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2020.04.16

ファッション

これが本当の定番。尾花大輔が語る「頭をゼロにして着られる服」とは?

N.ハリウッドのデザイナー、尾花大輔さんは20年間服をつくり続ける中で、“真のコンフォータブルな服とは?”という自問自答を繰り返してきた。
その結果、たどりついたのが「頭をゼロにして着られる服」という考え。
はたしてその真意とは? 彼が手掛ける二つのブランドからその答えを紐解いた。
 

意識するのは時代性に左右されない無味無臭な服

尾花大輔 1974年生まれ。10代で古着に傾倒し、バイヤーなどを経て2000年12月にショップ、ミスターハリウッドをオープン、’01年にN.ハリウッドを冠した服づくりを開始。
尾花大輔 1974年生まれ。10代で古着に傾倒し、バイヤーなどを経て2000年12月にショップ、ミスターハリウッドをオープン、’01年にN.ハリウッドを冠した服づくりを開始。’16年より、本稿でも触れるユナイテッドアローズ&サンズ バイ ダイスケ オバナでも辣腕を振るっている。
——「楽な服」という大きなテーマについて、尾花さんはそもそも服づくりをするときに楽かどうかを意識されることはあるんですか?
「もちろんありますよ。特にここ4〜5年は、こうやってインタビューに答える中でもコンフォータブルという言葉をよく使うようになったと思います」。
——それは着心地についてですか?
「もう少し広い意味ですね。古着のリメイクから服づくりを始めてミスターハリウッドというショップをオープンしてから、今年の12月で丸20年を迎えます。当初は自分の歌舞いた部分をアピールしたり、主観的に服をつくったりしていました。でも、それを続けていくうちに、気付けば自分だけのブランドではなくなってきたという意識があります。
というのも10年を1期だとすると、3期目に入るわけです。昔は若かったバイヤーさんたちも今ではすっかりいいオジサンになっていたり、初期からのお客さんの息子さんがウチの服を買ってくれてたりする。自分自身が着たいものをつくる、というのは今も変わってないけれど、そういう“皆さんのブランド”という世間への責任感が出てきた気がします」。
——その責任感は、具体的にはどんな部分に現れてきたんですか?
「常に意識していることは、生活の中で本当に必要な服と、ホビーとしての服との棲み分けですね。前者は文字どおりですが、ホビーな服とは高感度なファッション好きだけに刺さるような趣味性の高い服を指します。そういったホビー服だらけのお店は今もたくさんあるけれど、例えば都市部ではないエリアで、そういう派手なデザインだったり柄だったりを着るのって、すごく浮いてしまうじゃないですか。
きっとホビーの人たちはそれでいいと思うけれど、多くの大人はそこでそういうものを着ないですよね。先ほど話をしたとおり、多くの人が愛用してくれるブランドになったからこそ、生活に溶け込む身近なデザインの服がより大事に思えてきたんです」。
——確かに、一概にファッショナブルな服が正義とは言えないですよね。
「そうですね。何年か前にノームコア(極めてシンプルなファッション)なんていう言葉が流行ったけど、そこには服装で他者から判断されたくない、という力強い意志があったと思うんです。今やキーワードとしてのノームコアは色褪せて消えていったけど、意志の部分ではどんどん進行していって、定着しましたよね。
そういうマインドをもっている人の一部にとっては、着るものを選んだり、色使いを考える時間とかが無駄だったりストレスの原因だったりして、当時はそんな価値観が少なからず衝撃的でしたけど、今はどんどんそういう時代になってきています。ユナイテッドアローズさんと一緒に取り組むようになって4年が経ちましたけど、そこではこんな時代にコンフォータブルでいられる、みんなのための服がつくりたかったんです」。
——それがユナイテッドアローズ&サンズ バイ ダイスケ オバナ(以下サンズ バイ D.O)というワケですね。
「はい。もちろん、ユナイテッドアローズはいろいろな角度の“ホビー”が集まったセレクトショップで、そこに加えるとしたらどんな服だろう?とまず考えました。それで、普段出勤するときや休みの日に、“頭をゼロにして着られる服”ってあまりないな……と思ったんです。スーツや制服って、すごく楽じゃないですか。余計なお金もかからないし、考える時間もほとんど要らない。だから、多くの人の“日常のユニフォーム”をつくろうと決めたんです」。
潔いワイドさにモード感すら漂うイージーパンツでのセットアップ。/ユナイテッドアローズ&サンズ バイ ダイスケ オバナ
潔いワイドさにモード感すら漂うイージーパンツでのセットアップ。要素はごくシンプルでも、素材の豊かな表情によって洗練された佇まいに。尾花さん曰く、「窮屈にならず、大きすぎないゆとり」を体現している。ジャケット2万6000円、Tシャツ1万6000円、パンツ1万9000円/すべてユナイテッドアローズ&サンズ バイ ダイスケ オバナ(ユナイテッドアローズ&サンズ 03-5413-5102)、スニーカー9900円/ニューバランス(ニューバランス ジャパン 0120-85-0997)


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