしてデビューした。カサブランカはシャラフ・タジェルが2019年に立ち上げたパリの新進気鋭。ニューカマーながら、いまやパリコレでもっとも注目を集めるデザイナーのひとりだ。

デザインのベースとなったのは「320」(ニューバランスがランニングシューズとして認知された一足)、「355」(トレイルランニングシューズの元祖)、「スーパーコンプ」(レーシングシューズの元祖)の3つ。いずれも70年代を代表するモデルである。

「往年の70年代のプロダクトを現代の感性でブラッシュアップする。『327』の考え方がまさに“シフト”でした」(小澤さん)。

1976年に発売された「320」。

アーカイブを掛け合わせた「327」は斬新のひと言だった。ドーバー ストリート マーケット ギンザなどに並んだそのモデルは瞬く間に完売した。

 

チャンキーな一足が誕生!

ボリュームあるフォルムの「57/40」。1万5000円/ニューバランス(ニューバランス ジャパン 0120-85-0997)

「57/40」の見どころは「327」顔負けのボリューミーな体躯にあるが、ラスト(木型)にはすらりとしたシルエットを特徴とするSL-1ラストを採用している。

「574」といえば安定性重視の、どっしりとしたSL-2ラストがそのアイコンである。このマイナーチェンジはまさにニューラバランスらしい“バランス”を慎重に探った結果だ。「650」のソールをミックスしたのが“足すデザインワーク”だったとすれば、SL-1ラストの採用は“引くデザインワーク”である。

「327」にあやかったのはプロポーションだけではない。ビッグNロゴと呼ばれる大きなロゴもそうだ。その体躯と比べても見劣りしないロゴは、いまの気分を的確にあらわしている。

キャッチーな「ビッグNロゴ」。

エキセントリックなコンセプトながら、仕上がってみればものの見事に調和していた。はたからみればデザイナーの頭を悩ませそうなお題だが、案外あっさり描けたのかも知れない。時代もコンセプトも異なるモデルとはいえ、いずれもニューバランスらしさに溢れているからだ。デザイナーの苦労話が漏れ伝わってこなかったのも、その推測を裏付ける。

新色はネイビー、グレー、バーガンディというニューバランスを代表する3色のトリコロール。ファンの琴線に触れるカラーパレットは、下駄を履かせずとも十二分に美しい。

そして生産拠点にアジアを選んで1万円台というじつに良心的な価格設定を実現した。「574」をベースにしていることを考えれば、賢明な判断である。

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僕らが愛する山で走れるスニーカーを

1977年に登場した「355」。

トレイルランニングシューズを並べた500番台シリーズの歴史は「327」のネタ元にもなった「355」に始まる。エポックメーキングなその一足は、社員の経験から生まれたという。

自らのボディのメインテナンスにゆめゆめ抜かりのないその社員は、休暇にやってきた山荘でも少し走ろうと愛用のニューバランスに足を滑り込ませた。走り出しこそ軽やかだったが、たちまちのうちに茂みやぬかるみに足をとられた。思うように走れなかった鬱憤が、500番台シリーズを生む原動力になった──。

当時の記録を想像で補ってみたが、当たらずといえども遠からずだろう。

 

[問い合わせ]
ニューバランス ジャパン
0120-85-0997

竹川 圭=取材・文

# ニューバランス# スニーカー
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