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2019.04.12

「止まっちまうまで乗っていたい」シボレー・K5ブレイザーで向かう海と山

俺のクルマと、アイツのクルマ
男にとって車は名刺代わり。だから、いい車に乗っている人に男は憧れる。じゃあ“いい車”のいいって何だ? その実態を探るため「俺よりセンスいいよ、アイツ」という車好きを数珠つなぎに紹介してもらう企画。

■4人目■
「ブローチャーズ」「ドギーブロ」 代表 福井雄大さん(31歳)

長野県出身。ペンションやアウトドア教室を経営する両親のもと長野の大自然に抱かれて育ち、20歳のときにピストバイク専門店「ブローチャーズ」をオープン。約2年前に“本当に犬が欲しがるもの”を提供するペットショップ「ドギーブロ」を茅ヶ崎にオープンさせた。家族は愛犬ブロ(ピットブル)。

■福井さんの愛車■
シボレー・K5ブレイザー(’89年式)

第2世代のシボレー・K5ブレイザー。1983年に登場した兄弟モデルである、「S-10ブレイザー」よりもひと回り大きい。爆発的な人気を得て、特にこの第2世代は1973年から1991年の約19年間も生産される超ロングセラーとなった。福井さんのK5は前オーナーがクロスカントリー競技に使っていたため車高は上げられており、露出した足回りがよりその迫力を増している。


【写真13点】「シボレー・K5ブレイザー」の詳細写真をチェック

普段行けない場所へ冒険に出かけるために

シボレー・K5ブレイザーのドアを開け、愛犬のブロを乗せることから福井さんの休日は始まる。

「目的地は特に決めません。海沿いを走りながら波がいいところを探し、見つけたら入るんです」。海へはサーフィンのときもあれば、SUPのときもある。「海に入るとブロが泳いでついて来てくれるんです」。

茅ヶ崎に住んでまだ3年ほどだが、もう海は自分の庭のように感じているという。
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出かける先は海だけではない。地元・長野をはじめ各地の湖や川でもSUPを楽しむ。山へ行けばブロと一緒にトレッキングしたり、マウンテンバイクに乗ったり、仲間も呼んでキャンプを楽しんだり。

そんな休日の足が、シボレー・K5ブレイザーだ。5年ほど前に知人から譲ってもらった’89年式で、所々サビも浮いているが「前のオーナーがこれでクロスカントリー競技に出場していたので、ばっちりリフトアップされているし、荷物もタップリ積めるからどんなところでも遊びに行けちゃいます」。

典型的なアメ車のV8エンジンのエンジン音。ドロドロドロッという「腹に響くようなリズムがいいですよね。もちろん踏んだらグイグイ行くし、どんな山道でも気兼ねなく進んでいけます」。



日本では少々大きい車だが、本国アメリカでは当たり前のフルサイズ。ピックアップトラックの荷台に屋根を付けただけのようなスタイルだから、これだけ大きいのに2人乗りの2ドア。「こんなサイズで2人乗りって、ほんとアメリカ人ってふざけてますよね(笑)」とお気に入りだ。

実は福井さん、そんなアゲアゲな気分に浸れるK5ブレイザーに乗るのは休日オンリーと決めている。

「通勤にはボルボのXC70を使っています」。2台とも4WDという共通点はあるものの、車のキャラクターはまったく違う。だからこそ「オンとオフを気持ちから切り替えてくれるんです」と言う。

 

湖と山と星空に囲まれて育ったことがすべての始まり

福井さんが育ったのは長野県にある標高約1500mの湖のほとり。両親は今も、夏はカヌー教室、冬はペンションを営んでいるという。「遊び場と言えば目の前の湖や川、山といった自然しかありませんでした」。そこで高校生時代まで過ごした彼は、大学入学と同時に東京へ出てきて唖然としたという。

「日本人っていうのは誠実で、親切な人たちだと思っていたんですが……」。満員電車で平気で他人を押しのけて乗る、中には痴漢をはたらくけしからない輩もいる。



自分にとって身近な人、大切な人にそんなふうになってほしくないなと思っていた大学3年生のとき、ニューヨークへ遊びに行ったことが転機となった。

「たまたま入った自転車屋がピストバイクを販売していたんです。ちょうどメッセンジャーを主役にした映画が出来るほど、都会でのピストバイクがカルチャーとして盛り上がっていた頃で、大都会で暮らす人が自分だけのピストバイクをつくるために店員とやりとりしている様子がとてもにぎやかで『あ、オレもこんな店をやりたいな』と思ったんです」。

決めたら行動が早い。帰国して4カ月後には横浜に、日本ではまだあまり知られていないピストバイクの専門店『ブローチャーズ』をオープンさせた。

「自転車っていう乗り物は、スーツ姿の社会人でも制服姿の女子高生でも乗れる。自然の少ない東京で、誰もが手軽に楽しめるアウトドアスポーツのひとつが自転車だと思います」。

では福井さんにとって車はどうだろう?

「例えば自分の地元とか、自転車でも行けないような“非日常”のフィールドに連れていってくれるもの、自転車や犬と一緒に冒険させてくれるもの、ですかね」。大自然の中で育った原体験が、福井さんに海も山も湖もどこにでも連れて行ってくれるK5ブレイザーを選ばせたようだ。
 

あるもので済ませない、無いなら考えればいい

愛犬ブロは4歳。K5ブレイザーを手に入れて程なく福井さんのもとへやって来た。ところが「日本のペット用品ショップって、犬が本当に欲しがっているものを置いてないんで、困ったんですよ」。

例えばドッグフード。「自然界の動物は当然ですが火を使わない(笑)。捕食して喰う、つまり生肉を食べます」。しかし店頭に並ぶのはたいてい加熱済みで、添加物がたくさん入り、買い主の手が汚れないことをメリットに挙げているものまである。



「愛犬は家族だとみんなよく言うけれど、家族に毎日カップ麺や加工食品を食べさせますか? だったら自分で作ろう」とドッグ用品ショップ「ドギーブロ」を2年前に立ち上げた。

「アメリカやヨーロッパにはこの手のお店はよくありますけど、そういう場所を日本にも作りたかった」。

ところでK5ブレイザーは、雪の降る冬の時期は稼働率が落ちるという。「このサイズのスタッドレスがないんですよ」。タイヤサイズを気にしなければあるのだが、福井さんは良しとしない。だったら雪のない海へ出かければいい、と。「とはいえやっぱり冬は動かす機会が減って、車の機嫌を損ねるとバッテリーが上がるんです(笑)」。

自然が好き、車に乗って自然の中に遊ぶことが楽しいという福井さん。それは自然を制圧するのではなく、子供のころから自然に溶け込むことの豊かさを知っているからだろう。



休日の遊びモードのスイッチを入れて、ワクワクしながら海沿いや山の中の目的地に向かうために、仕事用とは別にシボレー・K5ブレイザーを選んだ福井さん。「鉄部品はすぐ錆びるし、足回りのメンテナンスも頻繁に必要ですが、こんなに休日を楽しませてくれる車はほかにない。動かなくなるまでずっと乗り続けたいですね」。

乗れば気分をアゲてくれ、この先ずっと一緒に過ごしたくなるような愛車を、あなたも休日の相棒に探してみては?

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鳥居健次郎=写真 籠島康弘=取材・文

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