車のトリセツ Vol.11
2020.04.22
CAR

「フォーリングス」と「クアトロ」。ふたつの“4”とアウディの密な関係

「車のトリセツ」とは……

アウディのシンボルであるフロントグリルに4つのリングが重なる「フォーリングス」。このロゴは、アウディというブランドの成り立ちを表している。

1932年、世界恐慌のあおりを受け、ドイツ・ザクセン州にあった4つの自動車メーカーは「アウトウニオン」というひとつの会社にまとまることでこの危機を乗り越えようとしたのだ。

「アウトウニオン」時代の販売店の写真。4つのメーカーの車が並べられている。小型車や大型車などそれぞれの特徴を活かした統合だった。

その際にアウディ、DKW、ホルヒ、ヴァンダラーの4社が統合することを示す意味でこの「フォーリングス」が誕生したのだ。

第二次世界大戦後、「アウトウニオン」のあったザクセン州は旧東ドイツに組み込まれてしまい、工場をすべて失った。しかし旧西ドイツ側で自転車にエンジンを載せた自動2輪車の製造や、簡易な商用車の生産などで再びスタートを切る。

その後1956年にはダイムラー・ベンツの傘下に入り、1965年からはフォルクスワーゲングループへ移るなどの変遷のなかで着実に力をつけ、1985年に社名を「アウディ」とし、現在の世界的な自動車メーカーへと成長してきた。

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アウディを一躍有名にした「クワトロ」

多くの自動車メーカーは昔からモータースポーツに積極的だ。アウディもまた例外ではなく、まだ4社が独自で歩んでいた頃からレース活動を行ってきた。

1934年、誕生したばかりのアウトウニオンは知名度を高めるために、グランプリ・レースに参加。アウトウニオンはフェルディナント・ポルシェ博士に依頼して開発した「Type A」で参戦した。

V型16気筒エンジンをドライバーズシートの背後に積み、当時の世界最速の265km/hを記録したこのマシンは、グランプリ・レースで輝かしい成功を収めた。

「Type A」はその後B、Cへと進化していく。写真は「Type C」。

そして、アウディの名を世界的に知らしめた最大の功労車は、やはり1980年に登場した「アウディ クワトロ」だろう。

この頃のラリーカーは2WDが主流だったが、フルタイム4WDシステムのクワトロは世界ラリー選手権(WRC)で連戦連勝を重ね、ついには「WRCに勝つためには4WDは必須」と言われるようになった。

「アウディ クワトロ」。その後のアウディが進む方向を決定づけたといっていい4WDシステム「クワトロ」は、オフロードカーの4WDと違い、「2輪より4輪で地面を蹴ったほうが速い」という考えからだ。

その後ランチア・デルタやスバル・インプレッサ、三菱・ランサーエボリューションなど数々の名車がいずれも4WDを採用したのは、クワトロの活躍があってこそなのだ。ちなみに「アウディ クワトロ」が生まれた当時の開発部門のトップは、ポルシェ博士の孫であるフェルディナント・ピエヒだ。

独自のフルタイム4WDシステム「クワトロ」は、当時の市販車にも採用され、それがライバル車との差別化にもなり、かつ現在に至るまで常に進化をし続けている。

今のフラッグシップであるラグジュアリーセダンの「A8」を筆頭に、ほとんどの車に搭載されているほど、同社の代名詞となっている。

もうひとつアウディのモータースポーツ活動で知っておきたいのが、速さと燃費と耐久性が求められるル・マン24時間耐久レースでの活躍だ。ここでもアウディは1999年の初参戦から2016年まで18回のレースで13勝を記録し、圧倒的な力を見せている。

2006年から2008年は5.5LのV型12気筒ディーゼルツインターボを搭載したマシンで参戦。初年度から3年連続の優勝を飾った。

現在も電気自動車のフォーミュラカーで競うフォーミュラEや、市販車と同じモデルが競うドイツツーリングカー選手権(DTM)などに参戦している。

こうしたモーターレース活動を通じて得た走行性能、安全性、燃費性能などが、現在のアウディの市販車にフィードバックされ続けているのだ。

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[現在の主な車種]

・A1スポーツバック

フォルクスワーゲン・ポロとプラットフォームを共有する、アウディのエントリーモデル。2019年に日本へ導入された現行型は1L 直3ターボ(夏頃登場予定)と、1.4L 直4ターボ。ともに7速ATが組み合わされる。

エントリーモデルとはいえ衝突被害軽減ブレーキを標準装備する。なお全車FF仕様ながら、軽快な走りを実現している。

 

・A5シリーズ

セダンであるA4をベースに、よりアウディのスポーティな部分を味わえる2ドアクーペの「A5」。搭載するエンジンは2L 直4ターボで、基本はアウディ伝統のクワトロ(4WD)だ。

スポーティな走りと使い勝手を両立した、4ドアでハッチバックスタイルの「A5スポーツバック」もあり、「A5スポーツバック」はFFも選べる。

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・Q2

セダンの「A3」と同じプラットフォームにSUVのボディを載せた「Q2」。若年層をターゲットとしたSUVだが、全長4200mm×全幅1795mmのコンパクトボディは日本の都心部を走り回るにもピッタリ。

全高も1530mmゆえ、たいていの立体駐車場に収まる。搭載されるエンジンは1L 直3ターボと、1.4L 直3ターボ。いずれも7速ATで、駆動方式はFFのみだが、街乗り中心ならば十分だろう。

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・Q5

Q2より大型の人気SUVが「Q5」。ラゲージは通常で550L、後席を倒せば1550Lまで拡大できる大容量。またテールゲートは標準で電動開閉機能が備わっている。

搭載されるエンジンは2L 直4ターボと2L 直4ディーゼルターボがあり、これに7速ATが組み合わされる。「Q5」はクワトロ(4WD)を基本にしながら、システムが自動で判断して適宜FF走行することで、燃費向上を図る機能が備わる。

 

・R8

2座シートの後ろに5.2L V10エンジンを積み、クワトロで4輪を駆動させるスポーツカー「R8」だ。同じフォルクスワーゲングループのランボルギーニ・ウラカンと多くのパーツを共有する。

4輪にハイパワーを伝えることで0-100km/h加速は3.1秒、最高速度は331km/hを誇る。アウディのクアトロを存分に味わえるスーパースポーツカーだ。

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走行に関するトリセツはダッシュボードの中にあるけれど、各メーカーの車の魅力を紐解くトリセツはなかなか見つからない。だから始める、オートマティックで好きになったあの車を深掘り、好きな理由を探るマニュアル的連載。上に戻る

籠島康弘=文

# アウディ# トリセツ#
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