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2020.05.14

小さくてもしっかり“高級車”な、メルセデス初のコンパクトセダン「190」

「中古以上・旧車未満な車図鑑」とは……

vol.2:「190」
メルセデス・ベンツ、1983年〜1993年

バブル景気に浮かれていた日本で、メルセデス・ベンツが放った小型セダン「190」シリーズは、正規輸入されたメルセデス・ベンツとしては初の小型乗用車に分類される5ナンバーとあって人気を集めた。
開発コードネームは「W201」だが、「190シリーズ」と呼ぶ人のほうが多い。1989年時点の「190E」のベースグレード(2L)の車両本体価格は445万円。当時のトヨタ・クラウンの最上級グレードとなる3Lモデル(約443万円)より高かった。中古車平均価格は約100万円。
その一方で、当時は“小ベンツ”などと揶揄されることも。「大きなベンツが買えない人のベンツ」という意味だが、バブルに踊る当時は小ベンツの真の価値がまだわかっていなかった。
190シリーズは日本でバブルの萌芽が見えてきた1983年に登場し、バブルが弾けた後の1993年に後継車であるCクラスが登場するまで販売された。
1970年代のオイルショックを受けて、省エネには排気量が小さくコンパクト(=軽量)なほうが良いと開発された車だ。当時の日本人は大きい=高級なもの、小さい=大衆向けと考える人が多かったが、190シリーズはあくまで「SやEクラスをコンパクトにした車」。その中身は間違いなくハイグレードなのだ。
何しろメルセデスの「最善か無か」を最も体現したと言われる「W124」が登場するわずか2年前にデビューしたモデル。最も良いものが作れないのなら、いっそ作らないのが当時の同社だ。
エクステリアやインテリアは基本的に当時のSクラスを踏襲。
実際、最上級クラスであるSクラス譲りの見た目やボディ構造、安全機能を備えるなど、Sクラスをリサイズしたような190シリーズ。それどころかSクラスより先に、世界初となるマルチリンク式サスペンションが採用された。
乗り心地と操縦安定性を両立させる足回りで、それは190からSクラスやEクラスなどに展開され、今や他社でも採用される高級車ではベーシックなセッティングとなった。


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