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2020.03.01

「アウディA1 vs BMW 1シリーズ」ドイツ車プレミアムコンパクトカー対決!

少なくなるほど豊かになる。と言ったのはミニマリズムの権化にしてバウハウス3代目校長のミース・ファン・デル・ローエ。必要最小限の装飾、無駄を省くことで見えてくる、そのもの本来の魅力。その言葉は車にも当てはまるだろう。

大は小を兼ねる時代は終わったのだ。取り回しのしやすいコンパクトなボディに詰まった、魅力的な数々の最先端機能。小さいだけでもないし、過剰なわけでもない。自分のライフスタイルにフィットしていることが何より重要なのだ。家族や仲間と、もしくはひとりでも、安心・安全で楽しいドライブフィール。豊かなカーライフは、そういったところに感じられるはずだ。
デル・ローエの生誕の地、ドイツが誇るアウディとBMWの最スモールカー、A1と1シリーズ。フルモデルチェンジが果たされた、この2台はその好例なのだ。
 

AUDI A1 Sportback アウディ A1 スポーツバック

AUDI A1 Sportback アウディ A1 スポーツバック
ボディサイズ:全長4040×全幅1740×全高1435mm
総排気量:1494cc
燃費:15.6km/L(WLTCモード) 乗車定員:5名
価格:365万円〜
フォルクスワーゲンのスモールカー、ポロとプラットフォームを共有し、2010年に初代が登場。2代目となるこちらも最新型のポロとプラットフォームを共有。デザインは1984年に登場したアウディの名車、スポーツクワトロのディテールが取り入れられている。導入モデルは、35 TFSI アドバンスド(365万円)と35 TFSI Sライン(391万円)の2つだが、今回は限定のオプションを装備したファースト エディションモデルを試乗。
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レザーのスリースポークスのステアリングホイールにはマルチファンクションボタンが備わり、さまざまな機能をここで操作することができる。センターの10.1インチのタッチスクリーンを備えたカーナビゲーションは運転席のほうへ向いていて、視認しやすい。シフトノブ前にはワイヤレス充電器がある。
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ステアリング正面に設けられた10.25インチのカラー液晶フルデジタルディスプレイは、スピードメーター、タコメーター、マップ表示、ラジオなどメディア情報をフレキシブルに表示する。
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先代に比べホイールベースが90mm延びたことで、室内空間が広くなり、特に後席の足元に余裕ができた。手動調整式のシートは、アドバンスドはファブリックのみ。サイドサポートがついたSラインは布×革のコンビとなる。オールレザーの設定は今のところない。
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ラゲッジスペースは先代に比べて65L増量した。6:4分割可倒式のリアシートを倒せば最大で1090Lの収納スペースが生まれる。
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「神は細部に宿る」を徹底した新型A1が車の価値観を変える

2019年11月に日本で販売が開始された2代目アウディ A1。筆者はこの車の初代3ドアモデルに乗っていた。
私の初代A1は全長3.9mのコンパクトなボディに、内装はシックなブラックレザー、当時のA8同等の最新技術を備えた、小さな高級車として、今もって欲しいと思える車である。残念ながら、第二子の誕生によって(3ドアでチャイルドシートに子供2人を乗せるのがひと苦労だった)、ひと回り大きなA3へと買い替えるにいたったのだが。
さて、今回のモデルチェンジで大きく変わったのは車の根幹を成すプラットフォームが刷新されたことにより、ボディが4mを少し超え、またタイヤを車体のできるだけ隅に置くことで車内が広くなった点にある。5ドアのみの設定だから以前の私のような思いをせずに、家族4人の幸せが得られるのはうれしいポイントだ。
エクステリアデザインで目を惹くのはフロント中央ボンネット下のスリット。実際に通気はさせないが、何とも凝った形状だ。フロントグリルの3分割のデザインは往年の名車、アウディ スポーツクワトロへのオマージュだという。こんな小さな車にここまでやるか!? と驚かされる細工が随所に見受けられる。
「神は細部に宿る」を徹底した新型A1がクルマの価値観を変える/アウディ A1 スポーツバック  
ところで、初代のキャッチコピーは自分の価値観を大切にする、高い審美眼を持つユーザーを想定した「アーバンエゴイスト」だった。一方、新型は「この世のすべてを楽しみつくせ」。さらに「仕事とか遊びとか、分けてる暇なんかない。まあまあとか、こんなもんでしょとかじゃ終われない。だれのものでもない。この私、最高の自分でいないと意味なんかない」と続く。
本当に価値観が多様化しているように思う今日この頃。そんな時代だからこそ、公序良俗に反しない範囲で自分らしさを見つめ続けることが大事だと思う。トレンドに左右されず、でも意固地にならず。時代の流れにしなやかに身を踊らせることができれば、と願う。車の大小でヒエラルキーを語る時代はとうに終わっている。小さくなるほど繊細にそのものを感じようとする心の動きに、このアウディA1は気付かせてくれるのだ。
A1はアウディのエントリーモデルに位置するが決して安い買い物ではない。そこにどんな価値観を見いだせるかが、貴兄の個性を証明する。眺めて、触って、走らせれば、この小さな車の価値や貴兄の至福がどこにあるかがわかるはずだ。


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