美容&健康にコミット!「24時間ウェルネス宣言」特集 Vol.61
2020.12.25
CAR

アストンマーティンによる初のSUV「DBX」を識者たちはどう分析するのか!?

アストンマーティン初のSUVとなるDBX。「現代版のシューティングブレークである」との意見を多く聞くが、その真相やいかに。

アストンマーティンによる初のSUV「DBX」、識者たちはどう分析するのか!?

ASTON MARTIN DBX アストンマーティン DBX
最低地上高が190mmとSUVとしてはそこまで高くないため乗り降りも楽で、クルージングを得意をするブランドらしい造りである。荷室容量は通常時で632L。全長5039×全幅1998×全高1680mm 2299万5000円〜。

シューティングブレークの現代的解釈

レコード会社に就職したつもりで入ったヴァージンでなぜか航空部門に配属され(笑)、以来約30年、公私にわたって英国とのディープな付き合いが続いています。

「英国らしさ」って何なのか——と考えると、それは「わかりづらさ」なんだと思います。買おうと思えばどこでも買える紺のブレザーを、わざわざビスポークするみたいな。アメリカ人からすると「なぜそれを!?」と聞きたくなる、わかりづらいこだわりが、いわゆる英国らしさなんだと思います。

そういった意味でアストンマーティンのDBXは、まさに英国車だと思います。超アッパークラスの車であることは間違いないのに、ほかの競合ブランドのように押し出し感はあえて少なめにしている。そういった知的で上品な部分がアストンマーティンの魅力であり、逆に知的で上品な人間じゃないと、アストンは似合いませんよね。

DBXが似合う人といえば、イメージとしては「カントリージェントルマン」でしょうか。休日は家族サービスとして遊園地へ……みたいな感じではなく、シューティングブレーク(英国でのステーションワゴンの呼び名。もともとは狩猟用のワゴンを意味した)に乗って野山を駆け、そしてまた都会に戻ってキリッと働くみたいなね。

そう考えるとDBXは、SUVというよりも「かつて英国貴族が乗っていたシューティングブレークの現代的解釈」なのかもしれませんね。

BLBG代表取締役 CEO
田窪寿保
英国ブランドを取り扱うヴァルカナイズ・ロンドンやザ・プレイハウスを展開するBLBG(ブリティッシュ・ラグジュアリーブランド・グループ)の代表。ヴィンテージロータスを複数台所有する。

 

 

SUVの差別化は機能でなく佇まいで

ミニバンのようなピープルムーバーが強い日本でも3割近く、世界的に見ると今や新車販売の約4割以上はSUVと言われる今日この頃です。高いアイポイントによる見晴らしの良さ、ステーションワゴンと同等の使い勝手に加えて、いざとなれば8人乗れるモデルも用意されており……と、車に求めるニーズをあらかた満たしてくれるわけですから売れて当然、そしてハイブランドも参入を検討するのは自然な流れでしょう。

ましてやアストンマーティンには直近のラインナップにラピードという4ドアサルーンがあったくらいです。その既納客の受け皿としても、新たな顧客の獲得としても、DBXはあるべくして企てられたものといえます。

とはいえ、です。仮に走りの面では独自性は打ち出せたとしても機能の面ではもはや差別化は難しい。というわけで市場ではほかの数多のブランドのそれと相まみえることになるわけで、それだけにスタティックでも、どこまでブランドのらしさをバシッと圧をもって伝えられるかが勝負になってきます。

だからウルスやカリナンがそうであるように、DBXもまたアストンのテイストをゴリゴリにアピールしまくった内外装に仕上がっているわけですね。特に内装の凝りっぷりはヴァンテージやDB11あたりとは一線を画するもの。

実は間が悪く、現物は見たことはあれどまだ乗れていないのですが、多分走りもスポーツカーばりにキレてることでしょう。

自動車ライター
渡辺敏史
出版社で自動車/バイク雑誌の編集に携わったあと、独立。自動車誌での執筆量が非常に多いジャーナリストのひとり。車の評価基準は、市井の人の暮らしにとって、いいものかどうか。

 

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アストンにセールストークは不要

DBXは既存の車台をベースにするのではなく、ゼロからいっさいの制約なしに「理想のSUV」を造ることができたというのが、まずは大きなポイントだと思います。そして同時に言える美点は、オーナーさまの意向やライフスタイルに応じて「いかようなニュアンスにも仕立てることができる稀有なSUVである」ということです。

例えばスポーツカーをベースにしたようなアグレッシブなイメージが強いラグジュアリーSUVだと、どうしたってエレガンスを出すのは難しい。しかしDBXは、例えばブルーだけでも何十色とあるボディカラーや、レザーやウッドなどインテリアの素材選びによって「スポーティなDBX」にもなりますし、「スーパーエレガントなDBX」にすることも可能です。

乗る人によって仕上がりはさまざま。また車自体の主張が強すぎないというのもDBXの魅力でしょう。同クラスの他社製SUVはあまりに豪華絢爛なため、オーナーさまより車のほうが目立ってしまいがちですが、DBXであれば、「主役はあくまでオーナー」といった構図になります。

DBXの商談をする際は、金額の話はほとんどしませんね。アストンマーティンとお客さまの“世界観”について、楽しくお話しさせていただくだけです。アストンマーティンの洗練された世界観に共感いただける、これまた洗練された世界観をお持ちのお客さまには、いわゆるセールストークは不要なんです。

アストンマーティン 東京セールスマネージャー
鬼頭也寸志
ランボルギーニやマクラーレンなどの輸入スーパースポーツ車の正規販売店立ち上げに数多く携わり、現在は北青山にあるアストンマーティン東京のセールスマネージャーとして活躍中。

 

 

ただの流行りのSUVとは違う

車界で“ブランド力じゃんけん”をやったら、アストンマーティンは最低でも大関、人によっては横綱のランク付けになるはずだ。

1913年創業の老舗は、ただ歴史が古いだけじゃない。損得勘定抜きでレースにカネを突っ込んだことによる栄光と経営危機の歴史など、ドラマ満載なのだ。エリザベス女王がチャールズ皇太子の21歳の誕生日にプレゼントしたのも、ポール・マッカートニーが「Hey Jude」のメロディーを閃いたときに乗っていた車も、アストンマーティン DB6だった。

そんなブリティッシュ・サラブレッドがSUVという流行りモンに手を出すってどうなのよ。で、乗ってみると、名門のSUVはやはり普通のSUVとはひと味違うのだった。

まず、外観はシュッとしていて、インテリアもお上品。走らせればアストンマーティンのスポーツカーそのもの。普通の高性能SUVはSUVに強力なエンジンや豪華な内装を与えて造る。しかし、DBXはラグジュアリーなスーパースポーツにSUVのスタイルと機能を与えているのだ。アプローチの仕方が真逆だ。

DBXを走らせていると、この車はまさに英国の貴族的だと思えてくる。英国貴族は日本の公家とは違って、相手をブチのめして地位を築いたファイターの末裔だ。だから英国の名門大学ではボクシングやラグビーが盛んなのだ。

高貴な佇まいだが、走らせてみれば速くてタフ。DBXはケンブリッジ大学のラグビー選手みたいな車なのだ。

モータージャーナリスト
サトータケシ
フリーランスのライター/エディター。2020年の私的カー・オブ・ザ・イヤーはランドローバー ディフェンダーとマツダCX-30、あとテスラ モデル3とプジョー208の素晴らしさにも驚いた。

 

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貴族の遊び場は泥のフィールド!?

アストンマーティンという自動車メーカーはライオネル・マーティンさんがパトロンである伯爵さまのために誂えたワンオフのレーシングカーが、イングランドのアストン・クリントンで行われたヒルクライムに勝利したことを起源としている。

アストンには定番モデルも存在していたが、工房に多くの腕利き職人たちを抱えていたので、紳士がサヴィル・ロウでスーツを仕立てるように、オーダーの際に自らの嗜好を盛り込むことができた。ある者は車内をシガールームにすべくグローブボックスに喫煙具をしまうケースを注文し、世界一有名な諜報部員はDB5にマシンガンをはじめとする秘密兵器を仕込ませていたとかいないとか……。

ハンティングは貴族の嗜みとして有名である。アストンマーティンもそんな彼らの要求に応え、スポーツカーのボディ後ろ半分をワゴンスタイルに作り変えたシューティングブレークなるモデルも誂えていた。つまり今回登場したDBXは“貴族が狩りに乗っていくための車”の末裔なのである。

とかく日本人は英国貴族とかアストンマーティンに、華やかで礼儀正しくハイソなイメージを抱きがちではないだろうか? 実際の彼らはもっと好戦的で野蛮な一面もあるのだ。

DBXのオーナーはぜひラゲッジスペースに散弾銃……とは言わないが、選び抜かれた大人の遊び道具を仕込んで、泥っぽいフィールドに果敢に繰り出していただきたい。

モータリングライター
吉田拓生
職業は英国車を偏愛するモータリングライター。生活は森の中に棲んで薪を割り、菜園を耕し、蜜蜂を世話する自給自足系カントリースタイル。趣味はヨットレース、自動車レースなどなど。

 

 

いい意味で裏切られた!

かつて、アストンマーティンDB4、5、6をメイン商品とするクラシックカー専門店に勤務し、今なおアナクロな筆者としては、アストンマーティンがSUVを造る、しかも伝統の「DB(デーヴィッド・ブラウン)」の名を冠すると聞いた際にネガティヴな違和感を抱いてしまったことを、まずは正直に告白したい。

しかし、この10月に開催された自動車趣味人のためのイベント「浅間サンデーミーティング」会場において、初めて陽光のもと目にしたDBXの第一印象は、決して悪くない。むしろ、積極的に格好いいと断じてしまいたくなるような魅力を湛えていた。

見方によっては多少子供っぽく感じられるSUVの中にあって、ランドローバーの各モデルやベントレー ベンテイガなどに代表される英国車は、エクステリアとインテリアともにいい大人がスーツにネクタイを締めて乗ってもギャップを感じさせない渋味があるのだが、DBXにはさらにスポーツカーとしての色気も加味される。

ただし、今も昔もアストンにとって大切な属性のひとつである「ボンドカー」とするにはDBXはいささかワイルドすぎて、どちらかといえば敵方の車のほうに向いてそうな気もするが、そこはご愛嬌。

それでも、既に降板が決定しているというダニエル・クレイグに代わる次期ボンドに、例えばジェイソン・ステイサムあたりが選ばれるならば、あるいは似合うかもしれない……? 

イタリア語翻訳家兼自動車ライター
武田公実
フェラーリの日本総代理店で勤務したのち渡伊。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所を経て、ライターとして独立。各種自動車イベントに参画するほか、自動車博物館の企画・監修に携わる。

 

谷津正行=文

# SUV# アストンマーティン#
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