車のトリセツ Vol.13
2020.06.02
CAR

猫足のプジョーは何が優れているのか? 誕生からの130年史をプレイバック

「車のトリセツ」とは……

世界初の量産型自動車メーカーはプジョーだった

“世界初の自動車メーカー”は定義によって変わる。

ガソリン自動車の製造ならメルセデス・ベンツだろう。プジョーは、世界初の量産型自動車メーカーと言われている。メルセデスやダイムラーが一台の自動車しか作れなかったときに、同一モデルの複数生産に成功していたからだ。

そのユニークな足回りで世界中にファンを持つプジョーもまた、現在の自動車産業の礎を築いたブランドのひとつなのである。

プジョーのエンブレムは何度も変わっている。写真は1948年、「203」で採用されたライオン。プジョー創業の地、フランシュ・コンテ州の紋章に描かれたライオンに由来している。

ルーツは、ジャン=ピエール・プジョー2世が冷間圧延工法の製鉄に成功したことに遡る。時計製造のためのノコギリやバネ、コーヒー豆やペッパーのミルなど、さまざまな鉄製品の製造で発展した。

自動車製造に乗り出したのは、ジャン=ピエール・プジョー2世の孫、アルマン・プジョーだ。1889年に開催されたパリの万国博覧会でプジョーの名を冠した初の三輪蒸気自動車を披露した。その翌年には四輪ガソリン車「タイプ2」を、1891年には、世界で初めてのシリーズ製造車「タイプ3」を発表。

プジョー初の四輪ガソリン車「タイプ2」。

1896年には鉄製品生産の親会社から分離、オートモビル ・プジョー社を設立。この会社がのちに祖業である会社を吸収し、オートモビル・サイクル・プジョー社へと発展した。

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WRCを制しスポーティーなブランドイメージに

第一次世界大戦に耐え抜き、第二次世界大戦の終戦間もない1948年、プジョーは自身初のモノコックボディとなる「203」を発表。50万台以上を生産する大ヒットとなった。

戦後、最初に生産されたのが「203」。このあと、プジョーでは長らく車名に三桁の数字を採用することになる。冒頭の数字は車格を、後半の数字は世代を表すと考えると分かりやすいだろう。

1955年には、自動車ボディのデザインファームであるピニンファリーナが携わる「403」を発表。以降、ピニンファリーナとの関係は2000年頃まで約半世紀続くことになる。

ピニンファリーナによるデザインを纏った「504」は1968年に発表されると、ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど各地で賞賛された。その後、モデルチェンジを繰り返しながら2006年まで生産され、累計370万台を販売。プジョー史上、最も息の長いモデルとなった。

「504」のターゲットは当時の中流階級。耐久性にも定評があり、ピックアップ仕様も存在した。アフリカと南米でもヒット。

一方、「205」をベースにした「205ターボ16」(といってもほとんど中身は別物だが)がWRC(世界ラリー選手権)とパリダカールラリーで優勝。“砂漠のライオン”の異名で、プジョーのスポーティーなブランドイメージを浸透させていった。

その結果、「205」はフランスで史上最高に売れ、最も輸出された名車として、1983年にデビューしてから1993年まで製造された息の長いモデルとなった。日本でもヒットを飛ばし、この車で初めてプジョーを知ったという人が多いのではないだろうか。

日本でのプジョーの知名度を一気に上げた「205」。

この頃から日本の車雑誌で「プジョーの猫足」と言われるようになる。

サスペンションが大きくストロークしたあとでも安定して路面をつかむ特性や、コーナーの出口での安定した挙動といった特徴が、高い所からスッとしなやかに降りる猫の足に例えた言葉だが、いつしかこの言葉は日本でプジョーの乗り心地を示す言葉になっていく。

第二次世界大戦前からアウトバーンが整備され、比較的しっかり舗装された道路で鍛えられたドイツ車と違い、凸凹な石畳や曲がり角が多かったフランスでは、必然的にプジョーのような柔らかな足回りにせざるを得なかったようだ。

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[現在の主な車種]

・208

同社のエントリーモデルとなるコンパクトハッチバック。1.2Lターボエンジンを搭載している。フロントはブラックとクロームの2トーンの処理が施され、シャープな雰囲気を醸し出す。

リアのテールランプはライオンの爪跡をモチーフにしている。本国では新型がデビューしていて、間もなく日本も切り替わると言われる。

 

・2008

208ベースのコンパクトSUV。ハイウェイからワインディングロードまでオールマイティにこなす。水平基調のボンネットと直立した大型グリルは、力強い面構え、張り出したホイールアーチやフロントとリアのアンダーガードはSUVらしさを演出する。

エンジンは208と同じ1.2Lターボエンジン。こちらも間もなく新型となる予定だ。

 

・308SW

ハッチバックである308のワゴンタイプ。ハッチバックと比べて全長325mm、ホイールベース110mm、リアオーバーハングが 220mmほど長い。ラゲッジスペースもクラストップクラスの610Lだ。

フロントマスクはフルLEDヘッドライトで力強い印象。ボンネットやサイドからリアへと連なる美しい風紋を思わせるプレスラインがスポーティーさを際立たせている。エンジンは1.5Lクリーンディーゼルと208と同じ1.2Lターボエンジンの2種類。

 

・508

プジョー唯一のセダン。ファストバックの優雅なユールラインや流麗なロー&ワイドボディは、スポーツクーペの美しささえ併せ持つ。エンジンは1.6Lターボエンジンと2.0Lクリーンディーゼルエンジン。

どちらも、8速エフィシェント・オートマチック・トランスミッションを組み合わせる。プジョー伝統のしなやかな乗り心地とハンドリング、ロードホールディング性能はさすがのひと言だ。

 

・リフター

プジョー曰く「どのジャンルにも属さない」というリフター。強いて言えば、MPV(Multi-Purpose Vehicle)、つまりはミニバンに近い。

ラゲッジルームは積載する荷物の量や大きさに応じてフレキシブルに対応が可能。広くフラットな荷室空間の容量は5人乗車時で約597L、ラゲッジトレイを外してリアシートを折りたためば最大で約2126Lまで広がる。

「車のトリセツ」とは……
走行に関するトリセツはダッシュボードの中にあるけれど、各メーカーの車の魅力を紐解くトリセツはなかなか見つからない。だから始める、オートマティックで好きになったあの車を深掘り、好きな理由を探るマニュアル的連載。上に戻る

林田孝司=文

# トリセツ# プジョー#
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