車のトリセツ Vol.12
2020.05.16
CAR

水平対向、4WD、アイサイト……飛行機作りから生まれたスバル唯一の技術

「車のトリセツ」とは……

安全へのこだわりが生んだスバルの代名詞「ボクサーエンジン」

零式艦上戦闘機、通称「零戦」。第二次世界大戦中、日本が世界に誇った名機である。その零戦に積まれたエンジンを製造したのが、中島飛行機、今のスバルの前身だ。

航空機で最も重視されること、それは安全性である。戦後、中島飛行機は軍需産業から平和産業に転換。富士重工業(現:スバル)と名を変えて、バイクや自動車の製造へと舵を切る。しかし、安全性という矜恃だけは、変わらず引き継がれた。

スバルの水平対向エンジン。通称、ボクサーエンジン。最近は抑えられているが、以前は中低音のドゥルドゥルという排気音が多くのファンから愛された。

安全へのこだわりから生まれたもの。それが、スバルの代名詞ともなった。水平対向エンジンだ。

ピストンが左右に向き合う形で配置されており、向かい合ったピストンが互いの振動を打ち消して滑らかに回転。車内に伝わる振動を少なくする。

また、エンジン全高が低くコンパクトな形状のため、車の低重心化を図りやすい。左右対称でバランスが良く、低重心。それが車の安定した走行姿勢に、ひいては安全に繋がると考えたのだ。

余談だが、現代の小型飛行機が装備するピストンエンジンのほとんどすべてが、空冷の水平対向型を採用している。航空機を源流に持つスバルは、こうした飛行機のノウハウを自動車に持ち込んだというわけだ。

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日本のモータリゼーションの礎を築いた国民車「スバル360」

スバルが初めて開発した車は、1958年に発売された「スバル360」だ。水平対向エンジンでこそないものの、飛行機に用いられていたモノコック構造を採用することで、超軽量の車体を実現した。

スバル360
その丸みを帯びた愛らしいフォルムから、テントウムシの愛称で親しまれた「スバル360」。販売1号車のオーナーが、パナソニックの創業者である松下幸之助氏であったことは、有名な話だ。

当時、国産乗用車の値段は100万円程度。大卒初任給が1万円程度だったので、庶民には高嶺の花だった。そういった事態を打破すべく、通産省自動車課が発表した政策が「国民車構想」だ。

求められた要件は、「最高速度100km/h以上」「定員4人」「エンジン排気量350~500cc」「燃費30km/L」「価格25万円以下」。最高速度と価格を除くそのほとんどを満たしたのが、「スバル360」だった。価格は42万5000円。もちろん安くはないが、比較的手に入れやすくなったことで、1960年代のモータリゼーションの礎を築いたことは間違いない。

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世界戦略車であるレガシィが牽引した1990年代

スバルには、水平対向エンジンにならぶ代名詞がある。それが、四輪駆動だ。1972年には、世界初の量産型乗用四輪駆動車「レオーネ4WD エステートバーン」を発売。これが、スバル中興の立役者にして世界戦略車である「レガシィ」へと続いていくのだ。

二輪駆動に比べて倍のタイヤに駆動力を伝えられる四輪駆動は、安定走行に有利だっただけでなく、速く走るという点でもメリットがあった。

初代レガシィ
初代「レガシィ」。連続で10万kmを走り続ける「10万km世界速度記録チャレンジ」では、19日間連続で走り続け、当時の世界記録を樹立した。

1989年にデビューしたレガシィは、WRC(世界ラリー選手権)での活躍やワゴンブームなど新たな時代を築いた。その実力は世界で認められ、北米でも大ヒット。現在、スバルの売上げ台数の約7割はアメリカ・カナダの北米が占めるが、この躍進はレガシィから始まったのだ。

1992年には「インプレッサ」を発売。レガシィの後を継ぎWRCに参戦し、1997年には、日本メーカー初の3年連続マニュファクチャラーズチャンピオンを獲得した。

初代インプレッサ
初代「インプレッサ」。ボディタイプはスポーツワゴンとセダン。いずれもコンパクトサイズだった。写真はスポーティモデルの「WRX STi」。

レガシィとインプレッサを二本柱とし、独自の技術で唯一無二の自動車メーカーとして人気を博すスバル。

WRCに裏打ちされた走行性能に惚れ込むファンや、ツーリングワゴンとしての使い勝手に魅了されたアウトドア好きやサーファーなどから幅広い支持を得て、1990年代には、熱狂的なファンを指す「スバリスト」なる言葉も定着してきた。

 

アイサイトで得たスバル=安全というイメージ

水平対向エンジンと四輪駆動。この2つに続き、スバル3本の矢として生まれたのが「EyeSight(アイサイト)」と言えるだろう。

今ではどのメーカーでも当たり前に搭載される衝突被害軽減ブレーキだが、2010年に国産車で初めて国から衝突被害軽減ブレーキ搭載車の認可を受けたのは、スバルの「レガシィ」シリーズだ。

プリクラッシュブレーキや全車速追従機能付きクルーズコントロール、アクティブレーンキープなどを搭載し、「ぶつからない車」としてブレイク。WRCでの活躍で「走りのスバル」という印象の強かったスバルは、創業以来追い求めてきた「安全性」というイメージも手に入れることになったのだ。

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[現在の主な車種]

・レガシィ アウトバック

「レガシィツーリングワゴン」の車高を高めたSUVモデル。1994年にSUV人気の高い北米市場向けに開発され、翌1995年に日本でも「レガシィグランドワゴン」として販売された。その後日本では「ランカスター」と名称が変わり、2003年から世界統一で「レガシィアウトバック」となった。

現行型は2014年に登場。同時に日本では「レガシィツーリングワゴン」が廃止された。水平対向エンジンは2.5Lと3Lが用意され、全車4WDとなる。

 

・レヴォーグ

「レガシィ」シリーズが北米市場でヒットしたのを受け、次第に同市場向けにボディサイズが拡大されていく。そのため日本では大きくて扱いづらくなった。そこで日本市場向けに、グランドツアラーやスポーツカーの技術を融合させたスポーツツアラーとして開発されたのが「レヴォーグ」だ。

「レガシィツーリングワゴン」が廃止された2014年にデビュー。全車4WDで、水平対向の1.6Lターボと2Lターボエンジンが用意されている。

 

・フォレスター

北米では「レガシィ」シリーズが人気だが、実は世界規模で最も売れているのは「フォレスター」だ。現行型は2018年にデビュー。

スバル車の中で最もSUVらしいデザインや、オンロード/オフロードを問わない走行性能が与えられ、もちろん全車4WDで、アイサイトなど最新の先進安全機能が備わる。パワーユニットは2.5Lの水平対向エンジンと、2Lターボ+モーターのハイブリッドシステムが用意されている。

 

・XV

都会派SUVとして、コンパクトな「インプレッサ」の車高を高めて開発された。都会派といってもフォレスター並みのオフロード性能を備えている。現行型は2017年にデビュー。

水平対向の1.6Lと2Lエンジン搭載車のほかに、水平対向2Lエンジン+モーターのハイブリッドモデルも用意されている。全車4WDで、アイサイトを標準装備する点はほかのスバル車と同様だ。

 

・BRZ

トヨタと共同開発したスポーツカー。トヨタでは「86」の名前で販売されている。2L水平対向4気筒エンジンを搭載し、後輪を駆動させるコンパクトFRスポーツカーだ。

「86」とはドライブフィールの味付けが異なり、改良を重ねる度にそれぞれ独自の色が強くなっていった。2012年のデビューで、2020年7月に予約を停止することを発表。フルモデルチェンジが近いことを匂わせている。

 

「車のトリセツ」とは……
走行に関するトリセツはダッシュボードの中にあるけれど、各メーカーの車の魅力を紐解くトリセツはなかなか見つからない。だから始める、オートマティックで好きになったあの車を深掘り、好きな理由を探るマニュアル的連載。上に戻る

林田孝司=文

# スバル# トリセツ#
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