今さら聞けないダウンの基礎知識。ザ・ノース・フェイスで聞いてきた!
これまで注目ブランドの新作ダウンを掘り下げて紹介してきた本企画。
今回は、一度基本に立ち返り、ダウンの素材についておさらいしよう。そもそもダウンって? フィルパワーって? ダウンと中綿の違いは? など、今さら聞けないダウンの基礎知識を、ザ・ノース・フェイスでテクニカルウェア部門の企画を担当している山下さんに聞いた。
これさえ読めば完全攻略。今後、ダウンジャケット選びに迷うことはないはずだ。

ダウンの原料は水鳥って知ってた?
そもそもダウンは自然から生まれた素材だが、昔に比べて進化しているのだろうか。
「ダウン自体は、原料である水鳥の羽を使っているのは、昔から変わらないので進化していません。ただ、ダウンを原料からどうやって製品にするのか、その加工手法は進化していますよ」。
ちなみに今回聞いたのは、あくまでザ・ノース・フェイスがベースの話。ブランドによって違いがあるのでご留意を。
「水鳥にはダック(アヒル)やグース(ガチョウ)のほかに、カモメやアヒルなど、いろんな種類があるんですけど、一般的に使われているのは、ダックとグースになります。
なぜ水鳥かというと、水に常に浸かっているので、体を保温するために陸で生活する鳥と比べて、ふかふかのダウンをまとっています。ただ、名前の通り、主に水上で生活する鳥なので、羽毛の油分がすごく多いんです。これは水に浮くためだったり羽を濡らさないためだったりします」。
撥水性のある水鳥の羽毛、これがダウンの原料である。もちろん、部位によって取れるダウンの種類は異なる。よく耳にするダウンとフェザーも同意として使われがちだが、厳密には違うのだ。


「ダウンは水鳥の主に胸毛の部分で、一羽の水鳥からわずかしか取れません。一方フェザーは、真ん中に軸(羽芯)がある羽根になります。よく『ダウン90%、その他羽毛10%』などと書かれた品質表示がありますが、『その他』がフェザーや未熟なダウンになります」。
フェザーは赤い羽募金のマークみたいなものをイメージするといい。ちなみにザ・ノース・フェイスはどこのダウンを使っているのか。
「ザ・ノース・フェイスでは、三重県にある河田フェザーさんのものを使っています。もう20年近いお付き合いになりますね。何が優れているかというと、原料自体は世界各国から、その年でいいものを仕入れるわけですが、その原料を洗浄して選別して質の高いダウンに仕上げる、この技術がとにかく優れているんです。それを可能にしているのが、工場の立地です」。
というと?
「河田フェザーの工場は、大台ケ原という日本でも有数の降雨量を誇る山々に囲まれた盆地にあります。これが盆地特有の乾燥と、山から流れる豊富な地下水の両方を兼ね備えた場所なんですね。湿気に弱いダウンを、乾燥している盆地でしっかり開き、地下層によりろ過された超軟水で汚れを落とす。ここまでダウンをクリーニングするのに最適な環境はほかにないと思います」。
ブランドによっては、オフィシャルサイトやアイテムに付いている品質表示で、原料の原産国やダウンの仕入れ先などを公表しているところもあるから、ひとつの判断基準にするのもいいだろう。河田フェザーでいうと、先に紹介しているナンガのダウンも同じである。
ヴァージンダウンとリサイクルダウンの違い

単にダウンと言っても、最近は初めて使われるヴァージンダウン(新毛)と、一度製品になったものを回収して洗浄したものをもう一度使うリサイクルダウンの2種類がある。その具体的な違いとは?
「新毛はクオリティを選べるのが大きなメリット。フェザーを除いた純粋なダウンだけを、フィルパワー別に選ぶことができたり、白いものだけを集めて取るとか、白黒混ざったものを取るなど、色で選別するのも新毛だからできることですね」。
僕らが手にしている大半のダウンはヴァージンダウンだそうだ。
「一方リサイクルダウンは、いろんな場所や製品から回収しているので、すべて混ざってしまいます。なるべく色を分けることはできるんですが、フィルパワーまでを選別する機能はありません。
ただ、ダウンは非常に硬い物質なので、一度使われることでダウン同士が摩擦で研磨され、無駄な汚れが落とされるので、リサイクルダウンの方が綺麗で、強いダウンだけが残ります。なので、“リサイクルダウンはクオリティが低い”っていう印象を持たれがちですけど、実際はそうじゃないんです」。
リサイクルダウンは、元となる原料がどれだけ集まるかによって供給できる量が決まる。皆一様にリサイクルとして戻しているわけではないので、そもそもの量が少ないのが現状なのだとか。それを多くの企業が取り合うから、必然的に値段も上がる。
環境の側面から見るとリサイクルダウンが正解かもしれないけれど、需要と供給が合っていないのが悩みのタネでもあるというお話だ。次回は、ここで出てきた「フィルパワー」の意味やダウンの洗濯事情についてもお聞きする。
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ゴールドウイン
0120-307-560
冬アウターの王様、ダウン。その温かさ、存在感、使い勝手の良さはアウター界で他の追随を許さず、だからこそ各ブランドは毎冬、渾身作を世に送り出す。さぁ、2020年のキング・オブ・キングスを決めようか。
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佐藤 裕=写真 中田 潤=取材・文