乗りたかったのは、キブンが乗るクルマ Vol.261
2021.07.20
CAR

映画で大きな存在感を放つ「小さな名車」を、今の実勢価格とともにレビュー

映画『007』の“ボンドカー”を筆頭に、車も、映画やドラマの重要な一役となる。

派手なカーチェイスを演じるイメージのないコンパクトカーも、そのスタイルや醸し出す雰囲気で、ときとして主役級の印象を残す存在に。

ドライバーに愛され、銀幕でも愛された小さな車たちを紹介しよう。

 

■『グラン・ブルー』のチンクエ

フィアット500

starring:フィアット 500(チンクエチェント)

映画『グラン・ブルー』で主人公ジャック・マイヨールのライバル、エンゾ・モリナーリを演じたジャン・レノ。

身長188cmと言われる彼が弟のロベルトを乗せ、窮屈そうに体を押し込んで運転していたボロボロの車は、フィアットの500だ。

敗戦後のイタリアで、ヴェスパなどのスクーターからこぞって人々が乗り換えたのがこの車。戦前にも「500」という名の車があったため、「ヌオーバ・チンクエチェント(NUOVA 500)」と呼ばれる。

簡素な空冷2気筒エンジンをリアに積み、後輪を駆動させるRR方式を採用。3mを切る全長にも関わらず、4人乗れる。ルーフにキャンバストップが設けられたのは、風を感じるためだけでなく、エンジン音がうるさいと感じたら、屋根を開けて走ると気にならなくなるという理由もある。

そんなバタバタバタッと乾いたエンジン音をまき散らしながら海までガシガシ走っていたエンゾの姿は、彼のキャラクターを上手く表現していた。

もとの色が分からないほど塗装が剥げ落ち、錆が浮きまくり、そこら中が凹んでいたエンゾの500。ドアだけは別の車から取ったらしく赤いのだが、かえってボロさを強調していた。

まとまったお金が入ったエンゾは、ボディのへこみや傷を修理せず、赤いペンキを塗り悦に入る。ドアとボディの赤色が微妙に異なる500の中から満面の笑みを浮かべるその姿は、大雑把で陽気な彼らしい。

1957年から1977年まで生産されたが、今でも中古車市場でたまに出ることがある。価格は200万円以上と人気は高いが、アニメ『ルパン三世』でも大役を演じた名優なのだから、むしろ安いかも!?

 

■『ミニミニ大作戦』の“クラシックミニ”

ミニ

starring:ミニ

1956年のスエズ動乱をきっかけにオイルショックに陥ったイギリス国民を救ったのが、天才技術者イシゴニスが開発したミニだ。現在のBMW製と区別するため、今では「クラシックミニ」と呼ばれることも。

1959年に同国の自動車メーカー・BMCから販売されるとあっという間に大ヒット。エリザベス2世やビートルズ、ツイッギー、ブリジット・バルドー等々、数多のセレブにも愛された。

そんな有名人ならぬ有名車を映画界が放っておくはずもなく、1969年の『The Italian Job』ではイタリア警察のアルファ ロメオとカーチェイスを演じた。

銀幕上であまりにもミニの存在感が大きかったせいか、邦題名は原題とは大きく異なり『ミニミニ大作戦』に。なお同映画は2003年にハリウッドでもBMW製ミニを使ってリメイクもされている。

ほかにもイギリスのコメディドラマ『Mr.ビーン』ではビーンが毎日乗り回してさまざまなトラブルを起こしたり、日本でも漫画『シティーハンター』の冴羽獠が相棒に選んだことで有名だ。

日本には’80年代から正規輸入され、やがて日本がミニの最大マーケットと言われるほどに。親会社がBMCからローバーに変わってからも日本でのミニ人気は高く、生産終了直前の1997年にはポール・スミスとのコラボレーションモデルも販売された。

それゆえ今でも中古車の台数が比較的多く、中古車サイトを見ても約15万円から狙える。

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■『シャイニング』から『トランスフォーマー』まで出演多数

フォルクスワーゲン ビートル

starring:フォルクスワーゲン ビートル

『フットルース』『俺は飛ばし屋』『ハービー/機械じかけのキューピッド』等々、多数の映画に出演しているトップスターが、フォルクスワーゲン タイプI、通称「ビートル」だ。

ポルシェ博士が開発したまさに「国民車=Volks Wagen」の祖と言える一台。その形から本国ドイツでは「ケーファー(カブトムシなどの甲虫類)」と呼ばれ、アメリカでは「ビートル」や「バグ」として親しまれた。

本国では1978年に生産が終了したが、人気の高かったメキシコでは2003年まで生産が続けられるなど、世界中で愛された。

落ち目のレーシングドライバーとともに冒険するコメディ映画『ラブ・バッグ』から、主人公の新しい人生のきっかけとなる事故を起こす『ドント・ウォーリー』でのシリアスな役まで、幅広いキャラクターを演じ分ける名優だ。

ホラー映画『シャイニング』では、ジャック・ニコルソン演じる主人公とその家族を、恐怖の現場となるホテルへと導いていく黄色いビートルの姿が、冒頭に空撮の引きの絵で描かれている。

最近では『トランスフォーマー』のスピンオフ映画『バンブルビー』で、黄色いビートルが、バンブルビー役を演じた。

中古車の台数は少ないが、それでも100万円くらいから見つけることができる。

 

■『カリオストロの城』で宮崎 駿も認めた

シトロエン 2CV

starring:シトロエン 2CV

『ルパン三世』と言うと黄色いフィアットの500があまりにも有名だが、シトロエンの「2CV」もまた印象的な役を演じていた。

日本、いや世界の長編アニメ映画の金字塔『カリオストロの城』だ。

クラリスが追っ手から逃れるためにウェディングドレス姿のまま2CVを走らせた。ルパンとクラリスが初めて出会う冒頭の重要なシーンで採用されたのは、2CVが宮崎駿監督の愛車であったことと無関係ではないだろう。

2CVは戦後間もない1948年に販売されたフランスの国民車。「50kgのジャガイモを積める」「カゴに入れた卵を割らずに走れる」「女性でも運転ができる」「広い室内」など厳しい要件を掲げて農村向けに開発された。

当時のモーターショーではその奇抜な形から「ブリキ小屋」や「缶詰」などと酷評を受けたが、あっという間にベストセラーとなったことは有名な話。

いみじくも開発要件のひとつ「女性でも運転ができる」をクラリスは証明しているが、さらに追っ手とのカーアクションを演じられるほど、意外と走りが得意でもある。2CVオーナーである宮崎監督だからこそ描けたシーンなのかも知れない。

得意の走りは映画『007/ユア・アイズ・オンリー』でも発揮されている。ボンドガールの愛車という設定で、ジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア)の運転によって敵のプジョー504とのカーアクションを演じた。

中古車台数はかなり少なく、200万円前後となる。

 

籠島康弘=文

# コンパクトカー# シトロエン# フィアット# フォルクスワーゲン# ミニ
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