セーターにしてもコートにしてもジャケットにしても。シーズンが終わった上質なウールのアイテムを正しくメンテナンスせずクローゼットにしまうとどうなるか。
次に「着たい!」と取り出したときに、虫食いの穴と出会うはずである。この出会いほど残念なものはない。そこで、衣替えの時季に知っておきたいニットのメンテナンス術を、プロに聞いてきた。
>レザー編はこちらニットはどうメンテする?
〜「HIRANO」のブラシさえあれば無敵だ!〜
ユナイテッドアローズ 六本木 メンズストアに立つ田中裕人さん(36歳)は、公私を問わずスーツやニットなどウールの服を愛用している。そんな日々着用するワードローブのケアにも、もちろん一家言持っている。その象徴といえるのが、15年ほど愛用している、日本メーカー「HIRANO」の馬毛を使った洋服用ブラシだ。これは多くのメゾンのフィッティングルームにも置かれている名作で、これで「やさしくブラシをかけて、ウールのなかに詰まった埃を出してあげます。そうやって毛並みを整えると長持ちするし、風合いもよくなるんですよ」と田中さん。
「『HIRANO』は1942年に創業した日本が誇るブラシ専業メーカー。木製の持ち手も絶妙な重さで気に入っています。これ1本でスーツはもちろんセーターもケアできるし、衣替えの時季はひたすらブラッシングしてますね(笑)。長く使い続けてブラシも馴染んできたので、ことさらに使いやすくなってきました」。
HOW TO メンテ
① 手持ちでやるときは、ハンガー部分を持ってブラッシング。力を入れすぎないようにして、毛先をスーツに軽く当てるイメージ。上から下へ、毛並みに逆らわないように丁寧に。
② 丹念にブラッシングする場合は、ラックにかけるのが鉄則。溜まった埃が見やすいように光が当たる場所でやるのがいい。
③ ニットでもジャケットでも、順番は上から下へ。最後は袖口もやさしくブラッシング。力を入れずにあくまでさらりと撫でるように。
④ ジャケットの場合、意外に見落としがちなのがラペルの内側。埃が溜まりやすいので、ラペルをめくってしっかりブラッシング。
⑤ 5分程度軽くブラッシングしただけで、ジャケットの表面がふんわりとしてくる。汚れが落ちた証拠だ。
ちなみに田中さんは、週末になると1週間着たスーツを家の日当たりの良い場所にすべて吊るして、一着ずつ丹念にブラッシングするという。
「長く着るには、こうしたメンテナンスが欠かせません。ダブルのスラックスなら裾にもゴミが溜まるので、そういうところもチェックします。ブラッシングを丁寧にやって、細かいところのゴミを定期的に掻き出しておけば、虫食いの心配なんてないですよ。衣替えの時季に、徹底的にブラッシングしてみてはどうですか?」。