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2020.05.10

乗れるうちに乗っておくべきメルセデスの最善車「ミディアムクラス」

「中古以上・旧車未満な車図鑑」とは…… 

vol.1:「ミディアムクラス」
メルセデス・ベンツ、1985年〜1995年

メルセデス・ベンツの企業理念“最善か無か”。「最も良いものが作れないのなら、いっそ作らないほうがいい」という意味だが、この言葉を取り上げる際によく例とされる車が、今回紹介する「ミディアムクラス」だ。
「ミディアムクラス」のセダン。1990年時点の新車車両本体価格は580万〜850万円。中古車平均価格は250万円前後。
この車の通称は「W124」。これは開発時のコードネームで、1985年に登場した折の正式な車名は「ミディアムクラス」。それが1993年のマイナーチェンジの際に「Eクラス」となったが、この車は未だに「W124」と呼ばれるほうが多い。
例えば運転中に視線を動かさなくてもシート位置の調整ができるよう、電動シートを標準化し、(今でこそ当たり前だが)ドアにシートの形をしたスイッチを備えた。
一事が万事その調子で、エアコンをはじめスイッチ類はサッと手が届く配置がなされ、どう動かせばいいかすぐ判断できるよう人間工学的な設計がされている。初めて乗っても操作方法に戸惑うことがない、というのがメルセデス・ベンツの作法だ。
単純にまっすぐ走る、いわゆる直進安定性の良さもこの車の美点のひとつ。「えっ? まっすぐ走らない車なんて逆にヤバイでしょ?」。
いやいやW124の安定感は図抜けている。ステアリングは今の車のように軽々しくなくドッシリとしているから、ドライバーはそっと手を添えるだけでいい。それでいてカーブではドライバーの意思に遅れることなく、操作に従ってスッと車の向きを変える。
このためにどれだけコストをかけて一つひとつの部品を作り、精緻に組み立て、無駄なく動いているんだろう、と思えるような操作感。こうして生じる安定感が安心感となり、長距離ドライブでも街中の小用でもドライバーの疲労が随分と軽減される。


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