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2019.12.03

ファッション

北極探検隊に着想を得た本格ダウンは、なぜ、街でも信頼を勝ち得たか?

東京も、いよいよ本格的にダウンが必要な気温になってきた。選ぶなら、やはり定番のアウトドアブランドか、いやいや、デザイナーズだって悪くない。
そこにきて、新たな選択肢として急浮上しているダウンジャケットの専業ブランドが「アークティックエクスプローラー」だ。寒さの本場が生んだ、知恵とモノづくり。大人がそれを選ぶべき理由が、つくり手たちの言葉から見えてきた。
ダウンブランド、アークティックエクスプローラーのデザイナー
マイナス50度でも絶えられるダウンも作るロシアブランド「アークティックエクスプローラー」。流氷の中を進む船のグラフィックの入ったワッペンがアイコン。右がクリエイティブディレクションを担当するクセニヤ・チリンガロフさん。左はCEOのアナトリー・ツォイルさん。

ルーツにあるのは、探検家だった父の偉業

−−こんにちは!
クセニヤ こんにちは。クセニヤ・チリンガロフです。私がクリエイティブディレクションをしていて、横にいるアナトリーはブランドのビッグボス。だから、私はスモールボス(笑)。
アナトリー アナトリー・ツォイルです。よろしく。
−−昨年来日されたときは、ふたりに取材させていただきましたね。
クセニア そうでした! アナトリーがスナップしてもらったわね。
−−今回はいつ日本に来たんですか?
アナトリー ついさっき。1時間しか寝てないから、ちょっと眠いんだ(笑)。
−−お疲れのところ今回もありがとうございます。ところで、アークティックエクスプローラーが生まれた経緯には、クセニヤの家族が関係しているって聞いたんですが。
クセニヤ はい、それは私の父ですね。探検家なんです。
アナトリー 彼女のお父さんは、ソ連時代とロシア時代でそれぞれひとつずつ勲章をもらってるんだ。
クセニヤ そう。父が乗っていた船が北極で氷山に乗り上げてしまったときに、そこから船を救うのに貢献したことがひとつ。もうひとつは、小さな潜水艦で海底の北極点を世界で初めて探査して、そこに旗を立てたことが理由で、大統領から「ロシア連邦英雄」っていう名誉勲章をもらったんです。そんな父のレガシーを伝えたくて、彼とアークティックエクスプローラー、つまり探検家を象徴するダウンジャケットを作ろうと思い立ったんです。
クセニヤ・チリンガロフさん

モスクワ出身。世界的な探検家、アルトゥール・チリンガロフを父に持ち、10年来フリーランスのジャーナリストとして「ヴォーグ ロシア」や「エル ロシア」などに携わったのち、2013年にアークティックエクスプローラーを設立。
−−では、このブランド名はお父さんのことを表している?
クセニヤ そうですね。ただ、純粋に「探求する」という意味も込めていて、それはいろんな人に当てはまるし、もっといろんな意味を持ってると思っています。ダウンジャケット専門のブランドは世界中にいくつもあるけど、ロシアではアークティックエクスプローラーだけなんです。うちのダウンはすべて裏地が2枚重ねになっているんですが、実はそれはロシアでは当たり前のこと。やっぱりほかの国とは寒さの次元が違うので、もしも裏地が破れて中の羽毛が出てきたりすると防寒性が下がって命にも関わりますから。そういうモノづくりも、極寒の地の知恵から来ているんです。
クセニアさんのオススメモデル「CHILL(チル)」

コットン混ポリエステルのシェルとロシアンラクーンのファーをあしらったフードが特徴的なブランドの象徴的モデル。「英語の“CHILL”には「リラックスする」っていうのと「寒い」というふたつの意味があるの。そこに、私の父の姓のチリンガロフを掛けていて、個人的にもいちばんのお気に入り。機能面とファッション性のバランスがすごく良いと思っています」(クセニヤ)。11万円/アークティックエクスプローラー(ブルーウッド 03-5709-1098)


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