2020.07.10
CAR

“ポルシェのお医者さん”のお仕事拝見。必要ならネジまで復刻するサポート体制

クラシックカーといえば必ず名前が挙がるポルシェ。古い車種に対してもブランドが価値を認め、サポートを行っているからこそファンはその魅力にどっぷりつかれるワケだが、ポルシェは、サポート体制がスゴすぎる様子。

なんせ、ネジ一本、プレートのフォントから、車種によってはオイルまで“復刻”し、純正品として再生産しているのだから。

そのサービスの内容を「ポルシェセンター青山 世田谷認定中古車センター」(以下ポルシェセンター)で訊いてきた。

生産したポルシェの70%がいまだ現役という事実

ジャンルが何であれ、トレンドの荒波に負けずプロダクトが評価され続けるためには、陳腐化しない完成されたデザインと確かな実用性、そして圧倒的なブランド力が備わっている必要がある。

車の世界でいえば“クラシックポルシェ”は、まさにこの3つを兼ね揃えた存在だ。ポルシェ ジャパン アフターセールス部の入江健次さんの言葉が、その価値を象徴する。

「ポルシェは、創業からこれまで生産した70%程の車両が今も走り続けているんですよ。この数字からもわかるように、ポルシェはメンテナンスさえすれば何十年と乗り続けられる車なんです」。

これは車に限らず言えることだが、古いプロダクトと付き合うためには信頼できる専門店の存在が欠かせない。

そこでポルシェは約5年の歳月をかけ、オーナーをサポートする国際的なネットワークを構築。今では世界で約70ものポルシェ クラシック パートナーを開設しているが、今回伺ったポルシェセンターもそのうちのひとつ。

『ポルシェセンター青山 世田谷認定中古車センター』

クラシックポルシェとパーツの販売とともに、公認店ならではの手厚いメンテナンスを引き受けている。

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クラシックポルシェが今も街を走り続けている理由

「クラシックポルシェのオーナーは40~50代の男性が圧倒的に多いですね。こちらにふらっと来てクラシック系に興味を持っていただく方も年々増えていますよ」とは先ほどの入江さんだ。

※非常に良いコンディションで入荷した356 SC。
グッドコンディションで入荷した「356 SC」。復刻されたパーツも駆使して整備を行っている。

店頭に並ぶ「356 SC」などの名作を目の前にすると、クラシックポルシェに惹かれるのも必然と思えてくる。

「ここでのサービスを通じて我々が認識したのは、日本には良質なクラシックポルシェが多く残っているということです。『911』に比べると明らかに数が少ない『356』が、これだけ市場に出てくることは予想外でした。

1964年製のポルシェとは思えないトータルコンディション。
1964年製のポルシェとは思えないコンディション。

仕入れについては当然、オリジナルであることにこだわっています。とはいえ、すべての個体をフルオリジナルで見つけるなんて現実的ではありません。そこで、ポルシェではオフィシャルのスペアパーツを用意しているんです」。

丸みを帯びたフォルムとグリルの形状は「356 SC」ならでは。

用意するパーツの種類は、ボディのパネルといった大きなものから、溝まで忠実に再現したタイヤ、年式に合わせたオイルやビスに至るまで、5万2000以上に及ぶという。

「スペアパーツは、本国ドイツの倉庫にストックされています。これらは、かつて提携していたサプライヤーから取り寄せることもあれば、新たな供給源の開拓、あるいは再生産することで補充しているんです」。

再生産で蘇った996型911用燃料ポンプ(奥)と928用サイドマーカー(手前)。

再生産とは言い換えれば“復刻”だ。一時は不要となったパーツも必要であれば現代に蘇らせる。代替品に頼らない純正パーツの安定供給が、安心・安全なクラシックポルシェ・ライフを叶えているのだ。

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最新技術で蘇る、クラシックポルシェの純正パーツ

ポルシェが行う“純正パーツの再生産”とは、伝統を守るための手段のひとつ。

ポルシェの純正パーツに必ず刻印されているトレードマーク。
ポルシェの純正パーツに必ず刻印されているトレードマーク。

偽造を見分けることを目的に、ポルシェは1960年代半ばから、すべてのパーツに“三角形”と“P”のトレードマークを刻印。これに準じて、製造国、製造者コード、部品番号、製造年、素材名の情報などを製品に記載することで徹底した品質管理を行っている。

さらには、オリジナルの図面、当時の詳しい資料、サンプルのストック、長年培われてきた専門知識などを用いることで、ポルシェが定める基準を満たすスペアパーツの再生産が初めて実現する。

再生産された「964」「993」用の冷却用ファンインペラ。

ちなみに当時の生産との違いを挙げるなら、工程に現代のテクノロジーを積極的に導入していることだろう。これにより、見た目は同じでもスペックは向上したほか、小ロットでの生産も可能になった。なんと3Dプリンタを使用して復活したパーツもあるというから驚きだ。

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ポルシェ愛に溢れたマイスターによるアフターサービス

空冷ポルシェのオイル漏れを起こしている場合が多く、入念なエンジンオーバーホールを行う。
空冷ポルシェはオイル漏れを起こしている場合が多く、エンジンは入念なオーバーホールを行う。

「クラシックポルシェの整備はひと筋縄ではいかない」とは、好きモノの間ではある種の常識。

ポルシェセンターに在籍するワークショップマネージャーの菊池 剛さんもそう頷く。

このタイヤも再生産されたパーツである。溝も当時を再現しているが、素材をアップデートすることでスペックの向上を図った。

「ポルシェの整備は、楽器の調律に近いものがあると思います。単純なパーツの交換ですら人の手による調整が必要になるため、最後の最後は感覚的な部分がものを言う。旧車であれば、なおのこと。ポルシェは、すごく人間味のある車なんですよ」。

菊池さんを含むポルシェ クラシック マイスター3名が常勤しているポルシェセンターでは、さまざまな形で修理に対応してくれる。

リアフェンダーの修理で持ち込まれた1970年製の「911 T」。

「クラシックカーの場合、同じコンディションの車両は一台たりともないわけですから、ひと口にレストアといってもニーズは多岐に渡ります。

基本的には、不要なパーツ交換は避け、オリジナルに近い状態に近づけるのが理想です。

総剥離から全塗装が完了した「356 C」。ここからがマイスターの腕の見せどころだという。

古い『356』でもいろいろと対応できますし、かなり難しい修理だとしてもスペアパーツが揃っていれば条件が変わってきますよ。

ただし、『959』などの極端に生産台数が少ないモデルがくると、さすがに骨が折れることもありますね(笑)」。

レストアが完了し、納車に近い状態の「356 C」。整備士、オーナーともに、徹底して仕上げにこだわっていることが窺える。

楽しそうに話す菊池さんの屈託のない笑顔はまるで少年のようだ。

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次の世代へと乗り継ぐ、クラシックポルシェの価値

ブランドの圧倒的なサポートによって、クラシックポルシェは価値を保ちながら、単なる移動手段ではなく、まるで家族のようにオーナーに接してくれる。

それについて、ポルシェセンターのクラシック部 アシスタントマネージャーの筒井一樹さんはこう話してくれた。

「僕の愛車である1996年製の『993 カレラ』は、父から譲り受けたものなんです。大切に乗り続けることで次の世代へ受け継ぐことができる。これもまた、ポルシェが多くの人々に愛され続けている理由だと思います」。

愛車の状態などを確認できる「ポルシェ クラシック テクニカル サーティフィケート」。言ってみれば愛車のカルテだ。

時代が移り、いかにテクノロジーが発達しようとも、ポルシェを愛する人々の限りない情熱はいつの時代も変わることはない。

ポルシェセンター青山 世田谷認定中古車センター

そうした熱量が生んだポルシェ公認の“お医者さん”が、唯一無二のカーライフをサポートしているのだ。

ポルシェセンター青山 世田谷認定中古車センター
住所:東京都世田谷区桜3-15-13
電話番号:03-5426-2111
営業:9:30~18:00
無休(年末年始のみ休業)

戸叶庸之=文

# ポルシェ# 中古車
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