2019.08.12
FASHION

白Tシャツはどこまで違いが出る? 業界屈指の生地ヲタに聞く素材の重要性

されど、Tシャツ。●これまで何枚着てきたか、Tシャツ。服としては何よりシンプルなつくり、Tシャツ。理想の一枚に出会ったと思ってもすぐに次が欲しくなる、Tシャツ。されどで探す、今年いちばんの、Tシャツ。

肌へ直接触れるものだから、Tシャツは気持ちいい素材に限る。うん、異論なし。でも、パリッとした感触やコシの強さに魅力を感じるという意見もある。それももちろん間違いじゃない。

じゃ、正解はなんだ? 答えを教えてもらいに行ったのは、1シーズンで6〜7種の生地のTシャツを発表するブランド、エイトン。業界屈指の生地ヲタクと言われるディレクターの久﨑康晴さんを突撃した。

久崎康晴さん●さまざまなアパレルブランドのディレクションを手掛けたのち、2016年にエイトンを設立。
久﨑康晴さん●某アパレル会社でテキスタイルの開発に携わること約20年。その間、世界中の生地屋や加工工場を回って見聞を広める。以降、さまざまなアパレルブランドのディレクションを手掛けたのち、2016年に自身のブランド、エイトンを設立。


すべてを変える、手摘みの“人”手間

—Tシャツの基本といったら、やっぱり白Tですよね。

久﨑 はい。ただ、白Tといってもいろいろありますよね、素材、形、縫製……。

—実際のところ、それらでどのくらい差が出るものなんでしょう?

久﨑 こちらをご覧ください。

Tシャツはエイトンの原点ともいうべきアイテム。こちらはすべてコットン100%で作られているが、見た目の雰囲気や触感がそれぞれ異なる。
Tシャツはエイトンの原点というべきアイテム。こちらはすべてコットン100%で作られているが、見た目の雰囲気や触感がそれぞれ異なる。

—こちらは?

久﨑 うち(エイトン)が出している定番の白Tです。

—3枚とも雰囲気が違いますね。ハリがあるものからトロッとしたものまで。

久﨑 これら3枚はどれも綿100%。でも、糸の撚り方、編み方、仕上げを変えることでこれだけ違いが出るんです。

インド南部のタミル・ナードゥー地区の山岳部で育てられた最高級コットンのスヴィンコットン。
インド南部のタミル・ナードゥー地区の山岳部で育てられる最高級コットンの「スヴィンコットン」。こちらはその綿花。50メートル四方の小さな畑をひとつの家族が手掛けており、すべて手摘みされている。

—コットンの産地も同じですか?

久﨑 はい。どれもインド産のコットンを使っています。この間も現地へ行ってきましたよ。インドには最新の機械が入っていますからね、生地ヲタクにはタマリマセン(笑)。

—インドに最新が揃うとは、ちょっと意外。

久﨑 日本の技術者たちが、インドの気候、インド原綿の特性を含めて考え抜いた最新の機械が揃っているんです。ここで作る綿糸はおそらく、世界でいちばん優れていると思います。

こちらのスヴィンコットンは、50メートル四方の小さな畑をひとつの家族が手掛けたもの。
上の「スヴィンコットン」をコーミングしたもの。久﨑さんは、これらをすべてファイリングしている。

—確かに、綿糸の状態でもう、ツヤツヤすべすべ。

久﨑 すべて手摘みしているからでしょうね。機械だと大量に安く刈り取れますが、金属ブラシをローリングさせるのでコットンが痛んでしまうんです。そのダメージはコーティングで隠すのが一般的なんですけど、着ていくうちにやはり、それが表に出てくる。例えば黒Tだと、何度も洗ううちに部分的に白っぽくなりませんか? あれはコーティングが剥がれているからなんです。

スヴィンコットンを使い日本国内で製糸。傷ひとつないきれいな繊維へと仕上げる。
「スヴィンコットン」を日本国内で製糸。傷ひとつないきれいな繊維へと仕上げる。無傷のため薬剤などの化学的な加工を加えなくてもご覧のように美しい光沢を放つ。

—つまり、人手間(ひとてま)が大切だということですね。

久﨑 そう! 何にもコーティングしてなくても、これだけのツヤが出るんです。それをうちのTシャツは、日本の職人さんに編んでもらっています。

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“織る”ではなく“編む”?

「基本的に、私たちはTシャツブランドとしての自負の元でほかのアイテムも作っています。コートを作る際にもTシャツとどう合わせるかが基本になるんです」
「基本的に、エイトンはTシャツブランドとしての自負のもと、ほかのアイテムも作っています。コートを作る際にも、Tシャツとどう合わせるかが基本になるんです」と久﨑さん。

—え? Tシャツなのに“編む”? “織る”ではなくて。

久﨑 編むほうが露骨に生地に良し悪しが出ます。織るのであれば、その方法でいくらでもお化粧ができてしまう。

—3枚のうち、いちばん右のTシャツも編んだ生地なんですか?

久﨑 はい。エイトンでいうキレイめなTシャツで、「超ヨーロッパ型」という位置付けです。

通称「超ヨーロッパ型」のスヴィン60/2 オーバーサイズTシャツ

スヴィン60/2 オーバーサイズTシャツ1万2000円/エイトン
和歌山にて双糸を編み立てたカットソーシリーズ。体をゆったり包み込むオーバーシルエットがデザインの特徴。1万2000円/エイトン(エイトン 青山 03-6427-6335)

—かなり上品ですね。

久﨑 目指したのは、一枚で大人が胸を張れる白Tです。

久崎さんをして「超ヨーロッパ型」と表現するこちらは、薄手ながらハリや光沢も備える。
久﨑さんをして「超ヨーロッパ型」と表現するこちらは、薄手ながらハリや光沢も備える。

—いったい何が違うんでしょう?

久﨑 5年ほど前に原綿探しから始め、綿のブレンド、糸の太さ、撚り、編み、仕上げの方法など、とにかく作っては修正の繰り返し。納得いく生地に仕上がるまでに2年を費やしました。

—それでそれで? 編み方は?

久﨑 企業秘密です。

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—ならば左のこちらは? なんだかちょっと懐かしい雰囲気もありますが。

久﨑 これは「アメリカ型」の生地ですね。空紡糸と呼ばれる糸で編んだものです。

通称「アメリカ型」のフレスカプレート オーバーサイズTシャツ

フレスカプレート オーバーサイズTシャツ/エイトン
MADE IN USAものにあるような、コシとハリを表現。とはいえ毛羽立ちを抑えたり、生地に光沢を加えることで品を保っている。1万6000円/エイトン(エイトン 青山 03-6427-6335)

—なるほど。どうりで馴染みがあると思ったら。

久﨑 若い頃は当然、僕もヘインズやフルーツ・オブ・ザ・ルームといったアメリカ製のTシャツを着てました。その良さは今も重々承知しています。ただ、50代になった今それを着るとなると、個人的にはカジュアル過ぎるんですよ。

袖を通した時に感じるコシやドライなタッチは往年のアメリカTを思わせる。
袖を通したときに感じるコシが往年のアメリカTを思わせる。見た目でもわかるドライな質感がサラッとしていて気持ちいい。

—それで?

久﨑 それらを解消するために考案した生地が「フレスカプレート」です。独特なコシを持っていて、ラフな風合いが特徴。それを活かして、大人がスマートに着られるようにデザインしたのが「フレスカプレート オーバーサイズTシャツ」なんです。

—デザイン面ではどんなこだわりが?

久﨑 リブの佇まい、袖を下ろしたときに脇下に生まれるふくらみ具合など、スマートに見えるように工夫しました。これも当然、何度も何度も試行錯誤を繰り返した結果です。

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「コットンの可能性は無限大」と示した一枚


—最後に、真ん中の一枚は?

久﨑 これが今のところの理想形です。

ーそれは楽しみです。で、どんな?

久﨑 通常でしたら、(絵を描きながほら)中も外も同じようにねじって糸にしますが、こちらは空紡(オープンエンド)。外側の糸は撚りがかかっているのだけど、真ん中はそのまま撚りがかからない。だから、外がカリッとして、真ん中がフワッとした生地になる。

—なるほど(むずかしいな……)。

久﨑 これを作っているのが日本でいちばん古い紡績機で、あと二機しか残っていません。

—相当貴重なんですね。それまでして、なぜこの生地を?

久﨑 結局今は、モードっぽいきれいめなアイテムに走るか、アメリカンものを着続けるかのどちらかですよね。でも、アメリカに近いキレいめのアイテムが理想だなと思ったんです。これまで紹介した2枚のTシャツの中間のような生地感ですね。

—それが真ん中のTシャツ?

久﨑 はい。こちらは僕が思う現段階での理想です。程良いラフさを持ちながら、圧倒的にキレイ。肉厚だけど、サラッとした着心地。

今のところの「理想形」スヴィンエアスピニング オーバーサイズ Tシャツ

スヴィンエアスピニング オーバーサイズ Tシャツ/エイトン
2020年の春夏の発表を想定していたが、試着テストも終了したため特別にエイトン青山で限定販売中。1万2000円/エイトン(エイトン 青山 03-6427-6335)

—確かにキレイでもあり、程良くドライタッチ。

久﨑 原綿の選択、配合、紡績方法、仕上げのバランスにおいて試行錯誤を重ねて、ようやく形にできました。独自に開発した糸を使っているので、空紡糸のようなラフな表情やサラッとした質感をキープしながら、発色性と光沢感もプラスしています。

2020年の春夏の発表を想定していたが、試着テストも終了したため特別に青山店で限定販売。
手摘みした「スヴィンコットン」を空気紡績し、和歌山の熟練ニッターの手で編まれたスペシャル生地。

—これはカジュアル派の大人向きですね。

久﨑 ありがとうございます。袖を通した時点で「なんだこれ!」と思ってもらえるはずです。ガンガン洗ってもこの艶感は落ちません。もうコットンの可能性は無限大ですよ(笑)。

—オリジナルの糸や仕上げがすごく気になりますが……これもやっぱり?

久﨑 企業秘密です(笑)。

—四の五の言わずに、まずは着てみます!


たかが白T、されど白T。一枚の裏に隠された熱すぎる生地物語。それを知れば知るほど、一枚への愛着も湧いてくる。まずはエイトンが自信を持って提案してくれた、こだわりすぎた3枚の白Tからあなたのベストを見つけるべし。そして、下のショップへ駆け込め!

[ショップデータ]
エイトン 青山
住所:東京都港区北青山3-6-27
電話番号:03-6427-6335
営業:12:00〜20:00
(土・日曜、祝日は11:00から)
月曜定休
www.aton-tokyo.com


菊地 亮=取材・文

# Tシャツ# エイトン# 白T
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