——サンズ バイ D.Oのデザインイメージが固まったのはどのタイミングですか?「最初にアローズさんが提案してくれた、小松マテーレ(旧 小松精練)の生地を見たときですね。いくつかの生地があった中で、『このポリエステル生地のボコボコとした質感、すごく良くない?』となって」。
——その生地はそんなに特別な魅力があったんですか?「質感だけではなく扱いやすさにも惹かれました。天然繊維と比べてシワが気になりにくく、乾きやすい。型崩れしにくくて、傷も付きにくい。夏は涼しく感じ、冬は暖かみがある。そして動きやすい。快適という点ではスウェットも好きなんですが、どうしても毛玉ができたり伸びやすかったりしますよね。けど、この小松マテーレの生地にはそれがほとんどないんですよ」。
——なるほど。サンズ バイ D.Oの洋服はすべてこの生地でできているんですか?「そうです。もう4年もやっているから、企画や生産、MDチームに店頭も、そろそろ新鮮みが欲しいと思っているだろうなと思って、これを超えるような生地がつくれないかとずっと試行錯誤をしているんですが、結局この品質をどうしても超えられないんです。
服自体の形のマイナーチェンジはありますけど、良かったものは極力変えずにシーズンを超えて展開し続けています。服好きの間で“定番”っていう言葉は昔からあったものだし、雑誌でも良く使われているけど、なんでもかんでも定番とひと括りにする間違った解釈の人が多いなと思っています。そんな意味でも、これこそ本当の定番と呼べるんじゃないかな」。
——定番になり得るものをデザインしていくうえで、意識したことがあれば教えてください。「快適さについていえば、生地だけに求めても限界があり、当然フォルムが重要になってきます。だけど、動きやすさばかりを追求して大きくなりすぎちゃうとだらしなくなってしまうので、そうならないよう、意識しながら適度にゆとりを持たせるようにしています」。
——昨今のビッグシルエット全盛の流れをそのまま追っている、というわけではないんですね。「そうですね。ルーズフィットっていろんな時代に登場してきたスタイルですし、流行り云々というよりは審美眼をしっかり持って、『自分はこれだな』と思った結果、お客さんが手に取ってくれればいいと思っています」。
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