OCEANS

SHARE

光が生み出す「生命」

10年前からブレずに貫き通しているマツダデザインの哲学というのは「生命感」だという。
「我々にとって車は単なる移動手段ではいけないんです。単にショールームに並べる商品であってもならない。車は購入された人々の友達や家族のような存在でありたい。そういった意味で、10年前から、乗る人が生命感を感じるデザインにこだわっています」。
例えば2016年に改良されたCX-5は、動物が今にも獲物に飛びかかるような躍動感のある筋肉を、フェンダーの膨らみなどボディのフォルムで表現した。マツダ3からは、ある意味それを深化させ、ボディのフォルムから生まれる光の移ろいでも躍動感を表現しているということなのだ。

「最近よく『街を走っているとマツダの車はパッと目につく』と言っていただけるようになりました。これはひとつに、光が美しく動くからだと思います」。
人間は本能的に、視界の中で何かが動くと目で追いかけてしまう。それでも視界に入るすべてを覚えていては疲れるから、たいていはすぐに忘れてしまう。それでも多くの人が「目についた」と話すというのは、その光の動き、つまり移ろいが美しく印象的であったからだろう。
「そもそも車は街の中をたくさん走っています。それだけ街にあふれるものである以上、そのデザインにも社会的責任があると思うんです」。
例えばヨーロッパの美しい街並みは、建物のデザインにこだわっているだけでなく、車のデザインにも同じように「環境に溶け込める美しさをもたなければならない」というような思想が流れているからといわれる。

「あまりにも余計な要素が主張する車は、街や周囲の景色を壊しかねません。街の景色に溶け込むような自然体であることが、まず大前提。そのうえで美しく光り輝く、まさに生命感が溢れる車を、我々はデザインしたいのです」。
フォルムだけでなく、そこに映り過ぎていく光までが美しい。だから街に溶け込みながら、街で際立つ。
なるほど、そんな車は今まで無かったかもしれない。マツダが目指す車の“生命感”は、その車に乗る我々の鼓動まで、高めてくれそうだ。
 
籠島康弘=取材・文


SHARE

次の記事を読み込んでいます。