乗りたかったのは、キブンが乗るクルマ Vol.62
2019.10.30
CAR

格好いい車とは何か。マツダが考える「光のデザイン」の重要性とは?

「街中で映える、格好いい車はないかな」とお考えなら、マツダのCX-30は見ておいたほうがいい。

10月に発売された新しいSUVで、マツダが考える独自のデザイン哲学が込められた車だ。

マツダ「CX-30」本体車両価格217万5000円〜。東京・六本木の東京ミッドタウンで11月4日まで開催中のデザイン博「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」に、今年は「ART OF LIGHT -reflection-」をテーマにCX-30を用いたアート空間が出展された。

マツダのCX-30に見る「光をデザインすること」

東京ミッドタウンに展示されたマツダのブースでは、CX-30の周りには大型のLEDモニターがいくつか用意されていた。それは「光の移ろい」の美しさを表現したという。

ん? 車の格好良さってフォルムだったり、顔つきだったりが重要ではないのか。なのになぜ「光」? マツダの前田常務取締役に聞く機会を得た。

マツダの常務取締役であり、デザインやスタイリングの責任者も務める前田育男氏。

「そもそも自ら発光しない物体は、光が反射することでフォルムや色を認識できます。だから光がないと何も見えないですよね。なので光はとても重要なんです」。

確かに真っ暗闇の中じゃ何も見えない。でも、今回の展示のように「光の移ろい」に注目するんじゃなく、単純にフォルムの美しさを見せるだけでもいいのでは? 「我々がCX-30でこだわっているのは、光の質なんですよ」。

光の質? 「例えばベタッとした面は広く均一に光るだけで、抑揚がない。そうではなく強い光から弱い光へ変化する、そんな光の変化の美しさを重視しているんです」。

車が格好いいかどうかの基準のひとつに、フォルムはもちろんある。しかしそれだけでなく「このCX-30では光が移ろうことで、まるで生き物のような躍動感や存在感を与えたいんです」という。光の強弱や映り込むカタチの変化、揺れ動き……そうした光の移ろいで車を生き物のように見せる。

何でもこのデザインテーマは、今年5月に発売されたマツダ3からなんだとか。「表現方法としては今年の5月からの新しい取り組みですが、このデザインの骨格というか哲学は、実は10年ほど前から変わっていません」。

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光が生み出す「生命」

10年前からブレずに貫き通しているマツダデザインの哲学というのは「生命感」だという。

「我々にとって車は単なる移動手段ではいけないんです。単にショールームに並べる商品であってもならない。車は購入された人々の友達や家族のような存在でありたい。そういった意味で、10年前から、乗る人が生命感を感じるデザインにこだわっています」。

例えば2016年に改良されたCX-5は、動物が今にも獲物に飛びかかるような躍動感のある筋肉を、フェンダーの膨らみなどボディのフォルムで表現した。マツダ3からは、ある意味それを深化させ、ボディのフォルムから生まれる光の移ろいでも躍動感を表現しているということなのだ。

「最近よく『街を走っているとマツダの車はパッと目につく』と言っていただけるようになりました。これはひとつに、光が美しく動くからだと思います」。

人間は本能的に、視界の中で何かが動くと目で追いかけてしまう。それでも視界に入るすべてを覚えていては疲れるから、たいていはすぐに忘れてしまう。それでも多くの人が「目についた」と話すというのは、その光の動き、つまり移ろいが美しく印象的であったからだろう。

「そもそも車は街の中をたくさん走っています。それだけ街にあふれるものである以上、そのデザインにも社会的責任があると思うんです」。

例えばヨーロッパの美しい街並みは、建物のデザインにこだわっているだけでなく、車のデザインにも同じように「環境に溶け込める美しさをもたなければならない」というような思想が流れているからといわれる。

「あまりにも余計な要素が主張する車は、街や周囲の景色を壊しかねません。街の景色に溶け込むような自然体であることが、まず大前提。そのうえで美しく光り輝く、まさに生命感が溢れる車を、我々はデザインしたいのです」。

フォルムだけでなく、そこに映り過ぎていく光までが美しい。だから街に溶け込みながら、街で際立つ。

なるほど、そんな車は今まで無かったかもしれない。マツダが目指す車の“生命感”は、その車に乗る我々の鼓動まで、高めてくれそうだ。

 

籠島康弘=取材・文

# CX-30# デザイン# マツダ#
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