車のトリセツ Vol.3
2020.01.23
CAR

【ポルシェのトリセツ】設計へのこだわりが産む、常に「最新が最良」な車

車のトリセツ●走行に関するトリセツはダッシュボードの中にあるけれど、各メーカーの車の魅力を紐解くトリセツはなかなか見つからない。だから始める、オートマティックで好きになったあの車を深掘り、好きな理由を探るマニュアル的連載。

ポルシェの真骨頂も原点も“設計”にある

ポルシェの歴史は、1875年に生まれたフェルディナント・ポルシェというひとりの天才技術者から始まった。

彼は電気会社に就職後、ローナーという車のデザインや設計などを行うカロッツェリアに転職し、そこで初めての車、ローナー・ポルシェという電気自動車を設計する。その後もダイムラー(のちのメルセデス・ベンツ)をはじめ、いくつかの自動車メーカーでスポーツカーの設計に従事したあと、1930年に車の設計会社としてポルシェ社を興した。

その後、ヒトラーと知り合う機会を得た彼は、当時の「すべての人のための“国民車”を設計したい」というドイツの思想に共感し、フォルクスワーゲン(国民の車、という意味)を完成させる。ところが第二次世界大戦が始まるとこの車は軍事転用され、ポルシェ博士の夢ははかなくも散ってしまった。

戦争後にこの車が「フォルクスワーゲン」として販売され、やがて世界中で「ビートル(カブトムシ)」として愛されるようになったのはご存知の通りだ。

ビートルとポルシェ博士
フォルクスワーゲンのプロトタイプの前に立つフェルディナント・ポルシェ。自動車の設計開発に関する数々の功績が讃えられ、大学を卒業していないにも関わらず名誉博士号を授与され、ポルシェ博士と呼ばれるように。
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一方、終戦と同時にポルシェ博士はヒトラーに加担したとしてフランスで幽閉されてしまうが、そのときに彼を救ったのが、彼の長男フェリー・ポルシェが用意したスポーツカーの設計料による保釈金だ。今やポルシェの代名詞とも言えるスポーツカーに、ポルシェ博士は救われたのだ。

その後ポルシェ親子はすぐさま、ビートルのパーツを流用した2シーター・ライトウェイト・スポーツカーを開発。それがポルシェ社として初めて作った356シリーズ(のちの911シリーズ)だ。

356カブリオレ
写真は1954年式の356カブリオレ。このほかにクーペとスピードスター(アメリカ向けのオープンカー)があった。

356シリーズが人気を博し生産台数が増えると、自社生産体制を拡充せずにボディの生産は他社に依頼。またその後フォルクスワーゲン社の技術コンサルタントとなるなど、車の生産会社を背景にしたメーカーが多いなかで、ポルシェ社は車の“設計開発”の色が濃い歴史を辿っている。

356の後継モデルとして開発されたのが今や誰もが知る911シリーズだ。1963年のジュネーブショーでプロトタイプ「ポルシェ901」が初めて披露され、翌年から911として販売が始まった。

ポルシェ901
写真はポルシェミュージアムが所蔵している、911のプロトタイプである901。ちなみに市販にあたり、プジョーが中央に0の入る3ケタの数字による表示登録をしていたことから、901が911に変わったことはポルシェファンなら知っておきたい小話だ。

1971年に経営からポルシェ一族が引いたあとは924や944、ラグジュアリーGTの928などバリエーションを増やしていくが、911の人気・知名度があまりにも高く、いつしか「ポルシェ=911」となり、一時期経営危機にも陥る。しかし1996年に発表したオープン2シーターのボクスターが北米でヒット。さらに2002年に発表した同社初のSUV・カイエンも世界的に大成功を収める。

ボクスターやカイエンの成功で資金を得た同社は、一時フォルクスワーゲンを傘下に収めるほどの企業となったが、その後紆余曲折を経て、現在はフォルクスワーゲン傘下にポルシェが収まるカタチとなっている。

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最新のポルシェが最良のポルシェ

ポルシェを表す言葉に「最新のポルシェが最良のポルシェ」という言葉がある。これは設計開発を原点とするポルシェらしく、新型が旧型より優れているのは当たり前だが、それだけでなく、ポルシェは常に設計の改良を繰り返しているからというのがその理由だ。たいていはイヤーモデル、つまり1年ごとに細かな改良が行われている。

例えば356から911へと移行した理由のひとつが「もう水平対向4気筒エンジンで、やれることはすべてやった」ことだと言われている。そこで911ではデビュー時から、現行型まで約60年も水平対向6気筒エンジンだけを載せているが、その間にも大きなトピックで言えば空冷から水冷になり、自然吸気ではなく全車ターボを装備するなど、常に水平対向6気筒エンジンのポテンシャルを高めようと改良をし続けている。

■主な現行モデル■

911(2018年〜)

[左]911カレラ4Sと[右]4Sカブリオレ。

世界的に有名な高性能スポーツカーであり、かつ快適に移動できるグランドツーリングカーでもある。ミニマムな後席がある2+2のレイアウトだが、後席は緊急用か子供用と考えよう。2018年に日本デビューした現行型は、ポルシェ愛好家には社内のコードネーム992で呼ばれ、初代から数えて8代目となる。水平対向6気筒ターボエンジンをリアに搭載し、後輪を駆動させるが、4WDモデルも用意されている。

718ボクスター/718ケイマン(2015年〜)

[左]718ケイマンSと[右]718ボクスターS。

シートの後ろに水平対向4気筒エンジンを搭載し、後輪を駆動させる2シーターのミッドシップオープンカーが718ボクスターで、そのクーペ版が718ケイマンだ。往年の同社のスポーツカーが由来の「718」が車名に入ったのは2015年。それ以前は同じ水平対向でも6気筒エンジンを搭載していた。ただし現行型でもトップグレードのGT4は6気筒を搭載する。

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パナメーラ(2017年〜)

パナメーラ
[手前]パナメーラGTSスポーツツーリスモと[奥]パナメーラGTS。

「ポルシェのセダンが欲しい」というニーズに応えて作られた、FRまたは4WDの4人乗り4ドアクーペ。2017年に2代目となる現行型にモデルチェンジした際、ワゴンモデルとなる「スポーツツーリスモ」も加わった。フロントにV型6気筒ツインターボまたはV型8気筒ツインターボエンジンを搭載し、後輪または4輪を駆動させる。そのほかハイブリッドやプラグインハイブリッドモデルなど、バリエーション豊かにラインナップされている。

カイエン(2017年〜)

ポルシェ カイエン
[左]カイエンターボS Eハイブリッドクーペと[右]カイエンターボS Eハイブリッド。

同社初のSUVとして2002年に初登場したカイエン。現行モデルは2017年の年末から予約が開始された。フロントにエンジンを搭載し4輪を駆動させる。エンジンにはV型6気筒ターボ、同ツインターボ、V型8気筒ターボがあり、プラグインハイブリッドモデルも用意されている。さらにリヤ部分が傾斜したクーペルックの「カイエンクーペ」のほか、911並みの加速力を備えた「ターボS Eハイブリッド クーペ」もラインナップしている。

マカン(2014年〜)

マカンターボ
写真はマカンターボ。

カイエンよりコンパクトで、街乗りにピッタリなサイズのSUV。世界的にも人気で、販売台数ではポルシェの中でトップクラスを誇る。スポーツカーのように、前輪より後輪のほうが太いタイヤを履くところはカイエン同様で、フロントにエンジンを搭載して全輪を駆動させる。用意されるエンジンは直列4気筒ターボとV型6気筒ターボ、V型6気筒ツインターボがある。次期モデルは電気自動車として開発される予定だ。

 

もちろん911以外のどのポルシェのモデルも、エンジンだけでなく、サスペンションやトランスミッション、ボディ剛性とありとあらゆる面でたゆまず改良を続けられている。だからこそ「最新のポルシェが最良のポルシェ」と言われるのだ。

 

籠島康弘=文

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