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2020.08.20

中古車が減少中のプジョー「205」。古びない魅力の秘密を3分で

「中古以上・旧車未満な車図鑑」とは……

vol.12:「205」
プジョー、1983年〜1998年

プジョーとジャガーはよく“猫足”と評されていた。プジョーはライオンがエンブレムだし、ジャガーは、その名の通りジャガー。
どちらも猫科ということにかけて、自動車雑誌や評論家から生まれた言葉のようだ。
プジョーの「205」。1988年時点の車両本体価格は199万〜295万円。国内の中古流通台数は少なく、ネットで見つかった中では、ハッチバックは100万円以下、カブリオレは価格未定。
いずれも足回りがしなやかで、足元がどんな状態であろうとスルスルッと駆け抜ける猫を思わせるような、機敏な動きであることを表現しようと使われたのだろう。
実際「205」の頃のプジョーの乗り味は、まさに猫のようだった。
路面の凸凹を乗員に伝えることなく、軽くいなし、コーナリングでも崩れることはなく、シュルシュルっと曲がる。特に小排気量で軽量な「205」は、より上級な「405」や「605」と比べれば、飼い猫のような上品な振る舞いに映る。
「205」のカブリオレモデルも輸入された。ピニンファリーナの工場で生産されたため、ボディのサイドに「pininfarina」のロゴが入る。
アウトバーンをズバーンと走ることがあるドイツと違い、街には石畳、郊外に出れば未舗装の土の道が残っていたフランスゆえ、「優しい乗り心地」が必須だったのだろう。かつて同じフランスのシトロエンは、「荒れた農地を走っても卵が割れないこと」が「2CV」の開発要件のひとつだったと言われるほどだ。
プジョーも、最近でこそ一部を外製しているが、かつては自社ですべての足回り部品を作っていた。そのほうが車種ごとのボディ剛性に合わせて、また目指す乗り味に沿って、最後まで微調整が行えるからだとし、例えば「205」の3ドアと5ドアでも調整を変えていたほどのこだわりよう。
既に他メーカーがビルシュタインやカヤバといった外部サプライヤーと共同開発をする中で、敢えてここまで自社製にこだわったのは、プジョーらしさを追求する職人魂のようなものなのだろう。
当初「205」のトランスミッションはMTのみだったが、1987年からようやくATモデルも投入された。


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